本日の一冊は、長年クライアントのプライシングの問題に取り組んできたマッキンゼーが、その25年にわたるプライシングノウハウを体系的にまとめた一冊です。
プライシングの本は、これまでにも何冊か出てはいますが、なかなか決定的なものはありませんでした。
しかし、この本は、プライシングを包括的かつ科学的に論じており、事例も豊富です。事例を読めば、プライシングがいかに経営において重要か、いかに多くの経営者がこのプライシングを軽視して、失敗しているのかが、よくわかると思います。
シェア拡大や販売促進の手段として安易に用いられがちな「値下げ」ですが、本書ではいかにして利益を圧迫せずに市場優位を築くか、という点にフォーカスして、論を展開しています。
「顧客が売り手に対して与えうる最大の称賛は、その会社のモノやサービスに対し、承知のうえでほかのものより多く支払うことにほかならない」という言葉は、心構えとして、すべての経営者が覚えておきたい言葉です。
プライシングに有用なツールや、割引・値引の管理をする際の考え方なども紹介されており、とくに大企業のマネジャーにおすすめしたい内容です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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どんな企業も必ず手にできるはずなのに、ごくわずかの企業しか狙おうとせず、しかもあまり成功していない競争優位が一つある。それが、価格優位だ。
経験から言うと、現実の市場での価格弾力性は、最高でも-1.7か-1.8(中略)稀に、衝動買いの多い消費財などで、-2.5程度まで上昇することはある
◆プライス・マネジメントの3つのレベル
1.業界レベル 2.製品・市場レベル 3.取引レベル
ポケット・プライス・バンドが広いとき、そこには間違いなく価格設定を改善する機会が潜んでいる。広いバンドは、市場が不均質であり、そこに介入の余地があることを示す
◆バリュー・マップ(横軸:認知便益、縦軸:認知価格)
実際の市場でバリューを形成する価格・便益のバランスを読み取れる
市場の認識を示す詳細なプロファイルを作成すれば、企業が望むバリュー・ポジショニングと実際のポジショニングとの乖離が見つかりやすい
ある賢い家電メーカーは、ある商品のライフサイクルの終盤では、値下げを2週間遅らせるだけで年間利益を17%増やせることを知っている
誤った価格設定の80%~90%の原因は、発売時の価格水準が低すぎること
◆新商品のプライシングに検討すべき6項目
1.便益を評価し定量化する
2.市場規模を予測する
3.価格の下限を決定する
4.発売価格を設定する
5.競合の反応を予測する
6.市場に価格を提示する
◆合併後のプライシングの注意点
・優れているほうの会社のプライシングが甘くなる
・契約条件や割引・値引方針をよく見直さないと、割引や値引が重
なって思わぬ損をすることがある
何か手を打たねばならない場合でも、できれば価格で対抗するのは避けたい。ある聡明な医療機器メーカーは、競合が値下げをするたびに、性能の改善、サービスの拡大、納期の短縮など便益の増大で対抗した
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『価格優位戦略』
http://tinyurl.com/dp9kh
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■目次■
はじめに
第1章 価格優位はなぜ重要か
第2章 プライス・マネジメント
第3章 取引レベル
第4章 製品・市場レベル
第5章 業界レベル
第6章 新商品のプライシング
第7章 ソリューションのプライシング
第8章 合併後のプライシング
第9章 価格戦争
第10章 ITの活用
第11章 プライシング・アーキテクチャ
第12章 プライシング変革4つの柱
第13章 マナーク・バッテリーの事例
おわりに
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