【江戸時代の天才起業家に学ぶ】
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本日ご紹介する一冊は、江戸時代の天才起業家12人に学ぶ、マーケティングと競争戦略。
著者は、ストーリーブランディングの第一人者で、湘南ストーリーブランディング研究所代表の川上徹也さんです。
あのドラッカーも絶賛したマーケティングの元祖・三井高利、喜多川歌麿、東洲斎写楽を見出した天才プロデューサー・蔦屋重三郎、富山の置き薬を開発した前田正甫、東廻り航路、西廻り航路を開拓した河村瑞賢、現在の居酒屋のビジネスの基礎を作った豊島屋十右衛門、商品券を使った前払いビジネスの先駆け、にんべん六代目の高津伊兵衛など、計12名の事例が紹介されており、じつに興味深い。
もちろん、いずれのマーケティングアイデアも現在では普及しきっていますが、そのアイデアに至った発想法、視点は、今でも役立つと思います。
三井越後屋が行った「番傘」の無料貸出、駅のネーミングライツ、蔦屋重三郎が行った編集の工夫と新人プロデュースの手法、大丸創業者が江戸進出に向けて行ったデザイン戦略、豊島屋が提供したおつまみの田楽豆腐、紀伊国屋文左衛門のストーリーブランディング…。
当時の様子や反響まで細かく書かれていて、歴史上のまーケティング戦略を、身近なものとして興味深く読むことができました。
また、彼らが行った戦略、マーケティング手法を現在において実施している最新事例が紹介されており、こちらも読み応えがあります。
さっそく、本文の中から気になった部分を赤ペンチェックして行きましょう。
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日本橋に店を構える呉服屋は、町人にとっては高嶺の花。今で言うブランドショップのようなものですから、越後屋の傘をさしていること自体が、ちょっとしたステータスだったと思われます
越後屋があった駿河町は、駿河の國の富士山を望むことからつけられました。ここからの富士山の眺望は江戸一と言われていたこともあり、江戸時代に有数の観光名所となり、浮世絵などによく描かれることになります。店の様子も描かれることから、当然越後屋のブランド価値も上がったのです
日比は、帝国劇場の来場客に無料で配布されるプログラムに目をつけ、三越の広告を載せて観劇後に買い物へと誘ったのです。そのキャッチコピーは「今日は帝劇、明日は三越」というものでした
瑞賢40歳。明暦3年(1657)年正月、江戸の街の3分の2を焼き尽くし10万人以上の死者を出した明暦の大火が起こります。店にも火の手は迫っていましたが、瑞賢は家財道具を顧みず、なけなしのお金をかき集めてすぐにヒノキの大産地である木曽福島(今の長野県木曽郡)に向かいました。雪に閉ざされた木曽に江戸大火の情報が届き、木材が高騰する前に買えるだけ買うという作戦です。誰よりも早く木曽に着いた瑞賢は、大地主の子供に「小判3枚に穴をあけて紐で繋いだおもちゃ」を作り与えました。大地主は瑞賢のことを余程の大商人だと思いました。その結果、わずかな手付金でその地の全木材の独占販売権を獲得。遅れてやってきた他の材木商は瑞賢から買うしかなく、巨利を得たのです
実は、この酒の原価販売にはからくりがありました。豊島屋は「酒」で儲けているわけではなかったのです。大量に出る空の酒樽で利益を出していました
季節限定商品「白酒」で女性客を取り込む
六代目伊兵衛が起こした最大のイノベーションは、銅製の鰹節の形をした「イの切手」を発行したことです。これはあらかじめ「イの切手」を買っておくと、店頭で同価格の鰹節に引き換えてもらえるというものです
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江戸時代の豪商を取り上げた本はいくつかありますが、ここまで現在のビジネスパーソンにわかりやすくまとめた本は珍しいと思います。
著者が推奨しているように、本書を読んだ後は、日本橋に行って、今も続く天才起業家たちのお店を訪れてみるといいかもしれません。(181ページに日本橋の地図が載っています)
ぜひ、読んでみてください。
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『江戸式マーケ』川上徹也・著 文藝春秋
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◆目次◆
第1章 三井高利「三井越後屋」
第2章 蔦屋重三郎「耕書堂」
第3章 富山藩二代目藩主前田正甫&越中富山の薬売り
第4章 大丸 下村彦右衛門正啓
第5章 材木商・河村瑞賢
第6章 豊島屋十右衛門「豊島屋酒店」
第7章 二代目西川甚五郎「西川家山形屋」
第8章 山本山 五代目山本嘉兵衛
第9章 にんべん 六代目高津伊兵衛
第10章 紀伊国屋文左衛門
第11章 佐賀藩 第十代藩主 鍋島直正
第12章 伊能忠敬
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