2007年3月8日

『松下ウェイ』

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478375194

本日の一冊は、松下電器のV字回復を主導した中村邦夫会長のブレーンが、内側から見た改革の様子を初めて語った一冊。

十数年にわたり中村会長と親交を続け、中村改革をじかに見続けてきた著者が、改革の本質と、それを主導した中村会長の手腕に言及しており、じつにエキサイティングな一冊です。

本人の言なのでどこまでが真実かわかりませんが、どうやらFF式石油温風器の事件があった際、リコールをするよう指導したのも著者らしく、その際に著者は、ジョンソン&ジョンソンの有名な「タイレノール事件」を引き合いに、信用の重要性を説いたようです。

ほかにも、キャッシュ化のスピードを上げるよう、すべてを改善指導したり、IT化について指導したのも著者の仕事だったようです。

本書を読む限り、中村改革とは、つまるところ企業経営のキャッシュ化速度を上げるよう、経営を見直したということであり、さらには、会社のすべての要素を顧客に近づけるよう努力したということです。

とは言え、そこは巨大組織。リストラも含め、実行するには並々ならぬ苦労があったことがうかがえます。

あくまでコンサルタント目線の本なので、そのあたりがやや淡白ですが、内側からの証言ということで、興味深く読むことができます。

V字回復モノが好きな方は、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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中村が我々の著書『日本の弱点』を読んだのは一九九〇年年代半ば、松下の米国現地法人を率いていたときだった。彼はパナソニック・
ショールームに関する我々の批評を読んで激怒したものの、その次
の行動は米国人ではおよそ考えられないものだった。反撃する代わ
りにショールームを閉鎖し、どうすれば米国事業を改善できるか、
我々にアドバイスを求めてきたのである

「利益率はどれくらいが最適か」などとは考えず、むしろどのよう
な組織形態が最も高い利益率をもたらすかを考える

情報コストが十分に低下すれば、すべての権力は消費者に向かう

デルの場合、売上げを現金に転換するのはマイナス一〇日、つまり
支出が発生するよりも前に代金を受け取っている。対して松下は、
デルよりも三カ月近い長い時間を要しており、不動産・工場・設備
回転率(PPE回転率)および在庫回転率もはるかに低い。事実上、
松下電器は「銀行」になってしまっていた

翌朝、土曜日だったが、私は中村にメールを送り、一九八二年にジ
ョンソン&ジョンソンが「タイレノール事件」をどう処理したかを
説いた。看板製品の「タイレノール」に何者かが青酸カリを混入さ
せ、シカゴ地域で七名の死者が出た事件である。同社は三一〇〇万
本の「タイレノール」を回収、絶体絶命の危機を迎えたが、二年も
しないうちに復活したうえ、以前よりも大きく成長したのである

成功企業のオペレーションの中核には、人間ではなくインターネットがある

◆キャッシュ化速度を阻害する要因を発見するための3つのポイント
1.在庫日数 2.売掛金日数 3.買掛金日数

事業を成功させるには、現代の製造業の基本原則を理解する必要が
ある。すなわち、「利益が生じるよう販売プロセスを適切に管理す
るには、高いキャッシュ化速度が得られるよう、流通と製造を十分
に統合しなければならない」

幸之助は組織再編を何度か行なったが、経営原則のお第一は、会社
のすべての要素を顧客に近づける構造が、最も大きな市場シェアと
利益をもたらす、というものだった。さらに、運転資金の劣化は幸
之助を最も迅速な行動へと駆り立てた

◆松下の今後の課題となる5つの実践能力
・企業文化を製造中心から需要管理中心へと変えていく
・松下製品をめぐる顧客体験を直接管理する
・社外向けのロジスティクスおよび在庫に関して優れた管理を行う
・グローバルな取引先との関係をさらに深くしていく
・オペレーションをグローバル化する

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『松下ウェイ』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478375194
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■目次■

第1章 取り残された松下
第2章 中村邦雄の軌跡
第3章 サッカーボール理論
第4章 改革のアウトライン
第5章 成長基盤の改革と育成
第6章 ブランド改革と製品再編
第7章 改革の検証と残された課題
第8章 明日の松下

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