【東京五輪招致の仕掛け人が語る、プレゼンの極意】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140816309
本日の一冊は、2020年の東京オリンピック招致を成功させた戦略的コミュニケーションアドバイザー、ニック・バーリー氏による、「プレゼンの極意」。
著者は、もともとジャーナリストであり、2012年ロンドン・オリンピック招致委員会に参画したことから、五輪招致の戦略コンサルタントに転身。以降、ロンドン、リオ、東京と、3大会連続で勝利し続けているという、まさに「五輪招致の請負人」です。
東京オリンピック招致では、関係者に入念なインタビュー、調査を行い、プレゼンターのスピーチ原稿を作成。IOC委員の心をつかみ、見事、五輪招致に成功しました。
本書には、そんなスピーチのプロフェッショナルである著者が、プレゼンで成功するための「7つの戦略」を説いた一冊。
※発売は、2/25予定
今回の東京五輪招致の最終プレゼンを徹底分析し、どんなストーリー構成になっているのか、なぜそのプレゼンターが選ばれたのか、どうやって聴衆の心を掴んだのか、詳しく解説が付され、さらに氏のプレゼンの極意が体系化されています。
どの部分を読んでも唸らされる内容で、今回の招致成功が偶然でないことを感じさせる、緻密な戦略・戦術が書き込まれていました。
戦術の部分から、いくつか例を挙げておきましょう。
・個人のストーリーを、より大きなストーリーに結びつける
・オーディエンスに対して自然にへりくだる
・ベルベットの手袋(間接的にライバルを攻撃する)
・自分の土俵に持ち込む質問を投げかける
・3のパワー
・出てくる単語の内容に合わせた感情表現
・自国の言葉をキーワードに使い、エキゾチックなフレーバーを加味する
・懸念材料について話す時はsomeを使う(英語の場合)
さり気なくライバル国の弱点を攻撃するやり方や、案に経済メリットを打ち出すやり方、個人的にも「行きたい」と思わせるやり方は、自分が委員でも思わず投票しただろうと思えるほど巧妙で、じつに参考になりました。
「オリンピックとビジネスは違う」などと言って、この力作を逃すことのないように。
ぜひおすすめしたい一冊です。
———————————————–
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
———————————————–
間接的にライバルを攻撃する
自分の土俵に持ち込む質問を投げかける
スピーチの世界で言われる「パワー・オブ・スリー」の法則を使っている
出てくる単語の内容に合わせた感情表現を心がけることです。たとえば「セレブレーション」という言葉を使うときには、お祝いを想起させるような雰囲気を出さないと説得力がありません
竹田理事長のスピーチを聞くと、声のボリューム、トーン、話すペースまで、すべて、何度かギアチェンジがあることがおわかりでしょう。これは、オーディエンスの注意を逸らさないようにするためのトリックです。淡々と話したあとに、急にペースを変えたり、言葉を区切ったりすると効果があります
日本をアジア大陸の玄関に据えることで、アジアの人々の若さに関心が移り、高齢化のイメージを払拭する効果が生まれます
相手の懸念点に具体的数字を挙げて応える
相手の言語を話すことは、好印象につながる
「o mo te na shi」はミステリアスな存在としてスピーチの中に残ります。「ホスピタリティ」という言葉を使うより、日本語のまま使ったほうが、どこか日本という異文化にミステリアスな要素を漂わせて、深みを持たせ、東京の文化はちょっと違うという印象を与えることができます。リオデジャネイロの招致キャンペーンでも、「リオの住民」という意味の「カリオカ」という言葉を使いました。「リオの住民」と言うよりも、「カリオカ」と言われたほうが、よっぽどエキゾチックで、興味をそそられます
ミシュランの星がいちばん多い都市、と言ったのには理由があります。投票権を持つIOCの委員たちはグルメなのです。これは「自分のオーディエンスを熟知しろ」というプレゼンの鉄則を活かした発言だった
何か懸念材料があって、それについて話さなければならない事態になったときは、People(人々)、Many(たくさんの人たち)、Everyone(みなさん)、You(あなたがた)を使うより、Someを使うことをお勧めします。「心配している方もいるかもしれませんね」と、ニュートラルなトーンで、深刻さを出さずに言うことができるからです
本当の問題は、どれだけの収入が見込めるのか、五輪を開催することで、どうやって「五輪」というプロダクトを売ってくれるのか、という点です
オーディエンスは、自分たちのために用意されたプレゼンに反応します
————————————————
『世界を動かすプレゼン力』ニック・バーリー・著 NHK出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4140816309
————————————————-
◆目次◆
プロローグ 二〇二〇年オリンピック招致最終プレゼンテーション
第1章 最終プレゼンを徹底分析する
第2章 ニック式、プレゼンを成功に導く7つの戦略
第3章 「五輪招致の請負人」の仕事術──東京オリンピックはこうして勝ち取った
第4章 世界に日本をプレゼンする──五輪最終プレゼンから日本人が学べること
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)
お知らせはまだありません。