【中谷巌、これからの世界経済を語る】
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本日の一冊は、グローバル資本主義との決別を宣言した懺悔の書、『資本主義はなぜ自壊したのか』で話題を呼んだ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌さんが、資本主義以後の世界を考察した一冊。
※参考:『資本主義はなぜ自壊したのか』
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資本主義世界が行き詰まっている理由を、「フロンティアの消失」に求め、これまで欧米列強が繁栄するために、いかにして途上国を搾取してきたか、経済史を振り返って論じています。
イギリス人が黒人奴隷を活用して行ったプランテーション経営、中国に入り込むきっかけとなったアヘン戦争など、資本主義の暗部に言及し、資本主義が本来持っている弊害について論じています。
第二次世界大戦後、多くの植民地が独立したことで消失した「地理的フロンティア」、リーマン・ショックの影響で消えた「金融フロンティア」、環境破壊の拡大によってなくなりつつある「自然フロンティア」…。
完全に行き詰まった資本主義が、今後どのように変化するべきか、知識人たちの見解を踏まえながら、著者の意見が示されています。
人間を「労働力」としてとらえ、値段のついていないものの価値を無視する資本主義というシステム。
著者は、そんな資本主義システムに警鐘を鳴らし、<過剰な「交換」の思想から「贈与」の精神への「文明の転換」>を説いています。
これからの経済動向や日米関係、起こりうる危機へのヒントも示されており、じつに興味深い一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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資本主義世界が行き詰まっている最大の理由は、「フロンティアの消失」である。第一に、第二次世界大戦後、多くの植民地が独立したことで西洋列強にとって収奪可能な「地理的フロンティア」が消失したこと。第二に、リーマン・ショックでグローバル金融市場という利潤を生み出す打出の小槌としての「金融フロンティア」が縮小したこと。第三に、環境破壊の拡大によってこれまで人類が好き放題に搾取してきた「自然フロンティア」がなくなろうとしていること。これらが資本主義国の潜在的な成長力を大きく低下されたのではないか
彼(ジョヴァンニ・アリギ)の研究によれば、ヘゲモニー(覇権)を握った国は当初、実物経済で高い利潤を稼ぐ力を有するが、競争相手の登場で次第に利潤率が低下する。覇権国はヘゲモニーを維持するために金融経済化を画策するようになる。しかし、金融経済化したヘゲモニー国家はやがて凋落し、覇権国の交代が起こる
ここからは私の推測だが──アメリカの「要望」を拒絶できない日本は、あたかもそれが日本政府の主体的な意思に基づく改革であるかのように見せかける必要があった
世間一般ではひと口に「失われた二〇年」と言うが、この二〇年の期間に本当に失われたものは、「長期的な信頼関係に基づく日本の経済社会システム」「優秀な官僚システム」「大銀行のパワー」なのではなかっただろうか
市場原理のもとでは、高い値段のつくものに価値がある。社会にとって必要なものであっても、値段がつかないかぎり、市場で取引されない。市場取引の対象にならないものは、たとえそれが社会的に見て有益なものであっても、企業の価値を引き上げることはできない。したがって、値段のつかないものは大まかに言って無視され、放置され、あるいは浪費されたりする
CSRは企業活動そのものでなければならない
マスキー法と石油ショックという巨大な「制約」こそが、日本製自動車が世界各国で認められる大きなきっかけとなり、日本を世界有数の自動車大国に押し上げることになったのである。「規制撤廃が発明の母」なのではなく、「規制こそ発明の母」なのだ
われわれはどうやら「贈与」の精神を忘れていたらしい。われわれの日常生活はあまりにも「交換」という考え方に偏っていた
「超高齢社会」における根本問題は「孤立」だ
資本主義は人間を「労働力」として捉えるから、たとえば家族などというものの価値は下がってしまう
日本のように極端に農業を切り捨ててきた国はほとんどない。ジャック・アタリは『21世紀の歴史』(林昌宏訳、作品社)の中で、やがて世界は「超紛争の時代」に入り、食糧の奪い合いで各国は絶えざる紛争に悩まされることになると予告している。やがて世界は、飢餓で絶望した難民が国境線を越えるようになり、それが「超紛争の時代」の引き金になるというのである
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『資本主義以後の世界』中谷巌・著 徳間書店
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◆目次◆
第1章 資本主義はやはり「自壊した」のか
第2章 資本主義はいかにして発展し、衰退したのか
第3章 「失われた二〇年」で日本はなにを失ったのか
第4章 中国の“資本主義”をどう理解すべきか
第5章 最高の社会資本としての「信頼」
第6章 「資本主義以後」の日本企業
第7章 戦略的・脱原発政策のすすめ
第8章 日本は「文明の転換」を主導できるか
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