2023年1月26日

『2040年の日本』野口悠紀雄・著 vol.6163

【2040年の日本を予測する】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344986830

本日ご紹介する一冊は、2040年の日本経済を、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんが予測した一冊。

もともとは、「ダイヤモンド・オンライン」「東洋経済オンライン」「現代ビジネス」などに公表したものを大幅加筆したもので、20年後の日本がマクロ・ミクロの視点から、リアリティを持って理解できる内容となっています。

既にいろんなところで言われていることではありますが、経済成長率の予測、高齢化率、人口の推移などから割り出される日本の2040年は暗澹たるもので、世界の中での相対的地位の低下は間違いないものと思われます。

データ分析する中で、著者は政府が言う「2%成長」が問題を隠蔽するリスクや、経済力で中国にはるかに劣る日本が防衛費を積み増すことに疑問を呈しています。

資産課税の強化をしなければならない時にNISAを拡充したこと、原発の再稼働などにも批判的で、岸田政権には手厳しい内容となっています。

また、医療・福祉が日本最大の産業になることや、今後の技術革新の見通し、メタバースや自動運転におけるチャンスなど、今後のビジネスチャンスについても触れています。

面白いもので、予測自体は絶望的ながら、ファクトが見えてくると、それなりにチャンスが見えてきます。

希望的な観測を捨て、来るべき未来に備えたいという向きには、気づきの多い一冊ではないでしょうか。

デジタル世界の予測に関しては、世間で言われている通りの内容ですが、紹介されているファクト、経済に与えるインパクトの予測は、勉強になります。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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成長率が1%と0.5%の差は大きい。とくに、20年後、40年後には、このいずれかで大変大きな差が生じる。1%成長と0.5%成長とでは、40年後には2割以上の差が生じる。1%成長を前提として収支計画を立て、実際には0.5%しか成長できなければ、一人当たりの負担は2割増える

供給能力を高めることは、インフレを防ぐためにも重要な課題だ。人口が高齢化した社会はインフレに陥りやすい

実質賃金上昇は年金支給額を増やす。年金を受給し始めるときに裁定される年金額は、所得代替率を一定に保つように行なわれるので、賃金の伸び率と同じ率で増えるからだ。ただし、裁定された後は、インフレスライドで増えるのみだ

実質経済成長率=a(労働の成長率)+(1-a)(資本ストックの成長率)+(技術進歩率)

15~65歳人口の年平均増加率は、2020~2030年ではマイナス0.74%、2030~2040年ではマイナス1.39%だ

デジタル人材の育成に向けて、リスキリングを強化できるか

出生率引き上げより、高齢者や女性の労働力引き上げが重要

経済規模ではなく、何によって日本は未来世界での存在感を発揮できるのか?われわれは、それを真剣に考えなければならない

今後、輸出管理法などによって不合理な貿易規制が課された場合には、日本でなければ生産・提供できないような製品やサービスを武器にして戦うことだ

iPhoneのように国際的転売が可能な場合には、日本の賃金が低くても、価格が値上がりしてしまう

製造業、卸売・小売業、医療・福祉の就業者の全就業者に対する比率は、2002年には、それぞれ、19.0%、17.5%、7.5%だった。(中略)2037年には、それぞれ15.96%、17.59%、17.80%となって、医療・福祉が卸売・小売業を抜き、就業者数で見て、日本最大の産業となる

医療費を考慮すると、予防医療はいっそう重要になる

リアルタイム自動翻訳が実用化すれば、デジタル移民が押し寄せる

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自分の本業でのチャンスや、日本における今後のビジネスのヒントが見えてきた気がします。

ここまで国が追い込まれると、逆にチャンスが増えそうですね。

ぜひ、読んでみてください。

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『2040年の日本』野口悠紀雄・著 幻冬舎

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◆目次◆

はじめに:なぜ未来を考えるのか
第1章 1%成長できるかどうかが、日本の未来を決める
第2章 未来の世界で日本の地位はどうなるか
第3章 増大する医療・介護需要に対処できるか
第4章 医療・介護技術は、ここまで進歩する
第5章 メタバースと無人企業はどこまで広がるか
第6章 自動運転とEVで生活は大きく変わる
第7章 再生可能エネルギーで脱炭素を実現できるか
第8章 核融合発電、量子コンピュータの未来
第9章 未来に向けて、人材育成が急務
おわりに:われわれは、未来に対する責任を果たしているか?

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