2013年4月4日

『俺のイタリアン、俺のフレンチ』坂本孝・著 Vol.3180

【常識破りのビジネスモデル。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785504544

本日の一冊は、ブックオフの創業者であり、現在、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」で大ブレイク中の坂本孝さんによる経営論。

スキャンダルにより、一時はビジネス界から葬り去られた著者が、常識破りのビジネスモデルを引っ提げて、まさかの飲食業界に挑戦。

食材費60%超。フレンチなのに立ち食い形式で驚異の3回転。「一流の料理人が、高級食材を“じゃぶじゃぶ”使用した一流の料理をつくり、お客さまが驚くほどの安い価格で提供する」コンセプトで大勝利を収めた著者が、どうやってこのビジネスモデルを実現したか、その詳細を書いています。

著者は、飲食業、ブックオフ以前にも家業を手伝ったり、ピアノの中古ビジネスを手掛けたりして、ビジネスの勘所を知っている人物。

徹底した現実主義者であり、本書でも、のっけからこんなことが書かれています。

<ビジネスの戦いに勝つ条件は、そのビジネスモデルに「競争優位性」があること。そして、参入障壁が高いことです>

では、著者が手掛けた「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の「競争優位性」と「参入障壁」は何か。

本書を読む限り、「競争優位性」は、あり得ない価格と料理のクオリティ。参入障壁は、飲食コンサルタントも驚きの食材費の高さ、リクルーティングが難しい一流シェフを揃えたこと、回転率を上げるノウハウと、それに伴い発生するさまざまな問題への対処法などでしょうか。

宅急便がそうであったように、理論的には正しくても、黒字が出るかどうか、やってみるまでわからないビジネスモデルは、参入するのに勇気が要ります。

それを実行するのがビジネスの醍醐味なのですが、本書からは、そのワクワク感が、十分なほど伝わってきます。

あっと驚くアイデアとビジネスモデル、それを支えたシミュレーションと余裕資金、広がりの感じられるビジネス展開…。

これぞビジネス、と思わず膝を打ちました。

起業家を目指す方、経営者は必読の一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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不景気だと言われているにもかかわらず、毎日毎晩すごく繁盛している業態は、立ち飲みの居酒屋、そしてミシュランガイドブックの星付きレストラン。「この二つをくっつけてしまえ」とひらめいて誕生したのが、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」

15~20坪程度で、いずれも1日3回転以上していて、月商1200万~1900万円という繁盛店ぞろいです。料理の原価率は60%を超えていますが、これを立ち飲みのスタイルにして、客数を回転させることによって、これまでの常識にない数字をつくり上げているのです。シミュレーションでは、原価率が88%であっても利益が出ます

「アイデアは閃きだけではなく、きちんと数字で表現すること。これまでの常識に対して、数字に落とし込んだアイデアとのギャップがあるときは勝つチャンスが高い」(創業メンバーで元証券マンの安田道男氏)

家賃比率が15%というのはよくある数字ですが、これはお店の回転数を1回転と想定しているものです。そして、グランメゾン(ミシュラン三ツ星級の超高級フランス料理レストランのこと)であれば4人席に3人座ることもあるので0.75回転しかしません。でも、それが仮に4.5回転すれば客数は6倍となります。売上げが6倍に上がることにより、家賃比率は2.5%まで落ちることになります。普通の家賃比率15%に対して2.5%であれば、12.5%浮くことになり、その分を原材料につぎ込んでも大丈夫ということになるのです

商品の価格構成の中で、その会社が一番多く打ち出している価格帯に、その会社の精神と宿命は宿っているのではないでしょうか。価格構成の中の最多価格帯に対してどれだけの価値を持てるか、それが企業戦略そのものなのです

企業の意思決定には、ハンドルの遊びは大切だと思います。資金的な余裕が、この遊びにつながるのです。資金的にかつかつとしていては、従来の模倣はもちろん、それ以上のアクションは起こせません

この10年間、日本経済は大きく揺れました。その度に被害を受けたのは銀座です。社用族が多かったからです。しかしながら、銀座に比べると新橋は、働いている人が身銭をきって利用するお店が主なので、あまり影響を受けなかった場所です

「日本人1億人の中で、3万円の料理を日本全体の何%の人が食べるんだろうか。ちょっと待てよ……」そんな疑問に対して、「こっちだよ」と私たちが手招きをしたのです

わが社では現在、銀座8丁目に集中して出店していく方針をとっています。店舗展開は一般的に、銀座でうまくいくと次は六本木に出そうとか、新宿に出ようとか、渋谷に出そうとか、このように商圏が広い繁華街に出していくことを考えます。わが社は、そういう店舗展開をあえて行いません

競争優位性は、道楽に見える挑戦の産物

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『俺のイタリアン、俺のフレンチ』坂本孝・著 商業界
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785504544

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◆目次◆

第1章 空前の繁盛店、「俺のイタリアン」誕生
第2章 2勝10敗の事業家人生
第3章 ブックオフがNo.1企業になれた理由
第4章 稲盛和夫氏の教えと、私の学び
第5章 「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は進化する
第6章 「物心両面の幸福を追求する」決意表明
第7章 業界トップとなり、革新し続ける

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