2020年3月30日

『タルピオット』石倉洋子、ナアマ・ルベンチック・著 トメル・シュスマン・監修 vol.5484

【イスラエルのエリート養成プログラム】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532323347

本日ご紹介する一冊は、「中東のシリコンバレー」と呼ばれ、世界的ITベンチャーを続々輩出、国民一人あたりのベンチャーキャピタル投資額は世界一という、イスラエルのエリート養成プログラム「タルピオット」を紹介した注目の一冊。

本書によると、タルピオットは決して座学だけの教育ではなく、軍事訓練を含む、超ハードな内容。

毎年成績優秀な高校生約1万人の中から50人を選抜し、卒業後にイスラエル国防軍、ヘブライ大学、産業界が共同で「英才教育」を施すというもので、内容には数学と物理の学位に加え、コンピューターサイエンスの学位も含まれるという、まさにITエリート養成プログラムです。

イスラエルでは、兵役中に生まれた技術や発想を、起業して民間で商用化した例が多いようで、世界初のカプセル型内視鏡「ピルカム」や、コンピューターネットワークのセキュリティを守る「ファイアウォール」などもその事例。

このタルピオットが日本のエリート教育とどう違っていて、なぜイノベーションを生むエコシステムになっているのか、本書を読めばその理由がよくわかります。

さっそく、いくつかポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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限られたリソースのなかで、迅速に成果を得るためにイスラエルが取った手法が、選び抜かれたエリートを集中的に磨き上げ、その中からイノベーションを起こすことだった

タルピオットの選抜プロセスは、高校生の早い段階から始まる。まず成績や健康状態などの一般的な試験が行われて約1万人が選ばれる。そして物理、数学、コンピューターサイエンスや歴史などの科目について、クリエイティビティを測る試験が行われて数百人に絞り込まれる。次に3日間の合宿が行われ、グループに分けられてそれぞれにビジネスや数学、テクノロジーなどに関する課題が与えられる。その様子を基に絞り込まれた若者に、心理学者、タルピオットプログラムの教官らによる複数回の面接が行われて、最終的に50人が選ばれるのだ

タルピオットプログラムの期間中は、全員がヘブライ大学近くにある基地で生活する。ネゲブ砂漠の行軍やパラシュート降下などのハードな軍事訓練を受けなが
ら、ヘブライ大学の授業を受け、数学と物理の学位を取得する。3分の1ほどはこの2つに加え、コンピューターサイエンスの学位も取得するという。もちろん、
夏休みなどは全くなく、大学が休みの間は終日軍事訓練などが行われる

タルピオットでは『完璧主義』を『失敗することができる能力』も含むと定義している

タルピオットのメンバーには、日本企業であれば考えられないほどの責任が与えられる。イスラエル国防軍のさまざまな部署・部隊の機密情報に触れることができ、現場の兵士から司令官レベルまで、幅広い人と議論しながら、課題を見つけて解決策を作り上げる

多感な若い時代(概ね18歳から21歳)に、こうした密度の濃い経験をともにすることで、同期のタルピオットメンバーの間には強い連帯感が生まれる

同期だけでなく、タルピオン全体のネットワークも強い。直接面識がなくても、同じタルピオンであれば電話やメール1本で助け合えるほどだという

コアティゴは、工場で使われるセンサーやアクチュエーター(操作器)をつなぐ通信規格「IO-Link」に参加。世界で初めて、有線のプロトコルをワイヤレスに広げて「無線IO-Link」を実現し、産業用の「切れない、遅れない無線」を開発した

「イスラエルは、独創的な技術開発に長けている一方で、日本はそうした先端技術を発展させ、事業化することに長けている。両者が協働することで、大きなシナジーが生まれるはずだ」(日本・イスラエル間の協働促進を担当するエラ・ヘラー氏)

魅力的な技術を持つイスラエルのスタートアップと組みたい外国企業はほかにもたくさんあり、競争にさらされているのは日本企業の方だ

日本の大学はタルピオットのように少数ではないので、一人ひとりにメンターをつけてパーソナルトレーニングを行うことも、現状では難しいだろう

「やめること」を探し、時間を確保しよう

アイデア出しのテーマとして、「やめること」の案をたくさん集める。いくつかに絞り込んだあと、さらにそれぞれの案について「○○をやめたらどうなるか」を考えてみる

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もっとタルピオットならではの思考法、教育プログラムの具体的中身に突っ込んで欲しいところでしたが、こんなプログラムがあるとわかっただけでも収穫です。

タルピオットの選抜方法はじめ、日本の教育を考える上で、参考になる内容だと思います。

ぜひチェックしてみてください。

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『タルピオット』石倉洋子、ナアマ・ルベンチック・著
トメル・シュスマン・監修 日本経済新聞出版社

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532323347/

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◆目次◆

第1章 「中東のシリコンバレー」イスラエル
第2章 「スタートアップネーション」の誕生
第3章 イスラエルを支える「エコシステム」の秘密
第4章 なぜ、日本企業にイスラエルのスタートアップが必要なのか
第5章 イスラエルスタートアップと組むヒント
第6章 イスラエルとの協働から日本を変える

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