2013年9月23日

『破綻──バイオ企業・林原の真実』林原靖・著 vol.3352

【超優良企業・林原破綻の真実】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898314090

昨日は、TVドラマ「半沢直樹」の最終回でしたね。

「結末に不満」という意見が多数あるようですが、個人的には、じつに現実的な結末だと思っています。

人や組織には、さまざまな利害関係や意図があり、人生とはそこをかいくぐって生きていくことに他ならない。

しくじれば地獄、うまく行ってもまた油断すると地雷を踏みかねない…。

とくにビジネスは、そういうものではないでしょうか。

本日ご紹介する一冊は、そんな半沢直樹の結末を固唾をのんで見守っていたみなさんへ、「リアル半沢直樹」の世界をお届けする一冊。

以前ご紹介した、元マッキンゼー稲田さんの力作『戦略参謀』と併せて読めば、またリアルなビジネスの世界への理解が深まることと思います。

※参考:『戦略参謀』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478024464

この『破綻──バイオ企業・林原の真実』は、食品甘味料「トレハロース」をはじめ、数々の優れた商品を開発し、世界的優良企業と目されていた、林原破綻の真実に迫った一冊。

著者は、林原グループ基幹四社の専務取締役を務めた、林原靖氏です。

謎の破たん劇の真相に、当事者が迫るということで、それが面白くないわけがありません。

粉飾決算により、金融機関から多額の借入をしていたことが発覚し、突如破綻した「バイオの雄」林原。

しかしながら、いざ清算したら、結局弁済率が93%になったということで、一体何のための破綻だったのか、銀行の対応に疑念が持たれています。

レビューで何人かが指摘しているように、確かに経営陣に甘さがあり、銀行との信用を軽んじていたのは事実。

しかし、事業を見極め、人を見極め、それを支援するのが仕事であるはずの銀行が、世界的優良企業を破綻に追いやった罪は、やはり看過されるべきではないでしょう。

また、弁済率が93%でも、7%は返済できなかったじゃないか、と責める人がいますが、そもそも今すぐ払えるなら、お金など借りません。

銀行は貸し剥がして自行の利益を確保すればホッとしているかもしれませんが、いつ取り上げられるかわからないお金なら借りない、とすべての企業が考えれば、融資というビジネスは崩壊し、目利きのできる他の企業が、何らかの形で中小企業の支援ビジネスに走るでしょう。

既にトヨタやソニー、セブン-イレブンにまでビジネスを奪われ、瀕死の銀行ビジネス。

本書は、ある起業家の失敗談であると同時に、銀行というビジネス自体にも警鐘を鳴らす、著者渾身の一撃です。

もちろん、人間は自分に都合の良いことしか言いませんから、そこは差し引くとして、それでも読む価値のあるドキュメンタリーだと思います。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人生、何が淋しいって、いままで仲のよかった人が突然手のひらを返すみたいに冷たくなることほど淋しいものはない

おそらく四大法律事務所には、それを頂点として、それぞれに親密な「破綻ビジネス」の果実を分け合う周辺業者があるのだろう。その意味で、林原の破綻は、これらの周辺業者にとってはビッグで、しかも実り多いビジネスチャンスになった

八月二十三日に至り、中国銀行はかねてからの目論見どおり林原の保有する大量の中銀株式を自社株公開買付TOBで取得する、と発表した。資金は総額二三四億円。この自社株公開買付の一株あたりの価格は八六七円程度になるが、この時期の市場価格は一〇〇〇円を超えていたので、大幅に割安ということになる

弁済率九三%というこの数値は前例のない驚異的なもので、その数値が地元のテレビニュースで報道された前後から、わたしのもとに、「そもそもこれなら、潰す必要などなかったじゃないか」とか「こんな(破綻に至らしめた)処置はおかしい。あり得ない対応だよ」といった声が多方面からあがりはじめた

民間信用調査会社によれば、過去すべての更生会社の弁済率平均は一一%ほどで、四〇%にもなればきわめてまれ、といわれている

株主と代表取締役が同一である林原には、法的に創業家の公私混同はない。林原健に使途不明金があると報道された問題も、何のことはない、健が自分の個人所得や借入金から所得税や金利をきちんと払い、残りの金を生活費やおつき合い、家計費、趣味等に使い、その支払先をいちいち記憶していなかったというだけの話で、スキャンダルでも何でもない

「銀行マンとは常に事業の本質を見るべきものであって、たとえ書類上のマイナス点があったとしても、全体を見まわして改善や向上の兆しがあれば、大きな視点から万全の体制を組んで支え育てるのが銀行なんだ」(大手メガバンクの中枢で活躍していた熟達の金融マンの見解)

銀行というものは借りたいときには貸してくれず、要らないときに借りろ借りろと迫ってくる。バブル期、住友信託はわれわれの不得手な不動産開発の分野に膨大な金を貸し付けた。林原健は純粋に研究開発を一途にやりたかったはずなのだが、住信は自分たちの利益優先でも貸し付けてきたのである

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『破綻──バイオ企業・林原の真実』林原靖・著 ワック
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◆目次◆

第1章 優良企業・林原の内実
第2章 バイオ企業・林原の光と影
第3章 襲いかかった銀行、弁護士、そしてマスコミ
第4章 破綻の嵐に翻弄される日々
第5章 林原を巡る騒動とは何だったのか?

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