2024年3月14日

『わが投資術』清原達郎・著 vol.6437

【超絶面白い。個人投資家必読の一冊。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065350352

本日の一冊は、個人資産800億円超、サラリーマンでありながら、長者番付1位となった清原達郎さんによる、投資の極意。

咽頭がんで声帯を失い、引退を決めた著者がすべてを明かす、ということで期待して読みましたが、期待以上の素晴らしい内容でした。

株価に織り込まれていない投資アイデアをどう探すか、バイアスを味方にする投資法とは何か、なぜ割安小型成長株なのか、が論理的に語られており、じつに切れ味鋭い論考です。

著者が投資銘柄を見極めるために使っている「ネットキャッシュ比率」、「キャッシュニュートラルPER」の解説は特に重要で、候補銘柄をこれに従って並べれば、割安な株がどれか、明らかになるに違いありません。

さらに、「キャッシュニュートラルPER」ではカバーできない固定資産の価値、設備資産のスケジュール(老朽化・更新)についてもコメントがあり、実践的な内容だと思いました。

指標だけでは見えない、経営の実態を把握するための視点がいくつも散りばめられており、じつに勉強になる内容。

しかも、文章がエッセイ風で面白いのです。

これだけ理論的に書かれている本なのに、大爆笑した部分が少なくとも3つはありました。

昔読んだ、藤巻健史さんの『外資の常識』に理論を加えたような内容です(笑)。

著者が考える優秀な経営者とそうでない経営者の違いも、実際のエピソードとともに書かれており、このあたりは経営者が読んでも面白いと思います。

・投資の第一歩は「常識を疑う」こと
・実は役に立たない「PBR」
・ショートの分散投資はおろかな行為

など、歯に衣着せぬ物言いが痛快で、あっという間に読んでしまいました。

今まで読んだ投資本で、1、2を争うほどワクワクしました。

これは「買い」の一冊ですね。

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

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counterintuitive=人々が当然だと思っていることと現実と違う

「教科書に書かれているから正しい」と思うな

「誰が用意したサイコロか」で答えはまったく違ってくる

会って話すときに「その会社の情報」ではなく、その会社が属している「業界の情報」をもらえば基本的にはインサイダー情報にはなりません

割安小型株はアナリストのカバレッジがほぼゼロですからチャンスは大いにある

見るべきは会社が赤字になろうがなるまいが同じ値段で売れる資産がどれほどあるかということです。それに会社が持っている現金を足して全負債を差っ引いた数字がキーなのです。それがネットキャッシュです

ネットキャッシュ
=流動資産+投資有価証券×70%-負債

ネットキャッシュ比率
=ネットキャッシュ/時価総額

キャッシュニュートラルPER
=PER×(1-ネットキャッシュ比率)

大型株で古い製造業の場合、工場設備が古くなりすぎていないかチェックする必要がある

金利が上がると利益予想を変えない限り、すべての株式の理論価格は下がります

例えば、電力会社は原料価格が下がると大儲けできます。でも、次の年には電気料金を下げなければいけないので「負のフィードバック」が働きます

割安小型成長株の醍醐味を満喫するには多少間違いがあってもいいから早い段階で買うべきです

大事なのは、業績が伸びてきて株価が3割とか上がってきた時にすぐ売らないこと

「コントラリアン」の特徴の一つは「株を買うと最初は決まって損をする」ということ

底値付近で買おうと思ったら落ちてくるナイフをつかまなきゃ

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最近、「100分de名著」で、松下幸之助の「素直」「衆知を集める」という言葉を紹介したばかりですが、この「素直」を、清原氏の言葉で言うと、こうなります。

<有益な情報を生かすためには「絶対こうだ」「絶対的な自信がある」と言う場合でも、それは「100%」の自信ではなく「95%」自信があるとかにしなければ。そうでないとベイジアンのプロセスが始動せず、後で出てくる有益な情報を全部否定することになる>

知的な言い回しとユーモア溢れる比喩、価値を見極めるための徹底した論理が、本書の魅力です。

著者の人間形成に影響したであろう父親とのエピソードや、サラリーマン時代のエピソードが、単なる投資本以上の魅力を本書にもたらしています。

ぜひ、読んでみてください。

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『わが投資術』清原達郎・著 講談社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065350352

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◆目次◆

はじめに
第1章 市場はあなたを見捨てない
第2章 ヘッジファンドへの長い道のり
第3章 「割安小型成長株」の破壊力
第4章 地獄の沙汰は持株次第 25年間の軌跡
第5章 REIT 落ちてくるナイフを2度つかむ
第6章 実践のハイライト ロング
第7章 実践のハイライト ショート・ペアートレード
第8章 やってはいけない投資
第9章 これからの日本株市場
エピローグ 引退
解説 伊藤博敏(ジャーナリスト)

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