2023年12月20日

『ハッとする言葉の紡ぎ方』堤藤成・著 vol.6382

【コピーライターが教える31の理論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396116918

本日ご紹介する一冊は、電通のコピーライターとして活躍し、オランダと日本を拠点にクリエイティブ活動を行う著者が、「ハッとする」言葉の紡ぎ方を紹介した一冊。

エッセイ風の文章で、コピーライティング31の理論を紹介しており、読み物としても実用書としても楽しめる内容です。

歴史に残る名コピーの紹介と解説、著者個人の体験・エピソードなどを題材に、ユニークな言葉を生み出す切り口を紹介しており、肩肘張らずに「書く」ヒントが得られる内容です。

目線、ストーリーとナラティブ、過去に書いた文章、何気ない記憶、パロディや聞き間違い、オノマトペなど、使える切り口がたくさん紹介されており、書くことを商売にしている人には、良いヒントになると思います。

著者が、過去の自分の恥ずかしい文章にツッコミを入れるくだりが傑作で、スタバで読みながら思わず大爆笑してしまいました。

一部紹介しましょう。

【大人になってやりたいこと】
大人になってやりたいものは5つある。(1)ゲームを作る人(2)マンガ家(3)本屋(4)作家(5)ふつうのサラリーマン。ほんとうは、大金物と王様だったけど、ぼくがなれるわけがない、と思ったからやめた。そのなかで(1)と(2)はなりたいなぁと思う。(3)と(4)もけっこういい。でも(5)は(1)~(4)までがどれもなれなかったときのためだから、あまりなりたくない。サッカーせんしゅもなりたかったけど、ぼくはへたなのでやめた。ぼくがなりたいのはずばり(1)~(4)なのであります!!

この文集を読むと、「大金物」などの間違い(きっと大金持ちと書きたかった)や、「謎のテンションは恥ずかしいのですが、小学4年生で自分なりに真剣に人生設計をしていたことがわかります。(以下略)」

とはいえ、残念な話だけではありません。旅行で留守しがちな祖父母の家のポストが郵便物でいっぱいになっていた記憶から作られた以下のコピーは、なるほど記憶がクリエイティブに影響を与えるという、良い例です。

となりのおじいさんの新聞受けは、ちゃんと今日も空でした。「気にかける」から、絆をはじめよう。(2009年度新聞広告クリエーティブコンテスト テーマ:絆)

すべて事例付きで、31の理論が紹介されているので、理解が深まります。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

—————————-

僕はコピーライターとして言葉を紡ぐとき、いきなり書くことはしません。まずは、気になった疑問を調べることから始めます

「目線」とは不思議な言葉です。その当事者にとって当たり前に見えているものほど、普段は気づけません

「目から遠ざかれば、心からも」というヘブライ語のことわざがあります。つまり、「視界を外れてしまうと、心からも外れる。つまり、見ていないものに愛情が向くことはない」という意味です

物語には2種類あります。「ストーリー」と「ナラティブ」です

自分が紡いできたものを探してみる

東京競馬場のメインスタンドの高さは、約50メートル。これは人気漫画の『進撃の巨人』(諫山創、講談社)でいえば、超大型巨人のサイズとほぼ一緒だということから、「進撃の有馬記念」という企画になりました

数々の伝説を残したディープインパクトを「競馬界の織田信長」とするならば、唯一ディープインパクトを破ったハーツクライは「競馬界の明智光秀」と呼べるのではないかという着想は、人気ゲームタイトル『戦国無双』とコラボした「ダービー無双」という企画になりました

当たり前の「正論」ほど、つまらないものはない

常識から飛び出せないなら、パロディや聞き間違いに乗っかれ

オノマトペ的な音の楽しさは人間を夢中にさせる

「○○といえば」で知恵を紡ぎ続けてみる

「生産性」を上げるためには、生産性から一瞬離れても新しいやり方を試し試行錯誤する時間が必要

書けない時は「おりこう」に そしてその後「うんこ」を書く 行きつ戻りつの先に「天才案」が待っている(宣伝会議コピーライター養成講座編『コピーライティングとアイデアの発想法 クリエイターの思考のスタート地点』<宣伝会議>)

—————————-

タイトルからは、かっちりしたノウハウ書をイメージしますが、実際には、エッセイ風で楽しみながら読める読み物です。

日々、言葉の切り口を探しているプロはもちろん、言葉のセンスを磨きたいすべての人におすすめの一冊です。

———————————————–

『ハッとする言葉の紡ぎ方』堤藤成・著 祥伝社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396116918

———————————————–
◆目次◆

はじめに なぜ僕らは、「言葉を紡ぐこと」に苦手意識を感じるのだろう
序 章 言葉の散歩に、出かけてみませんか?
第1章 想いをめぐらす「物語(ナラティブ)」を紡ぐ
第2章 内面をたがやす「志(パーパス)」を紡ぐ
第3章 覚悟をあらわす「実験(トライ)」を紡ぐ
第4章 社会をうるおす「学び(ラーニンング)」を紡ぐ
第5章 未来をまなざす「企画(アイデア)」を紡ぐ
おわりに 言葉を紡ぐと、世界はめぐる
主要参考文献一覧

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー