【これは名著だ―ある起業家の生涯】
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こんなことを書くと「書評家失格」と叱られそうですが、日々いただく本のなかには、「今は読みたくないな」と思う本があります。
それは、興味がないからではなく、まだ自分が理解できるレベルに至っていないから。理解できずに「つまらない」と言ってしまうのが怖いからなのです。
土井も人の子ですから、いずれ心の準備ができてから読みたい本というのがある。
本日ご紹介する一冊は、まさにそんな一冊です。
著者は、2011年4月にお亡くなりになった、住生活グループの創業者、潮田健次郎氏。
20歳で東京大空襲を体験し、破壊されつくした祖国の惨状を見て、「家をつくらねばならぬ、良い家に暮らすことから人の幸せは始まる」との思いで起業し、同社を1兆円企業にまで育てた、稀代の起業家です。
本書『熱意力闘―私の履歴書』には、氏の闘いの歴史と経営哲学、ビジネスノウハウがつづられています。
小学校6年生の時に結核を患い、20歳近くまで8年間サナトリウムで過ごした。
そんな著者が、どうやって身体のハンディを乗り越え、起業家として成功したか。
そのストーリーの面白さもさることながら、経営のノウハウとしても、実践的で役立つ内容です。
著者がいかにして志を得たか、いかにして危機や成功の罠を乗り越えたか、いかにして最愛の人との別れを乗り越えたのか…。
単なる一経営者の伝記を超え、感動すらおぼえる一冊です。
もともと日本経済新聞「私の履歴書」に連載していたものに、トステムグループ、住生活グループの社内報から抜き出した名言、経営訓を盛り込んでおり、読み応えは十分。
「挑戦する意味」を求めるすべての起業家・ビジネスマンに読んで欲しい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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父は「人と同じことをしていたら、人と同じ結果しか得られない」と教えてくれた。奉公時代に他人の何倍も努力したからこそ、自分の店を持てた。兄弟弟子たちは石工のまま終わった者が多いという
◆生涯糧にした4つの教え
1.「人と同じことをしていたら、人と同じ結果しか得られない」(父の言葉)
2.「寝ていて人を起こすな」(伯父の言葉)
3.「破廉恥なことだけは絶対するな」(兄の先生の言葉)
4.「好漢、惜しむらくは兵法を知らず」(国語の教科書に出てきた平安後期の話)
私に割り当てられたのは、朝早く起きて熊手で砂地の落ち葉を掃く仕事だった。冬になると霜が降り、手がかじかむ。私はこの作業が好きになった。掃除をしながら、砂地に熊手で模様をつけるのが面白かったのである(中略)単純な作業でも自分なりに工夫、改善すれば喜びがわいてくる、仕事って楽しいものだな、と気づいた
この本(土井注:『ジョン・ワナメーカ 人及びその事業』)を読んで私には1つの哲学ができた。「利益を上げるには、まずお客様の利益をつくらなければならない」という考えだ(中略)お客様に利益を提供して、その一部をいただくというのが経営だと思う
アルミサッシが普及すれば木製建具は売れなくなってしまう。最大の危機を好機に変えるには自ら参入するほかない
寸法の表示も工務店が使いやすいように尺貫法にした。どのメーカーの建材を使うか、実質的な決定権を持つのは工務店である
メーンバンクとは何か。私は「困った時に助けてくれる銀行」と定義し、メーンを三菱から太陽神戸に変えた
社長が特定の地域で取引先を接待すれば、他の地域の営業責任者も社長を招こうとするだろう。トップの歓心を買おうと競ううちに派閥が生まれ、派閥が会社をダメにする
「数字に強い」というのは数字からその数字が持っている意味を読み取って、アクションを起こせる人のことをいう
慢心とは守りを軽視した心の状態である
人を減らすよりも売り上げを増やし、利益を高める方が賢明である。50%以上のシェアを獲得する方法は、利益をあげながらその業界の総人員の50%以上の人を投入することである
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『熱意力闘―私の履歴書』潮田健次郎・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆
第I部 私の履歴書
第II部 潮田健次郎、経営を語る
第III部 父、潮田健次郎を語る
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