本日の一冊は、そんな思想や信念を養う上で、きっと役に立つ一冊です。
著者のデイジー・ウェイドマンは、J・P・モルガンに4年勤務した後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得。伝統となっている、最終講義の教授からのメッセージをまとめようとして実現したのが、本書『ハーバードからの贈り物』です。
各界のリーダーとして巣立つ若者たちへのメッセージだけあって、その内容には、重みが感じられます。
ティモシー・バトラー、スティーヴン・P・カウフマン、ロザベス・モス・カンターといった、米MBAを代表する有名教授陣が説く、リーダーとしての「心の置き所」は、ビジネスパーソンにとって、一生の宝物となるに違いありません。
では、一体どんな教えがちりばめられているのでしょうか。さっそくそのエッセンスだけを抜き出してみましょう。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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あなたたちは、世界のなかで恵まれた位置にいる。熱心な先生や愛情あふれる両親のお陰で幸運を与えられたことを、十分認識してほしい。そして何よりも、幸運の女神がこれほど豊かに微笑んでくれたのだから、自分にはそれなりの責任があることを肝に銘じてほしい。幸運が成功を生み、成功は義務を生む。他の人びとの幸運を作り出すことで、あなた自身が最高の高みへと到達することができるのだ。
人間のモティベーションの本質とは何だろうか?恐怖による支配の下で、人は自分の力をフルに発揮できるのだろうか?人が力を発揮するのは、成績が下がるとか、求められたときに適切に答えられないとか、同僚より出世が遅れるとか、親や目上の人の期待を裏切ってしまうとか、そんなことが怖いからなのだろうか?屈辱は最大のモティベーションになるのだろうか?
優れた管理職は、部下の真の姿を見抜く力を持っている。部下をよく知り、どんな課題を与えれば彼らの能力を引き出し、その意欲を社会への貢献に結びつけ、同時に、その人の自信にもつなげられるかを見つけることができる。これこそ、根本的な意味でのキャリア開発にほかならない。
リーダーである人間は、自分が関わる人びとの生活を向上させ、その人たちが自分をよりポジティブにとらえられるよう手助けをする大きなパワーを持っている。けれどもそれを実現するのは、そう簡単ではない。先のような問いを機械的に発すればすむといったものではないのだ。それには腰を据えて、システマティックに取り組むことが必要だ。
今一度、成功という言葉の意味を考え直してほしい。高い山の上に巨大な顔が刻まれなくても、リーダーになることはできる。成功したかどうかの尺度を、いかに履歴書を磨き上げるかではなく、あなたが周囲の人びとにどんな影響を与え、その人の生活にどんな変化をもたらしたかに置くことだ。成功という名の勲章に振り回されるのをやめ、あくまでも謙虚なリーダーでありつづけてほしい。
人生にもビジネスにも、確実なものはひとつもない。結果を保証するものは何もないのだ。それでも決断は下さなければならない。重要で物事を大きく左右するような決断を、不十分なデータや見当違いのデータをもとにして下さなければならないことも多々ある。そして世界は、肝心の事柄から注意をそらさせる雑音に満ち満ちているのだ。
何もしないほうが楽だからといって、世界に変化を起こす機会を逃さないでほしい。雑音は無視し、大げさな喧伝には耳を貸さないことだ。勇気を持って前に進もう。自らの情熱にこそ耳を傾け、自らの内なる羅針盤を信頼し、自分自身と人類全体、その両方について考えよう。そうすればきっと、価値あるすばらしいことをなし遂げられるはずだ。
仕事用のペルソナを持っていれば、キャリアを築く過程で周りから浴びせられる批判や攻撃に持ちこたえることができるし、内なる自分が傷つくことを最小限にして生きのびることができる。仕事の世界はなべて厳しく、自分の力ではどうにもならないことも多い。
ビジネスリーダーになる君たちの考え方は、ある方針を生み出し、その方針が結果を生み出す。だから自分の考え方を正確に理解すること、言いかえれば、自分がなぜ今のように思考するようになったのかを把握することがきわめて重要である。自分の考え方はどこからくるのか、それが自分の世界観にどう影響しているのか、その考え方に従うことでどんな間違いを犯す可能性があるのかを、よくよく吟味することだ。
リーダーとして人を率いる立場にある人間には、自分のルーツ、そして自分の考え方のルーツがどこにあるかを理解することは欠かせない。人間は、時代や文化的・社会的背景、両親、そして偏見といったさまざまな要素の産物だ。
必要なのは、あなたに反対意見をためらわずに言える何人かの同僚だ。異議を申し立て、議論し、反対意見を言ってくれる人間が周囲にいることは、リーダーとして真に成功するための必須条件である。だがそれを実現させるのは、リーダーたるあなたの責任だ。それができる知的な率直さと勇気を持った人物を見出して、彼らが発言しやすい雰囲気を作らなければならない。
私からのアドバイス?それはキャリアを通じて思い切ってリスクを負う覚悟を決めたうえで、結果が出るのをどのくらい待つか、具体的な年数を決めておく、ということだ。そして、その期間が過ぎたらきっぱりとあきらめる。ある年齢に達したとき、いくつものリスクを冒して自分の夢を目指してきたにもかかわらず、まだそれを達成できていなかったら、潔く身を引くことだ。
自分の犯した間違いや欠点を認めるだけでもむずかしのに、至らない自分に対する恥を克服してそこから学ぶのは、もっとむずかしい。だが、ハインツの例が物語るように、リーダーとなり、よい人生を生きるためには、それは欠かせないことなのだ。
自分という人間を客観的に評価することである。長所だけでなく短所にも目を向けよう。間違いを認め、そこから生じる恥に足元をすくわれないことだ。
ある状況に入ったとき、まず二言三言、よく考え抜かれたフレーズを口にし、それによって場の主導権を握る。これはリーダーシップに必要な資質のひとつだ。有能なリーダーは他の人に先んじてその場の状況を見きわめ、障壁を乗り越え、互いの相違点や別の事柄に逸れがちな注意をビシッと本筋に引き戻す。自分が何をやろうとしていて、なぜそれをするのかを、誰もが共感でき、聞き手が集中しやすく行動に移しやすい方法、相手にモティベーションを与える方法で伝える。
リーダーの役割は、取り組むべき課題を設定し、方向性を定め、ビジョンを創出し、世界を変えるために一緒に働く人を組織にすることにある。でもそれにはまず、相手の心をつかむことが不可欠なのだ。
あなたの決断で人生を変えられる従業員は、ただの数字ではない。皆、現実を生きている人間なのだ。それぞれが誰かの息子や娘であり、父親や母親でもある。一人ひとりが誰かの幸福を願って額に汗し、犠牲を払っている。こうした人たちにも、あなたのために尽くしてくれた人に対してと同じく、敬意と思いやりを示してほしい。
比喩的に言えば、きちんと準備をして授業に臨み、背筋を伸ばして席に座ることだ。そして、期待されるということの意味も考えてほしい。それは特権なのだ。高いレベルを求められ、他人をリードするチャンスを与えられるのは名誉なことである。期待に応えるチャンスを与えられるたびに、チャンスを与えられたことを感謝し、大事にすることだ。
ヘンリー・B・ライリングが考える真の成功を収めるための5つの要素
1.失望から立ち直る能力
2.運
3.リーダーシップの資質
4.公正さ
5.判断力
ニティン・ノーリアが推奨する経営者の行動規範
経営者の意欲をよび起こし、人間への敬意や学ぶ姿勢を鼓舞し、誰にも恥じることのない行動を促すものを。簡潔明瞭で、経営者が座右の銘とし、何か指針や励ましが必要なときにいつでも参照できるものを。経営者に共通する使命とは何かを明らかにし、望みうる最高水準のスキルと責任について端的に述べた規範を創るべきではないか?
これから未来へ向かって羽ばたくあなたには、大きな期待がかかっていることを肝に銘じてほしい。行く手にある世界は波風も多く不確かなものだ――リスクに満ちている反面、大きな見返りもある。そのような世界のなかで、ビジネスがもっとも力強い力のひとつであることは間違いない。そこで求められるのは、最高レベルの誠実さと敬意と自己責任の確固たる基盤に立ち、社会に変化をもたらすリーダーだ。目標を高く掲げることを恐れず、大いなる夢と希望を持って、自分を信じ、周囲の人びとを信頼するリーダーである。
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原題は、『Remember Who You Are』ですが、きっとこのタイトルでは、それほど多くの人には訴求しなかったでしょう。
本書の魅力を的確に伝えてくれた編集者と、本のなかに詰め込まれた珠玉のメッセージに、ささやかながら拍手を送りたいと思います。
というわけで、本日の一冊は、
『ハーバードからの贈り物』
http://tinyurl.com/3wnmc
です。信じた道を行くと心に決めたとき、また道半ばで迷ったとき、ぜひ紐解いてほしい一冊です。
目次
はじめに
転落から高みへ ジャイ・ジャイクマー
なぜ人はあなたのために働くのか ティモシー・バトラー
ラシュモア山での問い トーマス・J・デロング
剥製の鳥 ジェフリー・F・レイポート
自分らしくあれ リチャード・S・テッドロウ
黒か白か トーマス・K・マックロウ
まずい食事と真実 スティーヴン・P・カウフマン
同窓会 デイヴィッド・E・ベル
完璧を求めるな ナンシー・F・ケーン
キャサリン・ヘップバーンと私 ロザベス・モス・カンター
サラの物語 H・ケント・ボウエン
今という瞬間を生きよ フランシス・X・フライ
レース ヘンリー・B・ライリング
誓い ニティン・ノーリア
自分を見失わないで キム・B・クラーク
謝辞
訳者あとがき
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