【あらゆる情報が信用できなくなる未来】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4863135130
SNSを見ていると、メディアの仕事に携わっている人間でも、引っ掛かってしまいそうなほど巧妙なフェイク情報が多々あり、本当に驚きます。
梅棹忠夫さんは、名著『情報の文明学』で、「情報氾濫の時代になればなるほど、情報の情報が要求される」と述べましたが、テクノロジーが情報を作る「大氾濫」時代になると、それすらも当てにならない。フェイクを見抜く技術が求められるのだと思います。
※参考:『情報の文明学』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122033985/
本日ご紹介する一冊は、まさにそのフェイクを見抜く技術を、情報のプロであり、政治アドバイザーも務めている著者が述べた一冊。
本書のなかで著者は、テクノロジーとAIが政治にもたらす影響、それによって脅かされる情報の信憑性と市民生活の危機について指摘しています。
著者はこれまで、ブレグジット(英国のEU離脱)や仏大統領エマニュエル・マクロンの選挙運動、2016年と2020年の米国大統領選挙における他国の干渉、誤情報やニセ情報の進化に関連する仕事に携わってきた人物で、ジョー・バイデンやアナス・フォー・ラスムセン(NATOの前事務総長)のアドバイザーも務めています。
本書では、情報加工技術やAIが発達したことによる、インフォカリプス(情報の終焉)のリスクや、政治的分断、なりすまし、性的被害のリスクと手口を紹介。
偽情報が蔓延する時代に、どう情報と付き合っていくか、重要な示唆に富んだ一冊です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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私たちは、一見正しく思われる音声や画像素材を、本物だと信じてしまう傾向がある。心理学者はこれを「処理の流ちょう性」と呼び、人は無意識に、脳が素早く処理できる情報を肯定的にとらえるのだと説明する。文章よりも、視覚に訴える情報を受け入れやすいのだ。例えば、「マカデミアナッツは桃と同じ科の植物だ」という文にマカデミアナッツの写真が添えられていたら、それを信じやすくなるのだという
同族意識をあおることで、IRAは米国の弱点を突いた。自由で開かれた民主主義を利用して、社会の分断を引き起こしたのだ
トランプは「アジェンダ設定機能」によって情報空間を支配
フェイスブック社が所有するメッセージアプリ「ワッツアップ」(WhatsApp)を例に取ってみよう。非公開で暗号化の技術が使われているワッツアップは、デマ拡散の主要なルートの一つだ
(ボストン大学ロースクールでプライバシーの研究を主導するダニエル・シトロン教授は)ディープフェイク・ポルノは、いずれもっと全般的な人権侵害が起きる前兆だと考えていると言う。私たちの外見や声が盗まれ、その結果プライバシーや安全に暮らす権利が脅かされると言うのだ
インフォカリプスに抵抗するためには、その中で溺れるのではなく、外に逃れる必要がある。情報のエコシステムの中身ではなく、構造に目を向けるのだ
これまで以上に、信用できるジャーナリズムとファクトチェック団体(情報の正確性を検証する組織)を支えていく必要がある。ファクトチェックに関しては、すでに数十もの団体が存在する。米国では、2008年の大統領選挙の際のファクトチェックでピュリツァー賞を受賞したポリティファクトの他、スノープス、APファクトチェック(AP通信社から)などがある
人間は心理学者が「幻想の真実」と呼ぶ、勘違いを起こしやすい。長い時間、何かを見聞きしていると、たとえそれが嘘であっても真実だと錯覚してしまうのだ。従って、誤った思い込みを避けるためには、間違いや嘘を速やかに排除し続ける必要がある
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読んでいると、本書の著者すら信じられなくなってきますが(笑)、情報の真偽を見極めるポイントや、どんな手口で人々が騙されるのかがわかるだけでも儲けものです。
巻末には、ファクトチェック団体の一覧や、ソーシャルメディアの分析をしているサービスの一覧もあるので、ぜひ参考になさってください。
厄介な時代を生き抜くための、ヒントにあふれた一冊です。
ぜひ、読んでみてください。
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『ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち』
ニーナ・シック・著 片山美佳子・訳
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◆目次◆
はじめに 世界はニセ情報であふれている
第1章 ディープフェイクはポルノから始まった
第2章 ロシアが見せる匠の技
第3章 米国が占う西側諸国の未来
第4章 翻弄される発展途上国の市民
第5章 犯罪の武器になる野放しのディープフェイク
第6章 世界を震撼させる新型コロナウイルス
第7章 まだ、希望はある
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