【これは力作。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152093714
もう時効だから書きますが、ゲーム会社に勤めていた頃、とてもショッキングな出来事がありました。
当時勤めていた共同経営のゲームセンターでは、決算前に数字上、会社の取り分を増やすために、オーナーのコストが増大するような小細工をしていたのです。(詳しくは割愛します)
ここで得た教訓は、「間違った指標を設定すると、人は間違った行動をする」ということ。
残念ながら近年では、この過ちが一企業のみならず、国家単位でも行われてきています。
GDP偏重の経済、環境無視の企業活動、幸福を阻害する社会制度などが、それに当たります。
本日ご紹介する一冊は、そんな問題に、経済学者と作家が真正面から切り込んだ一冊。
著者らは、本書の冒頭で、GDP偏重の経済が抱える問題点を、以下のように指摘しています。
<地下水が汚染されて、ボトル入りの水を水道水の一〇〇〇倍の値段で買わなければならないとすると、GDPは押し上げられる>
<問題は、「マクロ経済が無制限の成長を究極の目標としていること」であり、「経済成長の主たる指標がGDPだということ」なのだ。この目標も指標もどちらも間違っている>
われわれは、いつの間にか間違った指標を追い、隘路に入り込んでしまっていたのです。
本書では、このGDPのほかにも、人々の健康問題、幸福の問題、労働時間の問題に切り込んでおり、なかなか興味深い議論が展開されています。
世界レベルで見た幸福度や競争力、見本となる各国の政策、企業事例など、客観目線で見た分析が読ませてくれます。
たまには金儲けから離れ、これからあるべき社会を考えるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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地下水が汚染されて、ボトル入りの水を水道水の一〇〇〇倍の値段で買わなければならないとすると、GDPは押し上げられる
問題は、「マクロ経済が無制限の成長を究極の目標としていること」であり、「経済成長の主たる指標がGDPだということ」なのだ。この目標も指標もどちらも間違っている
安心感こそが「リスクを取ること」「自由」「個人主義」などの基盤
デンマークでは、企業が従業員を解雇や一時解雇することは難しくないが、従業員は失業期間中、優れた社会保障を受けられる。失業手当は、ほぼ元の給料に匹敵する額が二年かそれ以上の期間支払われる。そしてこの期間に、失職者は新しい仕事を見つけるための周到な支援を受ける。それでも仕事が見つからなければ、公的事業の仕事が与えられる。その仕事を受けなければ、失業手当は打ち切られてしまう
オランダの「労働時間調整法」は非常に人気があり(今ではドイツにも同様の法律がある)、オランダはパートタイム労働者の比率が世界で最も高い。そしてパートタイムの仕事は、福利厚生も雇用の安定もあり、アメリカのように二流の仕事として軽んじられることはない
スペインのバスク地方には「モンドラゴン協同組合」と呼ばれる、産業協同組合の巨大な集合体がある。これは一九五六年に設立され、現在では国内で七番目に大きな企業である(中略)モンドラゴンでは、マネジャーと最低賃金の労働者との賃金格差は、三対一から九対一程度で、平均すると、五対一以下である。従業員自身が、共同経営者として給料レベルを決定する。スペインの同様の企業と比べると、労働者の給料は約一三パーセント高く、マネジャーの給料は約三〇パーセント低い。おまけに協同組合では利益の分配がある
水が節約できるとか、有害な建材を使わないことの利益が、家やビルの価格に反映されたなら、業界全体で、エコな建築の方に速やかに投資が動くだろう
カーターは演説の中で、ミシシッピ州の小都市の黒人市長の、次のような言葉を引用した。「偉い人間ばかりが重要なんじゃない。誰かがどこかでまず何かを掘り出さなけりゃ、ウォール街で売るものは何もないんだ」
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『経済成長って、本当に必要なの?』ジョン・デ・グラーフ、
デイヴィッド・K・バトカー・著 早川書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152093714
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◆目次◆
第一章 GDP 国内総生産
第二章 幸福の追求
第三章 人々によい生活を提供する
第四章 膨大なコストをかけても不健康
第五章 暮らしの不安
第六章 時間に追われる
第七章 最大多数にとっての幸福
第八章 能力(キャパシティ)の問題
第九章 持続可能性
第一〇章 アメリカ経済の歩み
第一一章 よい時代がいつなぜ悪くなっていったのか
第一二章 住宅、銀行、融資、借金、破産、差し押さえ、失業、
通貨…収集のつかない混乱
第一三章 二一世紀の経済──生命と自由と幸福のための経済
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