2012年10月26日

『価値創造の思考法』小阪裕司・著 Vol.3020

【小阪裕司氏、5年ぶりの新刊。今売れる商品の共通点とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557229

「消費が変わった」

このことを実感している経営者は多いと思いますが、一体何がどう変わったのか、言語化できている人は、そんなに多くないのではないでしょうか?

本日ご紹介する一冊は、1500社以上が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰し、日本感性工学会の理事も務める小阪裕司さんが、この消費の変化をまとめた一冊。

これまでにBBMで紹介してきた三浦展さんの『第四の消費』、神田昌典さんの『2022─これから10年、活躍できる人の条件』、堺屋太一さんの『人を呼ぶ法則』、クリス・アンダーソンの新刊『MAKERS─21世紀の産業革命が始まる』、梅棹忠夫さんの名著『情報の文明学』と併せて読んだところ、点と点が線となり、次の消費社会がどうなるか、よくわかりました。

本書の冒頭には、豪雪地帯にある地方の食品スーパーが出てくるのですが、このスーパーの施策に、これからの消費社会のヒントがあると小阪氏は述べています。

従来のスーパーでは、商品は特売品と定番品、生鮮と惣菜などに分類されますが、このスーパーの分類法は、「生活必需の商品」と「心を豊かにする商品」。

店主は、この「心を豊かにする商品」のボリュームを思い切って増やし、その価値を伝えることで売上を伸ばしたのです。(「心を豊かにする商品」の売上は前年比166%。全体の売上も前年比108%になったそうです)

本書で説かれている新しい消費とは、この心を豊かにする消費のこと。

著者は、この新しい消費社会の到来を、主婦向け雑誌「Mart」、ル・クルーゼの鍋に見られる「飾り見せ収納」、木目が楽しめる床材「ライブナチュラル」などの例を挙げながら説明しています。

大切なのは、モノではなく、価格でもなく、価値。

そしてその価値は、感性情報が与えられることによって高まる。

エドワード・ホールは名著『かくれた次元』のなかで、人間が自己の体の延長物を発展させる傾向について述べましたが、インターネットが高度に発達した現在では、視覚・聴覚の重要性が増しており、企業はこれに訴えることで、大きな利益を得ることができるのです。

この『価値創造の思考法』のなかで著者が紹介しているのは、この消費者の視覚・聴覚に訴える概念化・言語化の方法、そしてそのためのツールである「価値要素採掘マップ」です。

この「価値要素採掘マップ」には、それぞれ4つの質問が含まれており、読者はこの4つの質問に答えるだけで、自社商品の隠れた価値に気づくことができます。

◆価値要素採掘マップの「四つの質問」
1.「究極の質問」
「どうして私が今、あなたから、この商品を買わなきゃいけないの?」
2.「認知的価値」(効果・効能)と「情緒的価値」
3.「問題解決」と「心の充足体験」
4.物語要素(バックストーリー)

そう。売れていないのは、いい商品がないからではなく、本来商品が持っているはずの価値に気づいていないからなのです。

本書では、この価値を見つけ、伝える方法と、さらには商品を通じてつながった顧客とどう絆を築いていくか、その具体的ヒントが書かれています。

既に変わってしまった消費者とどう付き合って行くか。そのヒントを知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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心を豊かにする商品はただ棚に置いておくだけでは売れないが、あれこれ考え、店頭でその価値を伝えるとよく売れるという

キッチン用品は目につかない場所に収納するのが普通だと思うが、ル・クルーゼに限っては見える場所に飾るのが一般的だ(中略)「だって、リビングに座ったときキッチンを見て、ル・クルーゼがずらりと並んでいたら、幸せって感じがするじゃない」

「胃袋」ではなく「頭」で食べる時代

「今のビジネスの状況の大きな変化のカギとなるとらえ方がある。それはお金を支払うことの価値が、以前は『所有権の移転』だった。ところが今はそうではなく、『体験の取引』になった」(日本マーケティング・サイエンス学会での議論)

「ライブナチュラル」という商品である。同商品は「床」なので、ダウニーなどと違って「かわいい」とは言われないし、ル・クルーゼのように飾ることもないが、実はこれが大ヒット中だ

新しい消費社会が来たということは、われわれは新しい社会システムを相手にしているということだ

昔からあるものに新しい価値、新しい見方を提示する

お客さんを動機づけて「買いたい!」のスイッチを押す一番のカギは、商品の価値を概念化・言語化することなのだ

◆価値要素採掘マップの「四つの質問」
1.「究極の質問」
「どうして私が今、あなたから、この商品を買わなきゃいけないの?」
2.「認知的価値」(効果・効能)と「情緒的価値」
3.「問題解決」と「心の充足体験」
4.物語要素(バックストーリー)を掘り起こす

チョードリー氏は、30品目に及ぶ製品カテゴリーのA/R比(AはAffect:情緒、RはReason:理性)から、たとえば「キャンディー」はきわめて情緒寄り、「自動車」はやや理性寄り、「家庭用器具」は理性の割合が高いとしている

新しい消費社会は「諸現象は一回しか起きない(すべては個別具体的な一回性の事象である)」

◆絆を生む四つの要素
1.顧客との適度な接触頻度
2.顧客にとって有益な情報の発信
3.顧客への適切な自己開示
4.顧客に情緒的な体験を与えられた機会

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『価値創造の思考法』小阪裕司・著 東洋経済新報社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557229

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◆目次◆

第1章 新しい消費と見えざるシステム
第2章 なぜ、価値創造がいつまでも「実現」できないのか
第3章 今ある商品をよみがえらせる方法
第4章 お客さんの“充実の旅”を計画する
第5章 顧客を「絆顧客」と「応援者」にする
第6章 こうして未来の収益と失う危機を予測する
第7章 「ひと」を軸にしたビジネスと社会の「実現」へ向けて

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