【これは必読。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4777820548
本日ご紹介する一冊は、見た目のインパクトと専門知識のすごさで話題の生物学者(生態学、農薬科学、ダニ学が専門)、五箇公一さんによる、生物学入門。
「NHKクローズアップ現代」で解説を務めたり、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」でレギュラーを務めたりしているので、ご存知の方も多いと思いますが、この方、著者としても有力です。
今回ご紹介する本は、生物学の基礎に始まり、遺伝、ウイルス、生物多様性、そしてわれわれが目指すべき社会にいたるまで、生物学的観点から語った、超絶面白い本です。
なぜわれわれはこうもウイルスに苦しめられるのか、このまま都市化が進めば人間はどうなるのか、里山がなくなることや生物多様性が失われることがなぜヤバいのか…。
都市に住んでいても避けられない環境の脅威を正しく知っておくために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
面白いことに、生物学の本ではあるのですが、これからわれわれがどんな社会を目指すべきなのか、どこに産業界の進む道があるのか、個人はどう生きればいいのか、ヒントを与えてくれる一冊でもあります。
かつて循環型の社会を築いていたわれわれ日本人が、<生活様式も住宅様式も経済様式も、資源消費のフローの上に浮いているだけで、再生産性や持続性が極めて低下>してしまったという指摘は、円安が進む今、重く受け止めなければなりません。
パンデミックの危険性が高まってしまったことの背景にも、われわれの安易な利便性追求や消費型社会、利己的な風潮が影響しているのだということが、本書の説明でよくわかりました。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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生物が高度化するに従い細胞にとりついてエネルギーをもらおうとする寄生者が進化してきます。これがウイルスやバクテリアなどです。宿主としてはエネルギーを吸い取られたら、当然増殖の効率が落ちてしまいます。だから、宿主である細胞生物体もエネルギーを取られないように進化します
「退化」も進化の一種である
動物には血縁のない他者への利他的行動(自己が不利益をかぶることで、ほかの個体に利益を与える行動)というのがまったくありません
もし、なんらかの拍子に、エゴイズムの増殖が止まらなくなり、核戦争などで文明が崩壊し、本当に人間が自然界に裸で放り出されることになったら……。ケダモノに負けるのが人間です。人間らしさを失ったときとは、人間が崩壊、滅亡するときです。人間が強いと思うこと自体がエゴなんですから
「再生医療」にも問題はあると思います。例えば、iPS細胞のガン化です。ガンもなんらかの刺激で突然正常だった細胞が異常になるわけですから、iPSを作るときにもありえます
今は大丈夫でも、キーストーン種(中枢種)が滅べば、ドカーンと多くの種の絶滅につながるのかもしれない
里山という生活様式、木造という住宅様式、農林水産業を基本とした経済様式など、かつての日本社会は持続可能なシステムの中で発展してきました。しかしながら、現代に入って日本はすっかり輸入資源に依存した資源消費国家となってしまいました。生活様式も住宅様式も経済様式も、資源消費のフローの上に浮いているだけで、再生産性や持続性が極めて低下してしまいました。産業の中心が商工業へとシフトし、生産効率と消費効率の高い都市部へと人口が集中するようになり、農林水産業を主体とした地方からは、若年層の流出が続きました
人間の創薬能力をはるかに上回る勢いでウイルスたちはわれわれを攻撃してくるのです。いずれ人間社会は新興感染症によって崩壊させられるかもしれません。この勝ち目のない戦いを終息させるためにも、生物多様性のこれ以上の破壊はやめなくてはならないのです
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本書には、これからわれわれの社会や産業が目指すべき方向と、仕事人としてどうあるべきかの指針が書かれています。
最終章で著者は、企業在籍時、科学者としてやってはいけない不本意な仕事をしてしまったことを悔いていますが、こうした職業倫理の不在は、日本企業のいたるところで起きているに違いありません。
この最終章は、生き方や仕事選びで悩むすべての方に読んでいただきたい箇所です。
生物学のテーマを超え、はるかに面白く、ためになる一冊でした。
ぜひ、読んでみてください。
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『これからの時代を生き抜くための生物学入門』五箇公一・著 辰巳出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4777820548
<Kindleで購入する>
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◆目次◆
まえがき
第1章 性のしくみ
第2章 生物学からみる人間社会
第3章 遺伝
第4章 遺伝子優生論
第5章 生物の多様性
第6章 生物学と未来
第7章 私と生物学
あとがき
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