【科学的に「新しい売り方」がわかる本】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171457
どんなジャンルにも、読者が新刊を心待ちにしている著者がいるものですが、ことビジネス書においては、間違いなくダニエル・ピンクがそのうちの一人でしょう。
アル・ゴア元副大統領の首席スピーチライターを務め、独立後は、「フリーエージェント」「ハイコンセプト」など、時代を先取りするキーワードをいくつも提案してきた著者ですが、何と今回扱うのは、「セールス」です。
米国で話題のAirbnb(個人が自宅を宿泊施設として提供するサービス)、日本で多くのユーザーがハマっているヤフオクなど、ネットの発達は、多くの人を売り手に変えつつあります。
これに加え、『ワークシフト』でも述べられていた「ミニ起業家」ブームが、さらに人々をセールスマンに変えていく。
ダニエル・ピンクは、このトレンドをとらえ、新しい時代にふさわしい売り方を提案しています。
本書のタイトルにもなっている、『人を動かす、新たな3原則』=同調(Attunement)、浮揚力(Buoyancy)、明確性(Clarity)について、詳細が述べられており、じつに参考になります。
また、これまでのセールス本にありがちだった、情報の非対称性を使って消費者を丸め込む方法ではなく、人を心から動かす、そんな原理原則を説いています。
数多くのベストセラーからの引用や、現実に活躍しているセールスマンの事例がじつに巧みに織り交ぜられており、なかなか読み応えがあります。
なかでも興味を引かれたのは、「共感」よりもさらに好成績を上げたという、「視点取得」という視点。
どうしたらお客様目線で考え、ともに問題を発見し、購買へと結びつけるか。
本書には、その一連のノウハウと考え方が書かれています。
これはぜひチェックしていただきたい一冊です。
—————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
—————————————————
セールスパーソンを一掃させるはずだったテクノロジーが、小規模起業家への道を開き、多くの人を売り手に変えた
セールスの取引の金言は、これまで長きにわたりABC──「Always Be Closing(必ずまとめろ契約を)」──だった。(中略)新たなABCを紹介する──同調(Attunement)、浮揚力(Buoyancy)、および明確性(Clarity)だ
買い手が売り手と同じだけの情報を入手し、言い返せる手段も擁しているのなら、買い手はもはや事前に通告されるべき唯一の人物ではない。情報が平衡な世界で指針となる新たな原則は、caveat venditor(カウェアト・ウェンディトル)──“売り主は気をつけよ”である
「思いやりは訓練では身につきません」。ダーヴィッシュにとって理想的なセールスパーソンは、「自分の母親がここに腰かけて修理を受けようとしている、あるいは車を買おうとしているなら、自分はどんな判断を下すだろうか?」と自問する人だ。殊勝な心がけに思える。確かにそういえるだろう。だがこれが、今の時代の車の売り方なのだ
カーマックスでは客の半数が、家から持参したプリントアウトを手に握る。スマートフォンやiPadの画面をタッチ操作する者もいる。それでもまだ情報入手の手段が必要な人のために、ずらりと並んだパソコンが利用できる
共感を促された者は、対照群よりも多くの取引を成立させた。ところが視点取得を促された者は、さらに好成績を上げた。七六%が、双方ともに満足する合意にこぎつけたのだ
本当の問題を取り違えているとき、はっきり把握していないとき、あるいは皆目見当がつかないときに、他者の助けは大いに役立つ。そのようなとき、人の心を動かすために重要なのは、他人の問題を“解決”する能力よりも、問題を“発見”する能力なのである
「今、季節は春なのに、わたしの目は見えません」(中略)明確性は対比次第なのである。この場合、物乞いの男の看板によって、公園の人たちは自らの現実と男の現実とを鋭く比較して、心を動かされ彼に共感したのだ
————————————————
『人を動かす、新たな3原則』ダニエル・ピンク・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171457
————————————————-
◆目次◆
はじめに 売らない売り込みとは
第1部 セールスマンの復活
第1章 現代人はみなセールスに関わっている
第2章 アントレプレナーシップ、弾力性、教育・医療
第3章 “買い主は気をつけよ”から“売り主は気をつけよ”へ
第2部 セールスに必要な特質
第4章 同調
第5章 浮揚力
第6章 明確性
第3部 セールスに必要なスキル
第7章 ピッチ
第8章 即興(インプロ)
第9章 奉仕
謝辞
訳者解説 3年後のあなたを、本書が創る理由 神田昌典
注
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)
お知らせはまだありません。