2024年10月7日

『文章は、「転」。』近藤康太郎・著 vol.6576

【「違い」をどう文章で表現するか。】
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本日ご紹介する一冊は、朝日新聞社でAERA編集部、ニューヨーク支局、文化部などを経て、九州でに移住した著者が、人の心を揺さぶる「転」の技術を紹介した一冊。(起承転結の「転」です)

『三行で撃つ』を書いた頃は、大分県日田市にいらっしゃったようですが、どうやら現在は、熊本と長崎にいらっしゃるようです。

※参考:『三行で撃つ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484202298

表紙には、うっすらと「起承結」の文字が書かれていて、「転」だけが強調されたデザインですが、なぜ「転」を強調するのか。

それは、この「転」こそが生成AIに書けないものであり、書き手独自の感性や生き方が反映するものだからです。

では、面白い「転」を書くにはどうするか。これが単なる技術ではないから面白い。

著者は、第一章でこう書いています。

<文章というのは、「自分の考えていることを書く」のではないんです。文章の急所はここです。自分の考えていることを書くのであれば、文章に驚きはありません。しかし、文章を書くという営みを真剣に繰り返せば、「自分の考えてもいなかった地点」へと、自分自身を運ぶことになる>。

自分の考えてもいなかった地点へ自分自身を運ぶには、感性を鍛える必要があるそうですが、それにはどうするか。

「なにも見ていない」ところから始め、五感(特に視覚以外)をフル稼働する。

そして、五感でもって捉えたものを、文章で表現してみる。

著者が自然暮らしで得た感性、夏目漱石を始めとする名文家の文章を味わうことで、文章に求められる感性とは何か、どうすればそれが磨けるのか、具体的なヒントが得られると思います。

・重複をなくす(重複ドン)
・言い換える
・指示代名詞は撲滅する勢いで
・数詞と固有名詞は、極力、削る

など、細かい点に関しても書かれており、文章を磨きたい人には、必読の一冊だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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深い山の奥の森、透明な湖水を前にして、「美しい」と思う。映画を見終わって、「よかった」「感動した」と感じる。あるいはだれかの意見を聞いて「いやだな」「おかしいんじゃないか」と思う。ほんの一瞬の出来事である。直観だ。論理で説明することもできないほどの、刹那。これは「違い」を感じ取っている瞬間だ。いままで自分が目にしてきたこと、耳にしてきたこととは違う。異質さを、自分の感官が察知している。文章を書くとは、この「違い」を言語化することだ

「違い」をより豊かに表現するのが、いい文章だ。要点は、二つある。
(1)言葉を鍛えること
(2)感性を鍛えること

なにかを見る。聴く。心を動かされる。それは、生得的なことではない。多くは後天的、言い換えれば、環境や教育の成果だ。有り体に言えば、「練習」しているから、感じられるようになるのだ。感性は、鍛えた者だけが得られる、もうひとつの“筋肉”だ

感性を鍛えると、生きることが楽しくなる。世界がモノトーンにくすんで見えるのは、世界のせいではない。あなたのせいだ

転というのは解答ではない。ある事象に直面して、自分がどう感じ取ったか、なにを考えたか。そこが転になるんです

考えてもいないことを書く

古今とは、歴史を調べること

東西とは、地域を調べること

「音」を、注意してつかまえる。その意識だけで、文章は息づいてきます

「日の光に透かして湯の色を眺め」と書くだけで、光景がまざまざと脳裏に浮かぶ。湯の色だけではない。湯のぬくもり、石鹸の香り、蒸気までが、立ち現れる。「湯の色を眺め」るという、レトリック(修辞)の効果です

見えるものばかりを見るのではない。見えないもの、喪くしていくものをこそ、よく見つめる

音そのものを、正確に描写しようとしても、できない。だからこそ、印象を書く。自分の心の「動き」を書く

味覚にせよなんにせよ、五感は結局、文字では再現できないものです。だとしたら、その「場」を書いたほうがいい。場の、音や匂い、熱気を書く

重複ドンを退治し、パラフレーズ(言い換え)すると、読むスピードが上がるだけでなく、別のご利益にありつくこともあります。文章が、カラフルになるんです

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単に「感性を磨け」では何の参考にもならないのですが、名文解説と一緒に語られるため、感性で捉えたものをどう文章にするか、具体的なイメージが湧きます。

なかでも、夏目漱石『門』における「日の光に透かして湯の色を眺めた」、『草枕』における青い煉羊羹の描写は、なるほどと唸らされました。

一朝一夕でできることではありませんが、どうやって感性を磨けばいいのか、ヒントとなる一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『文章は、「転」。』近藤康太郎・著 フォレスト出版

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◆目次◆

はじめに
第一章 前提篇 型を覚えるストレッチ
第二章 準備篇 感性は鍛えられる
第三章 理論篇 名作で味わう文豪の五感
第四章 実践篇 ある日、文章塾にて
第五章 応用篇 感情を磨く習慣づくり
おわりに

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