本日の一冊は、最近いくつかの書籍で紹介されている「ファシリテーション」に関する書籍です。
ファシリテーションの場合、コーチングなどと一緒で、理論は理解できても、肝心のプロセスが習得できないと意味がありません。
本書では、その点をふまえ、ストーリー形式でファシリテーションの技法が紹介されています。
ファシリテーションの技術を使い、マーケティング部門の生産性を飛躍的に高めた若手女性リーダー、黒澤涼子が、今度は開発現場の意識改革と組織変革、そして生産性の向上に挑むという、なんとなく『ザ・ゴール』的なストーリーになっています(笑)。
とは言え、さすがにMITでMBAを取得し、GEに勤務。実務経験を経て、日本ファシリテーション協会の理事を務める著者だけあって、ストーリーの作りは緻密で、読者はあたかも自分が現場にいるような感覚で理論と実践を学ぶことができます。
本文が会話体で展開されているため、引用は難しいですが、要点だけ抜き出してみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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■ファシリテーションとは
皆さんが持っている知恵や疑問をうまく引き出し、反応させて、いちばん優れた考えを導き出す「グループウェア」のようなもの
■新任管理職インテグレーション
・よそ者を受け入れる際に、お互いの心理に起こる「お前は何者だ?」とか「自分は受け入れられるだろうか?」といった懸念を払拭するために設計されたやり方
・グループダイナミックス理論の応用で、新しい管理職をすばやくグループに溶け込ませるための手法
・リーダーの出入りの多い欧米企業などでよく用いられる
■心理学者のタックマンが組織の進化として唱えたモデル
組織は、形成(フォーミング)された後、すぐに機能(パーフォーミング)しはじめるのではなく、その前に、ストーミング(混乱・対立)があり、ノーミング(統一)が進んではじめて機能しはじめる
■GE式ワークアウトの狙いと効果
・ひたすら「ストレッチ」する
・「システムシンキング」を育てる
・既成概念にとらわれない水平思考を促す
・本当の権限委譲と「説明責任」を生み出す
・短サイクルでの変革とすばやい意思決定を手にする
相手の緊張をほぐすような簡単な質問を何度か繰り返してから、次第に核心に迫る質問を繰り出していく。ベテランのジャーナリストなどがよく使うインタビューのテクニックだが、ファシリテーターにとっても重要なスキルだ。
塩崎は、相手の発言を鸚鵡返ししながら書き留めた。発言を繰り返すことで、相手への同意の気持ちを伝えることができる。塩崎は、発言を促すために意図的に繰り返した。
取り組んだことすべてがうまくいくわけではないのだから、より高い自己目標を設定しておかなくて、どうして所期の目標を達成できるのか。GEのウェルチ前会長が、ストレッチゴールと呼んでいた発想だ。
SWOTは、機会と脅威という環境要因と、自社の強みと弱点という内部要因を組み合わせた簡単な表を作成するエクササイズだが、完成した表よりは、これを皆で作成するプロセスが重要(中略)書かれた言葉以上に、問題意識が深く共有化される。それを目の前にして議論すると、建設的な意見が増える。同じことでも外部の人間から言われたのでは、反発が生まれるかもしれないが、こうして自分たちが考えれば動機が内在化する。
ブレーンストーミングではアイディアに対する批判はご法度だが、往々にして批判は出てくるものだ。そういう発言を、いちいちとがめるのではなく、PAと題した紙を一枚用意してすばやく書き留め、話を本筋に戻す。皆に見えるようにPAを貼り出しておくところがポイントだ。
二つ以上の組織が共同して働くとき、多くの場合、問題は組織と組織の間に発生する
何のためにやっているのか混乱しているなと思ったら、ツリー状に目的と手段を結んで構造を示すのがいい(中略)ツリー構造を描きながら議論すると、全員で真の目的を共有することができます。
■プロセスマッピング
・物や情報の流れをブロック図に表していく
・客観的に自分たちのプロセスを見直すのに役立つファシリテーション・ツール
社員の行動を変えられないのなら、組織やプロセスをいじっても混乱するだけ無駄というものだ。
■フォース・フィールド・アナリシス
あるべき姿を妨げている『力』。例えば、マーケティングが、各市場セグメントの魅力度をよく把握していないとしましょうか。それは、マーケティングの人たちがそうしようとしていないのか、能力がないのか、やろうとしているのだが、もっと他にやるべき事があってできないのか?どういう力が働いてそうなっているのかを書いてほしい
ミッションですから、達成したかどうか計測できるように書くことが重要 しかし、これを達成したいと思わせる、感性に訴える要素もいる
人の気持ちが続くのは九〇日だ。その間に改革を軌道に乗せられるかどうか。それが失敗と成功の分かれ道だ
理想はそういうチーム作りだね。優秀なプレーヤーほど、練習をノルマだとは思っていないでしょ。栄光への道だと信じている。繰り返し同じ動作を練習しても、取り組むプレイヤー一人ひとりの気持ちによって、結果には大きな違いが出る。この会社も、これから実施する組織変更だけでは何も変わらない。新しいリーダー、そしてSWATの卒業生達が、気持ちや行動のうえで要にならなければ改革は成功しない。せっかく生まれた目標に対する内発的な動機付けを、どうやって維持するか。そこが勝負だと思います
■ホーソン実験の教訓
1労働者の行動は、感情から切り離しては理解できない。
2感情は偽装されることが多く、面接では把握しにくい。
3感情は、その人全体的状況と合わせてはじめて理解できる。
ファシリテーターの人たちは、チームが達成しようとしている目的から絶対に目を離さないんだよ。その上で、人と人とのインタラクションに注目している。感情的なしこりが障害になっていると思えば、それを取り除くことを考える。既成概念にとらわれて新しい発想ができないと見れば、視野を広げようとしたり、時にはショックを与えて目を開かせてくれる。
■会議を阻害する五大悪癖
1過去の話を繰り返すだけ
2自分達がコントロールできない他の部署などのせいにする
3アクションを決めない
4全体最適に逆行する部分最適の主張を繰り返す
5堂々巡りの議論
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MBAで学ぶ分析ツールや理論が数多く登場しますが、わかりやすく書かれているため、予備知識がなくても読むことができます。むしろ、楽しいストーリーを読みながら理論を学ぶ良い機会といえるでしょう。
というわけで、本日の一冊は、
『ザ・ファシリテーター』
http://tinyurl.com/668km
です。ストーリー形式で書かれているので、ファシリテーションの
プロセスを学ぶのに適した一冊だと思います。
■目次■
はじめに
第1章 リーダーズ・インテグレーション
第2章 開発センターの改革
第3章 全社改革へ
第4章 SWAT
第5章 エグゼキューション
第6章 何が変わったのか
エピローグ
あとがき
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