2011年11月18日

『ビジネスパーソンのための契約の教科書』 福井健策・著 Vol.2676

【グローバル時代のコワ~イ契約の話】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166608347

最近、TPPの話題が盛り上がっていますね。

経済がグローバル化すれば、必ず起こるのが、契約の問題。

最近は、出版業界でも海外翻訳の案件が多くなり、土井のところにも、しばしば中国・韓国での翻訳の話が舞い込んできています。

しかし、「訴訟なんてない」と思い込んでいる日本人にとって、この「契約」はクセモノ。

しっかり基礎を押さえておかないと、予想もしないところで泣きを見ることになります。

「いや、自分は関係ないから」という人も、FacebookやTwitter、YouTubeは使っているでしょう。

これらのサービスの規約を読んだことはありますか?

本日ご紹介する一冊は、こうした米国発のサービスの「規約」の恐ろしさや、日本のコンテンツ企業が海外企業と結んでいる契約の問題点、注意点を、まとめた一冊。

著者の福井健策さんは、東京大学法学部を経て、米国コロンビア大学法学修士課程を終了した、コンテンツ契約の第一人者。日本大学芸術学部客員教授であり、国会図書館審議会ほかの委員・理事も務める人物です。

一読して驚いたのは、難しい内容を扱っているのに、じつにわかりやすく書かれている点。

退屈な法律の原理・原則に偏ることなく、適宜宇多田ヒカル、坂本龍一とユーチューブ、ユーストリームの問題などに触れ、読み手を飽きさせることがありません。

コンテンツ契約への意識が甘いため、現在の日本のコンテンツ国際収支は、五六〇〇億円の赤字。

これを解消するためにも、また自社のビジネスを有利に運ぶためにも、ぜひ押さえておきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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アメリカ発サービスを中心に、多くの利用規約には、「ユーザーは、投稿した映像・発言のあらゆる流用や改変を永久・無償で許す」という条文があります。つまり規約上は、サービス運営側は投稿映像を集めたDVDを全世界で販売することも、有名人のつぶやきを素材として第三者の商品や宣伝に利用させることも自由

五六〇〇億円。日本のコンテンツ国際収支の赤字幅です。日銀が出している貿易収支の統計があって、その中で「著作権収支」として公表されているものです

日本側が海外相手に作品を利用させる場合、期間が半永久的で、相手が全世界的に利用を独占する条件のものが、少なくありません

何か不測の事故が起きたときに日本側だけが損害を負担するような規定も、珍しくありません。万一、両者の間で意見対立が発生しても、裁判は相手の国でおこなう規定になっているケースがほとんど

たとえば、原作映画の映画化をハリウッドの会社に許可(ライセンス)したつもりだったのが、よく見ると「全世界的に、著作権を永久に譲渡(assign)する」と書いてある。つまり、原作映画は以後ハリウッドの会社のものになります

相手に権利を与える契約のゴールは、「相手が必要としていて、現に活用できそうな権利だけを与える」「それ以外の権利はこちらに残しておく」です。逆に権利を得る契約のゴールは、「対価が変わらないなら、将来活用する可能性のある権利は全部いただく」です

ライセンスを与えた方はお金を受けとり、二次的著作物の権利も受けとる。これがアサインバックの特徴であり、強力さです。ライセンスを与えるだけで、イキのよい新進クリエイターが素敵な「進化形キャラクター」を作ってくれ、お金ばかりか、その新作品の権利も手に入る

「裁判管轄」と「準拠法」、海外の企業から提示されるほとんどの契約書のドラフトでは、相手国の「裁判管轄」「準拠法」となっています

ユーチューブが映像を無償で転用して、仮に元の権利者に訴えられたら、どうなるでしょうか。これも、ちゃんと規定があります。その場合には、投稿した皆さんが、ユーチューブ社の膨大な弁護士費用を含めて全責任を負うことになっています(第一一条)

「仮契約」は存在しない

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『ビジネスパーソンのための契約の教科書』福井健策・著 文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166608347

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◆目次◆

第一章 我われは「契約交渉」が苦手なのか?
第二章 日本が直面する契約問題の最前線
第三章 契約とは何か
第四章 契約書入門
第五章 日本と日本人の「契約力」を高めるために

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