2014年3月13日

『魂の経営』 古森重隆・著 vol.3523

【「本業消失」から立ち直った富士フイルムの奇跡とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502556

先日ご紹介した、『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』に、富士フイルムの戦略転換の例が出ており、興味を持ったので、同社古森CEOの本を読んでみました。

※『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797373288/businessbookm-22/ref=nosim

みなさんもご存知の通り、富士フイルムは、カメラのデジタル化により、市場が「消失」するという危機に瀕した会社。

本書によれば、市場消失は恐ろしいペースで進んだようです。

<写真フィルム市場はその後、二〇〇〇年をピークに縮小し始め、それは徐々に加速し、遂には年率二〇~三〇パーセントもの勢いで激烈に収縮していった。そして十年後には、世界の総需要はかつての一〇分の一以下にまで落ち込んだ。カラーフィルムなど写真感光材料は当時、富士フイルムの売上の六割、利益の三分の二を占めていた。その市場のほとんどが、あっという間に消失したのである>

しかしながらすごいのは、富士フイルムは、「イノベーションのジレンマ」にも屈せず、未来への手を打っていたこと。

いち早くデジタルカメラを開発したり、技術資源を活かしてヘルスケア分野に進出したり、M&Aを推進したり…。

結果、写真フィルム市場が消失したにもかかわらず、同社は現在も二兆円を超える売上高を記録しているのです。(2013年3月期で2兆2147億円)

本書には、この富士フイルムが行った改革の全貌が書かれており、有事の際のリーダーシップ、戦略転換を学べる内容となっています。

ホンネで言えば、こんな精神論中心のマッチョな経営書ではなく、戦略転換の話やマーケティングコンセプトの話をもっと深く知りたかったのですが、こういう主張も嫌いじゃないので、楽しく読むことができました。

<ビジネスの世界では、絶頂のときにこそ危機が忍び寄って来ているものだ>

早め早めに手を打つために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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いずれにしてもデジタルの時代はやってくる。だったらそれを危機と捉えずチャンスを捉え、自分たちでデジタル技術を開発し、デジタル時代を自ら開拓しようという戦略だ。実際、世界で最初にフルデジタルカメラを開発したのは富士フイルムである

液晶テレビは爆発的に市場規模を拡大させることになるのだが、富士フイルムはメーカーとして偏光板保護フィルムの供給責任を果たすことができた。このことは、液晶テレビの普及に大きく貢献したと自負している。偏光板保護フィルムは、今や液晶テレビのみならず、スマートフォンなどでも需要が拡大し、その事業は富士フイルムにとっての重要な収益の柱に成長している。一九九〇年の初頭、わずか二〇億円だった売上高は、二〇年後には二〇〇〇億円規模に拡大し、写真フィルム事業の落ち込みを大きくカバーすることになった

これまでの「診断」領域に加え、化粧品やサプリメントの「予防分野」、医薬品を扱う「治療分野」まで注力分野を拡大し、「予防」「診断」「治療」をカバーするトータル・ヘルスケア・カンパニーになることを目指している

我々が培ってきた写真の色褪せを防ぐ抗酸化技術を、アンチエイジングの化粧品に応用しようというわけだ

富士フイルムには五年後の二〇一八年に、ヘルスケア分野の売上高を現在の約三倍の一兆円に引き上げる計画がある。当社にとってそれだけ大きな可能性を持っている事業なのだ

ただ売上を増やすだけのM&Aなど、我々にとっては意味はない。新規事業で「勝ち続ける」ために、双方のシナジーによって優れた商品を開発する

有事に際しては「今何が起こっているか」を把握することが、リーダーが着手すべき最初の定石だ。そのためには、入ってくる情報を精査しなければならない。特に有事の際には、正確な情報を得ることは容易ではない。そもそも情報というものは、完全な状態で出てくることがまずない。すべて断片的で、不完全。意図的に隠蔽されることもある

◆決断を誤る三つの要因
1.現実を直視しないケース
2.情報が偏っているケース
3.思い込みや偏見などの先入観がある場合

やさしさや大義がなければ「勝ち」にも「強さ」にも意味はない

◆上級管理者になってから伸びない人の理由
1.体力・健康
2.現状に満足してしまうこと
3.将来上級マネージャーになることを想定して訓練をしてこなかったこと

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『魂の経営』古森重隆・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4492502556

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◆目次◆

第一章 本業消失──富士フイルムに何が起こったのか?
第二章 第二の創業──富士フイルムの挑戦と改革の全貌
第三章 有事に際して経営者がやるべきこと
    ──「読む」「構想する」「伝える」「実行する」
第四章 すべては戦いであり負けてはならない
    ──世の中のルールと勝ち残るための力
第五章 会社を思う気持ちが強い人は伸びる
    ──仕事で成果を出し、成長を続けるための働き方
第六章 グローバル時代における日本の進路
    ──国と企業の強みと可能性について

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