2006年8月17日

『本の読み方 スローリーディングの実践』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569654304

本日の一冊は、『日蝕』で芥川賞を受賞し、「三島由紀夫の再来」
として注目を集める著者が、その独自の読書論、読書術を公開した
注目の一冊です。

※参考:『日蝕』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101290318

膨大な情報にさらされ、一種の強迫観念にとらわれている現代人を
「速読コンプレックス」と表現し、そのコンプレックスから解放さ
れるための読書を提案しているのが最大の特徴。

読書本来の楽しみや本質的な価値に、作家としての視点が加わった
内容は、じつに読み応えがあります。

注目したいのは、前半で紹介した読書法を、古今東西の名著を題材
に、実践して見せているところ。

夏目漱石の『こころ』や、森鴎外の『高瀬舟』、三島由紀夫の『金
閣寺』など、名著中の名著8作品とその味わい方について、作家な
らではの視点を交えながら解説しています。

※参考:『こころ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101010137
※参考:『高瀬舟』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087520285
※参考:『金閣寺』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101050082

土井も常日頃から思っていることですが、本を楽しもうと思ったら、
書くことと読むことは本来、切り離せないもの。

両方の視点から読む・書くことによって、私たちの知恵や心はもっ
と豊かになるはずです。

本書を読んで、本当に豊かな読書とは何か、知的活動の喜びとは何
か、改めて考えさせられました。

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■ 本日の赤ペンチェック
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単に一読者として小説を読んでいた頃には気がつかなかった様々な
仕掛けや工夫に注意を払うようになってから、私は改めて、読書は
面白いと感じるようになった。そして、私だけではなく、実は作家
の多くは、他人の本を読むときにも、やはり書き手の視点で読む、
という作業を行っているのである

自分の趣味に固執し、今の自分を肯定してくれるような本ばかり読
んでいては、ますます視野を狭めていってしまう

読書は、読み終わったときにこそ本当に始まる。ページを捲りなが
ら、自分なりに考え、感じたことを、これからの生活にどう生かし
ていくか。――読書という体験は、そこで初めて意味を持ってくる

モンテスキューほどの第一級の知性の持ち主が、二〇年もかけて考
えたことを、どうして私たちが、一時間や二時間の飛ばし読みで理
解できるだろうか?

文章がうまくなりたいと思う人は、スロー・リーディングしながら、
特に好きな作家の助詞や助動詞の使い方に注意すること

言葉に敏感な人ほど、知ったかぶりをせず、辞書と緊密に付き合うものだ

一方で自由な「誤読」を楽しみつつ、他方で「作者の意図」を考える

常に「なぜ?」という疑問を持ちながら読むこと。これは、深みの
ある読書体験をするための一番の方法である

主体的に考える力を伸ばすこと。これこそが、読書の本来の目的である

気になる箇所に線を引いたり、印をつけたりする習慣をつけておく
と、内容の理解が一段と深まる

「読んでは、ブックオフ」式の右から左への読書ではなく、「読ん
だら書棚」式の読書で、まずしばらくは本を寝かせる。そうして、
適度な熟成期間をおいてから、もう一度その本を手に取ってみる。
その熟成期間とは、もちろん、自分自身の熟成期間である

作品の主題を現代と引き比べて考えるということもまた、作品の読
解に深みを与える

読書で大切なことは、自分の感想を過信しないという態度だ

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『本の読み方 スローリーディングの実践』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569654304
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■目次■

序 本はどう読めばいいのか? 
第1部 量から質への転換を スロー・リーディング 基礎編 
第2部 魅力的な「誤読」のすすめ スロー・リーディング テクニック編 
第3部 古今のテクストを読む スロー・リーディング 実践編 
 夏目漱石『こころ』 
 森 鴎外『高瀬舟』 
 カフカ『橋』 
 三島由紀夫『金閣寺』 
 川端康成『伊豆の踊子』 
 金原ひとみ『蛇にピアス』 
 平野啓一郎『葬送』 
 フーコー『性の歴史I 知への意志』

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