2012年3月12日

『愛は脳を活性化する』松本元・著 Vol.2791

【孫正義に影響を与えた本】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000065424

本日の一冊は、孫正義氏が学んだという、元理化学研究所の人工知能研究者、故・松本元氏による遺作。

人工知能の実現のため、脳のメカニズムを徹底研究した著者が、脳を最大限活用し、充実した人生を歩むためのコツを述べた、ロングセラーです。

わずか100ページとちょっとの小冊子に、脳に関する科学的知見がまとめられており、どうすれば学習効果が高まるかというノウハウまで学ぶことができます。

なぜわれわれ人間がわかりあえないのか、なぜ数学の先生が嫌いだと数学まで嫌いになってしまうのか、なぜ物事の起こった順序が学習にきわめて重要なのか…。

さまざまな現象・トピックがすっきり説明されており、じつに興味深い内容です。

愛や夢がなぜ大事なのか、また別の視点から学習することができ、とても有意義な読書体験でした。

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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快・不快を判断する視床─扁桃体の直接経路が「価値の一時判断系」である。この後、この入力情報が大脳皮質の認知情報処理系でさらに時間をかけて緻密に処理され、その結果が扁桃体で価値判断されるという「価値の二次判断系」によって再び判断される

情動系が価値を認めると、脳内活性が上がり学習効果が高まる

自然現象を最終的に認識する「人の脳」の情報処理が主観的なものであるということは、自然認識(すなわち科学)も、客観的には行い得ない、ということを示している

脳には連想学習性(情報を連合して学習する性質)というものがある。その結果、ある人から不快な情報を得て、その人を嫌いとなると、その不快情報が強烈であるほど「嫌い」という感
情がその人のもつ属性全般にどんどん広がってゆく。数学の先生が嫌いになると、数学まで嫌いになってしまう

外部情報を快・不快ととらえるのは脳の内部構造だということである。決して外部情報が快・不快という感情を運び込むのではない。精神的な痛みを伴うために不快ととらえがちなことも、
「自分にとって価値がある」と思えば、脳は活性化され、問題解決へ向けて自律的に脳の回路が形成されていく

深層に強い怨念、痛み、苦しみ、悲しみなどの感情が強く長期記憶化している人は、さまざまな入力情報によってこれらが呼び出される機会も多いだろう

物事の起こった順序は学習にきわめて重要な効果を生じさせる(中略)脳は、強い刺激を受けとるよりも時間的に少し前に入力されていた情報を、この強い情報と関連づけて学習する性質がある

情がマスター(主人)で、知はスレーブ(従僕)である。脳は意欲で働くのである。特にわれわれは、人から受け入れられ、人からわかってもらうことで意欲があがり、知が働くように作られている

愛とは人との関わりを求め、人の存在をそのまま受け入れるための価値の尺度ということになる。そしてわれわれは、愛をもつためには、自分自身が愛を受けた経験をもってそれを学習し、脳内にそうした回路を形成していかなくてはならない(渡辺裕子著『「自分」を愛するために』、いのちのことば社、一九九三年を参照されたい)

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『愛は脳を活性化する』松本元・著 岩波書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000065424
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◆目次◆

プロローグ 「脳を知る」とはどういうことか
1.脳とはどんなコンピュータか
2.脳型コンピュータの開発に向けて
3.脳から見た心──内部世界が作る心の特徴
4.愛は脳を活性化する
5.科学と宗教
6.新しい科学の始まりの中で
あとがき

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