2022年8月17日

『あめつちのうた』朝倉宏景・著 vol.6060

【2022年ひょうご本大賞受賞作】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4065241294

本日ご紹介する一冊は、甲子園球場の神整備で知られる、「阪神園芸」をモデルに書かれた小説。

2012年に『白球アフロ』で、第7回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞した朝倉宏景さんが、阪神園芸さんに取材して書いた、渾身のお仕事小説です。

高校時代、夏の甲子園の予選で、決勝まで進んだ父と、野球センス抜群の弟を持つ、なぜか運動神経ゼロの主人公、雨宮大地が、代償行為として、甲子園のグラウンド整備を請け負う阪神園芸に入社する。

そこで彼が見たのは、かつて将来を嘱望ながら故障によって夢を絶たれた甲子園のヒーローと、グラウンド整備に命を懸ける職人たちだった…。

小説として読んでも感動しますが、ビジネス・自己啓発書として読んでも、学ぶところの多い一冊です。

長い人生、誰しも困難や挫折を経験すると思いますが、そんな時、どうやって困難に立ち向かっていけばいいのか。どうやって立ち直り、再び歩き出せばいいのか。本書にはそのヒントが書かれています。

阪神園芸さんの土作り哲学にも感動しますが、それぞれの人物が抱える葛藤、そして彼らがそれを乗り越えていく姿に感動します。

人生は、挫折して終わるわけではない。

挫折してなお、前に進む登場人物たちから、読者はきっと勇気や希望を受け取ると思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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厳しいことを言うようやけど、感謝を求めている時点で、お前は負けやな

高校野球でも、プロでも、選手が楽しそうに、のびのびプレーしてる。それを見たお客さんたちが、よろこんでる。感動して、拍手喝采してる。それだけで、グラウンドキーパーは満足なんや。結果として感謝されることがあったとしてもな、それを目的にしたらあかんやろ

過去は誰にでもある。でも、今は今なのだ。絶対に負けてはいられない

近くに目を落とすんやない。遠くを見れば、自然と真っ直ぐ進めるで

水持ちがいいということと、水捌けがいいということは、一見矛盾するように思えるけれど、たしかにその両方の条件を満たしているからこそ、さまざまな天候に対応できるグラウンドになるのだろう

土は雨を吸うからこそ、強くなる。むしろ、雨がなければ、地面は固まらないのだ。おそらく長谷さんも同じ考えに至ったのだろう。ハッとした表情で顔を上げた。「いろいろな災難や困難があるけれどね。それを切り抜ければ、もっともっと人間として強くなれる。空を見上げると、きれいな虹がかかってる」

たしかに、もうあかんって思うときもある。絶望的な気持ちになるときもあるやろ。でも、家を押し流されてしまったとしても、また建てたらええやん。もっと、強い家を、あったかい家を、だって、ウチら生きてるんやもん

あいつの球を、受けてみたい。とてつもないボールや。そうキャッチャーに思わせたら、勝ちや。あいつの球を打ってみたいって、バッターに思わせたら勝ちや。絶対にお前の味方になってくれるキャッチャー、チームメートが出てくる。お前の努力を認めるヤツは必ずおる

グラウンドはグラウンド自身の力によって、回復をしているのだ。俺たちは、その手伝いをしているに過ぎない

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知人に勧められて読んだ本ですが、読み始めた直後からグイグイ引き込まれ、あっという間に完読してしまいました。

毎年の高校野球を楽しむために、自分の人生を見つめ直すために、また生きる希望を得るために、ぜひ読んでみたい一冊です。

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『あめつちのうた』朝倉宏景・著 講談社

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◆目次◆

プロローグ
はじめての春
はじめての夏
はじめての秋
はじめての冬
ふたたびの春

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