本日の一冊は、暗い世の中で、一生懸命に自分らしい生き方、働き方を模索する人々を、ただひたすら紹介した本です。
日本経済新聞の連載をまとめて単行本化したもので、文章は新聞調。ボリュームの割にはあっさり読めてしまいます。
下手に議論を差し挟まず、ひたすら働く人々の姿を紹介し、現在の傾向をまとめることで、むしろ読者に働くことの意味を考えさせてくれる、そんな一冊です。
本文から、現在の労働環境や働く人々の抱える問題点の一部をピックアップしてみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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ベネッセ文教総研によると「仕事を通じて人の役に立ちたい」という大学生は一九九七年には三人に二人にとどまったが、二〇〇一年には四人に三人を占めた。社会や会社という「公」のためか、自分や家族という「私」のためか。両者をどう調和させるか。働く人々が二つの軸の間で揺れている。
都会の猛烈主義か、地方の「スローライフ」か。働き方の選択肢は着実に広がる。そんな環境で、自らの価値観を見据え、一人ひとりがそれぞれの働き方を探る動きが静かに進む。
情報技術(IT)の普及で新しい働き方が広がる。日本テレワーク協会によると、ITを駆使し、時間や場所に縛られずに働く人は四百万人を超えた。全就業者の六%に相当する。だがバーチャル社会の住人たちは同僚との連帯感や、汗を流した末の達成感への飢えとも闘う。
「普通にやっても七―八割は失敗する。ならば納得ずくで未知のやり方を試したい」(フジスタッフ部長、深津雅史)
カギになるのは、社会学で言うところの「弱い紐帯」だ。
出世したくない若者が増えている。産業能率大学の調査では「地位に関心がない」新入社員は九三年の三五%から増え続け、二〇〇二年には五三%と半数を上回った。社会経済生産性本部が働く目的を新人を聞いたところ、「楽しい生活をしたい」が三五%とトップで、「偉くなりたい」はわずか三%にとどまった。
日本人の所得格差は八一年以来拡大を続け、九九年は過去最高に開いた。「日本が平等社会というのは幻想に過ぎない。貧富の格差は独仏並みで、米国に近づきつつある」(京都大学教授、橘木俊詔)
厚生労働省の試算では、日本の労働力人口の総数は二〇一五年までに九十万人減るが、六十歳以上の層は三百四十万人増える。日本経済の競争力を維持するためには、高齢者の労働力の活用が喫緊の課題だ。
大学卒業者の就職率は一九九一年の八一%から二〇〇三年に五五%まで下がり、定職に就かない層は四百二十万人に迫る。
「すべての人間が人生の一瞬一瞬を、次の瞬間が最後の瞬間となってもいいように生きる」――(アーノルド・トインビー)
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20代でベンチャー企業を起こした若者、リストラの憂き目にあった中高年、したたかに会社を利用してキャリアを磨く若者、極端な成果主義にとまどう人々…。さまざまなケースが登場しますが、読者によって、どの人物に共感するかは異なると思います。実際に働いている人々の話は、本書で読んでみてください。
というわけで、本日の一冊は、
『働くということ』
http://tinyurl.com/4o5vy
です。来年の「働き方」を考える上でも、ぜひ読んでおきたい一冊です。
■目次■
はじめに
第1章 二つの価値に揺れる
第2章 世代のズレに悩む
第3章 不安と向き合う
第4章 会社との距離を探る
第5章 その喜びを伝える
第6章 「常識」を疑い壁に挑む
第7章 答えは悩みの中にある
おわりに
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