2004年12月5日

『国家論』

http://tinyurl.com/4m33e

本日の一冊は、スピノザの『国家論』です。晩年のスピノザが書き、未完のままで終わってしまった、幻の書でもあります。この「ビジネス・ブック・マラソン」でご紹介した本の中でももっも古い部類に入るのではないでしょうか。

なぜこんな古い本を引っ張り出してきたかというと、先月、弊社エリエス・ブック・コンサルティングの創立記念パーティを行った時に、フォレスト出版の太田社長からスピノザの言葉をいただいたのがきっかけです。

もともと暇を見ては古典も読んでいるのですが、スピノザはまだきちんと読んだことがなかったので、「これはすぐに読まなくては」と思い、あわてて何冊か購入したという次第です。

『国家論』を取り上げた理由は、政治について論じた本でありながら、実際には、人間の本質やマネジメントの本質についてコメントされており、現代の経営にも大いに役立つ内容だと思ったからです。

学問の究極の目的が人間探求にあるならば、昔の人が人間の本質をどうとらえていたのかを知ることは、きっと有意義なことのはずです。

実際にスピノザがどんな主張を展開していたのか、さっそくポイントを見て行きましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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人間は必然的に諸感情に従属する。また人間の性情は、不幸な者を憐れみ、幸福な者をねたむようにできており、同情よりは復習に傾くようになっている

国家の安全にとっては、いかなる精神にとって人間が正しい政治へ導かれるかということはたいして問題ではない。要はただ正しい政治が行なわれさえすればよいのである。なぜなら、精神の自由あるいは強さは個人としての徳であるが、国家の徳はこれに反して安全の中にのみ存するからである

実に人間は、自然状態においても国家状態においても、自己の本性の諸法則によって行動しかつ自己の利益を計るものである。人間は――あえて言うが――そのどちらの状態にあっても、希望あるいは恐怖によってこれあるいはあれをなしまたはなさないように導かれる

理性に基づき理性に指導される国家は最も力があり、最も自己の権利のもとにありうるのである。なぜなら国家の権利は、あたかも一つの精神からのように導かれる多数者の力によって決定されるのであるが、精神のこの一致はまさに、健全な理性がすべての人間に有益であると教えるものを国家が最も多く追求する場合でなくては決して考えられえないからである

臣民は、国家の力または威嚇を恐れる限りにおいて、あるいは国家状態を愛する限りにおいて、自己の権利のもとにはなく、国家の権利のもとにあるということである。この帰結として、報酬あるいは威嚇によって何びともそれへ動かされえないような一切のことは国家の権利に属さないということが生ずる

国家が自己の権利のもとにあるためには恐怖と尊敬との原因を保持するように拘束される。そうでなければ国家はもはや国家ではない。思うに、統治権を握る人あるいは人々にとっては、酔って、裸で、遊女とともに町を歩き回ったり、俳優のまねをしたり、自らの定めた法律をあからさまに破ったり軽蔑したりして、それでいて威厳を保持することは不可能である(中略)臣民を虐殺したり、掠奪したり、処女を誘惑したり、その他これと同様のことどもは、恐怖を憤慨に変え、したがって国家状態を敵対状態に変える

自由な民衆は恐怖よりも希望によって多く導かれるのに対し、征服された民衆は希望よりも恐怖によって多く導かれる(中略)実に前者は生活をはぐくむことに努めるのに反し、後者はただ死を避けることにのみ努力する

国家は常に敵のゆえによりも国民のゆえに危険であるということが確実である。事実、善良な国民は稀だからである

王の意志は王が国家の剣を握っている間に限って法的効力を持つのである。統治の権利はもっぱら力によってのみ規定されるのであるから。ゆえに王は退位することはできるが統治権を他人に譲渡することは民衆あるいは民衆の大多数の同意なくしてはできないのである

本性はすべての人々において同一である。すべての人々は支配する時に傲慢になり、恐れを持たぬ時に恐ろしい。またどこにあっても真理は、圧迫された者あるいは隷属的立場にある者たちによって多く歪曲される

王の力がもっぱら民衆自身の力によって決定され、民衆自身の守護によって保持されるようにさえすれば、民衆は王のもとにおいて十分の自由を保持しうる、と。そしてこれこそ私が君主国家の諸基礎を建てるに際して従ってきた唯一の規則である
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読み方は邪道かもしれませんが、経営者の視点から見て、人間の本質やそれをマネジメントする際の注意点、さらには、マネジメント体制、後継者問題、組織が陥りやすい罠まで、じつに示唆に富んだ内容です。やはり、古典というのは恐ろしいですね。

というわけで、本日の一冊は、

『国家論』
http://tinyurl.com/4m33e

です。最後の数行で披露した、男尊女卑の思想がちょっと現代ではネックになりそうですが、それを除けば、非常に有意義な一冊だと思います。

目次
自然権について
国家の権利について
最高権力の所管事項について
国家の目的について
君主国家について
貴族国家について
民主国家について
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