2024年9月30日

『財務3表だけではつかめないビジネスモデルを視る技術』 村上茂久・著 vol.6571

【これでバッチリ。】
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本日ご紹介する一冊は、財務分析にビジネスモデル分析を掛け合わせた、とんでもなく面白い経営書。

著者は、新生銀行(現SBI新生銀行)で証券化、不良債権投資、不動産投資、プロジェクトファイナンス、ファンド投資業務等に従事し、2018年よりGOB Incubation Partners株式会社のCFOとして新規事業開発、起業支援、スタートアップファイナンス支援業務等を手掛けてきた村上茂久氏。

2021年には、財務コンサルティング等を行う株式会社ファインディールズを創業しています。

本書の内容の多くは、著者が「ビジネス・インサイダー」で連載している「会計とファイナンスで読むニュース」の記事を大幅加筆修正したものだそうですが、こんなに面白い連載があったなんて、知りませんでした。

AirbnbとWeWork、オリエンタルランドとサンリオ、ニトリと良品計画、ANYCOLORとUUUM、トヨタとホンダと日産とテスラ…。

ビジネスモデルの違いが、収益構造やキャッシュフローにどう影響を与えるのか、一見似ていてじつは異なる複数社を比較分析することで、よくわかるように解説されています。

また、赤字続きなのになぜか株式市場で評価されているfreeeの秘密、利益が出ているのに純資産が減っているAppleの秘密、資生堂がなぜTSUBAKIを売却したのかなど、ビジネスモデルと同時に財務目線がなければ理解できない経営の謎が、これでスッキリ解消できます。

また、ビジネスモデル以外にも、企業分析をする際に重要なファイナンスの指標(EBITDA、ROICなど)、ESGやコーポレートガバナンスの視点、資本政策の視点などが説かれており、かゆいところに手が届く内容だと思いました。

また、これから上場する企業をどう分析するかという実務的な視点も書かれていて、投資家にとっても貴重な知識がまとめられています。

スタートアップの経営陣、投資家には、特におすすめの内容だと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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企業分析において最も重要なことは、企業が自ら公表している一次情報にアプローチをすること

本質的には企業が公表しているKPIを押さえることが最も大切

比較は、基本的には「自社の時系列での比較」と「他社との比較」の2つが重要

「オリエンタルランドの売上高の80%前後はテーマパーク」ということです。(中略)これら事業における原価として大きいのは、施設関連の費用、ショーに係る制約費や人件費等です。そして、これら費用の多くはテーマパークへの入場者数に関わらず、かかってくる費用です。つまり、固定的にかかる費用なのです

オリエンタルランドの売上高の8割はテーマパークでしたが、サンリオの場合は85%が商品およびライセンスAirbnbのビジネスモデルは、消費者と消費者をつなぐCtoC(Consumer to Consumer)となっています。このようなビジネスモデルを採用している企業としては、他には株式会社メルカリや、スキルシェアの株式会社ココナラ等が有名でしょう。これらCtoCのビジネスは、貸し手と借り手(あるいは売り手と買い手)をマッチングさせるというプラットフォーム型のビジネスモデルです。消費者と消費者をマッチングさせることで手数料をもらうというビジネスのため、原価はそれほどかかりません

同じ不動産シェアリングでもWeWorkは、ビルの所有者からビルの一部を借り受けて、それをエンドユーザーとなる法人や個人に貸出をするビジネスとなっています。つまりBtoBtoC、もしくはBtoBtoBのシェアリングです。貸主に対する賃料支払いリスクは、すべてWeWorkが負っていることになります

PSRは利益率を無視した概念であり、成長著しいスタートアップ企業やメガベンチャーにのみ適用されることが多い

PERは分子に当期純利益を使いますが、この際に用いる当期純利益は、直近のものではなく、決算短信に書かれている来期の予想当期純利益を用います

低い原価率以外にも、ANYCOLORには注目すべき点があります。それは、売上高に占める販管費及び一般管理費の割合が13%と、UUUMの26%の半分しかないことです

ROIC
本業に投下した資本からどれだけリターンを得られたのかを知る上では、ROEやROAよりも便利

親子上場では事業ポートフォリオを最適化しにくい

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ビジネスは、アイデアだけでは勝てない。また、数字に強いだけでも成功できない。

アイデアがどう数字を生むのか、また数字を生むためにどんな視点が必要なのかを知ることで、ビジネスの成功確率は、グッと上がります。

起業センス、投資センスを養ってくれる、素敵な一冊だと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『財務3表だけではつかめないビジネスモデルを視る技術』村上茂久・著 ソシム

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◆目次◆

はじめに
第0章 「企業分析:7つの定石」について
第1章 企業の収益構造を把握するP/L
第2章 企業のビジネスモデルが見えてくるB/S
第3章 キャッシュの使いみちを把握できるキャッシュ・フロー計算書
第4章 時価総額から見る企業の評価と分析方法
第5章 なぜ、企業の経営指標ではROEが重視されるのか
第6章 企業の未来予想が描かれている中期経営計画の読み解き方
第7章 今後の企業分析には不可欠となるESGの視点と、非財務情報に関する統合報告書の勘所
第8章 上場目論見書等を読み解くことで企業のIPOを分析する
第9章 赤字でも成長を続けるSaaS企業の分析方法
第10章 コーポレートガバナンスは企業にどのような影響を与えるのか
おわりに
筆者紹介
参考文献

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