【未来のビジネスのための新基準】
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起業において一番大事なことは、一体何でしょうか?
資金、優秀な人材、ビジネスモデル、優れた商品、営業ノウハウなどなど、大切なことは山ほどありますが、一番大事なことは、おそらく世界を変える、新しい「思想」や「基準」なのだと思います。
何に挑戦するかがわかっていれば、必要なものは自ずとわかる。
長くビジネスをする上で必要なエネルギーだって、湧いてくるはずです。
本日ご紹介する一冊は、クラウドファンディングの先駆けとして、累計金額76億ドル(約1.1兆円)のプロジェクト支援をしてきた、キックスターターの共同創業者&元CEO、ヤンシー・ストリックラーによる、起業家のための思想書。
「利益最大化」を旨とするこれまでの価値観を見直し、新たな価値観に従って経営するための具体的方策を示した、画期的一冊です。
著者は、キックスターターを立ち上げた時、周りの人々から、こんな反応をされたそうです。
「赤の他人にお金を出そうとする人なんていないよ。世の中そんなに甘くないって」
「プロジェクトに金銭的な利点が欲しいね。世の中そういうものでしょ」
著者は、この「世の中そういうものでしょ」を無視することで、この画期的なサービスを始めるに至ったと言います。
著者の声を聞いてみましょう。
「誰かがどれほどお金を儲けられるかによって、あるアイデアの存在が正当化される世界とは、なんと窮屈な世界だろうか。そんな世界から自由になりたかった。『世の中そういうものでしょ』を無視することで、僕らは世の常を超えた向こう側のことを考えられるようになった」
ではどうすればわれわれは「利益最大化」の呪縛を超えて、価値あるビジネスができるようになるのか。
著者は、ここで松下幸之助の言葉と、著者が「ベントー」(日本の弁当に由来する)と呼ぶ、4象限のマトリックスを紹介しています。
現在の自分、現在の自分たち、未来の自分、未来の自分たちという4つのマスで考えると、今すべきことや未来に遺したい価値がよくわかる。
利益や経済自由の先にある世界を見たい方に、ぜひおすすめしたい内容です。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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とにかく正しい選択はもっともお金が稼げる選択肢だ、と僕らは思いこまされ、その向こうにある「良い」とか「悪い」という概念は置き去りにされた
アイデアを実行するとなると、そのアイデアと現実とのあいだには重大なギャップがあるけれども、問題はそれだけじゃない。もうひとつ大事なのは信用だ。アイデアで重要なのは、人びとにそのアイデアが実現できると信じてもらうことだ
経営者が同じラジオ局は、番組で流す曲を九七パーセントも共有しはじめた。コストは下がった。利益は増えた。そして、プレイリストに変化がなくなった
アメリカ人の三分の二は起業を夢見ている。けれども、実際に起業して独立する人は少なくなっている。それはなぜだろうか。強力な競争相手が脅威となって、同じ分野の起業に二の足を踏む人が多いからだ
マレットヘアは「前はビジネスマン風で、後ろはパーティ風」といわれていた髪型で、一九八〇年代のヘア・テクノロジーの頂点だった。利益最大化層の戦略はマレットヘアみたいなもの。ただ分野が経済なだけだ。人口の大半にあたる前方は、コストカット/ビジネスで、上位一〇パーセントにあたる後ろは大儲け/パーティ。ひとつの集団と影響力がカットされるいっぽうで、もういっぽうの集団は繁栄する。これがマレットエコノミーだ
競争で我を忘れるまえに、自分たちがしているゲームが適切かどうかを気にするべきだ。戦いそれ自体ではなく、血と肉のある相手にばかり目を向けているかぎり、支配者や権威者は居座りつづける。けっきょくのところ、そのゲームを始めたのは支配者たちなのだから
僕らが思うバリューとは、ものの値打ちのことで、バリューズは誰かにとって値打ちのあるものや考えになる
弁当は、日本の「腹八分目」という哲学を尊ぶ。これは満腹ではなくお腹の八割がたを満たすくらいに食事をとどめておくことを意味する。弁当箱は便利なだけでなく、健康を保つという隠れデフォルトを生む
未来の自分は、自分がこうありたいと望む人物だ。あとで後悔するような決定をあなたにさせたくないと考える
未来の自分たちは、子どもたちに残したい世界だ。こうあるべきと思える世界だ
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原書の発売が2019年。
内容的には、ちょうどその頃出していたらベストだったとは思いますが、新しい価値観に従ってビジネスを推進したい起業家・経営者には、指針となる、素晴らしい本だと思います。
起業で大切なことを見直す良いきっかけとなる本です。
ぜひ、読んでみてください。
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『2050年を生きる僕らのマニフェスト』ヤンシー・ストリックラー・著 久保美代子・訳 早川書房
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◆目次◆
はじめに
第一部
第1章 シンプルなアイデア
第2章 対向車線を横切らないルール
第3章 何もかも同じなわけ
第4章 マレットエコノミー
第5章 罠
第二部
第6章 本当に価値があるのは何か
第7章 ベントーイズム
第8章 アデルのツアーは続く
第9章 完璧な逆立ちの仕方
第10章 社会的価値最大化層
謝辞
解説/竹下隆一郎
注釈
付録
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