【注目の一冊。】
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本日ご紹介する一冊は、史上最年少29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の正教授に抜擢された、マルクス・ガブリエルによる超注目の論考。
マルクス・ガブリエルは、2月25日から連続でNHK Eテレ「欲望の時代の哲学」に出演する予定で、これから注目を浴びること必至です。
今のうちから予習しておきましょう。
本書は、ドイツ・ボン大学の研究で、PHP編集部とジャーナリストで訳者の大野和基氏が、独占ロングインタビューを行い、まとめたもの。
行き詰まった世界からわれわれを救う、救済の書とも言える内容です。
本書では、われわれが直面する「五つの危機」を扱っています。「価値の危機」「民主主義の危機」「資本主義の危機」「テクノロジーの危機」、そしてこの四つの危機の根底に横たわる「表象の危機」です。
何が真実で何がフェイクなのかわからなくなった我々に、著者が提唱する「新しい実在論」は、希望と力を与えてくれます。
それは、著者の言葉を借りれば、「新しい実在論」が、真実と人間としての正しいあり方を求めるからです。
本書では、気鋭の哲学者である著者が、シリコンバレーの虚構を打ち砕き、現実に進行しつつある革命という名の金儲けの実体を明らかにします。
民主主義の形を借りた、非民主主義的なソーシャルメディア、経済の停滞を招く機械化、トランスヒューマニズム(超人間主義)と名で彩られた「末人」への思想…。
これを読まずして、我々人類の未来はない。そう言っても過言ではない力作です。
さっそく、気になる部分を赤ペンチェックして行きましょう。
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我々の報道機関は、昔ながらの紙メディアであれソーシャル・メディアであれ、リアリティを著しくゆがめて伝えています。誰も真実を求めないからです。そこで重要なのが、「新しい実在論」なのです。「新しい実在論」はすべての人間を力づけます。真実を求めるからです。もし皆が本当に起きたことは何なのかと問いただせば、メディアの反応は変わらざるを得ません
北朝鮮はドイツの法定をハッキングすることや、ドイツの裁判所の判決に実際に介入することはできません。しかし、もし北朝鮮がフェイスブックに干渉したとすれば、それについて誰も何の対策も講じることはできないのです
「新しい実在論」において重要な概念である「意味の場」についても簡単に解説しましょう。「意味の場」とは、特定の解釈をする際、対象をいかにアレンジメント(配列)するかということを意味します。たとえば、我々が今図書館にいるとしましょう。図書館でどうやって本を探すかという視点から、「意味の場」について説明することができます。あなたは本の冊数をどのような方法で数えますか? 一冊、二冊と数えますよね。本は一冊ずつ分けることができるからです。(略)しかし、デジタル時代ではこの数え方が異なります。本の冊数だけではなく、ジャンル数を数えることも、本のページ数を数えることもできます。本の生産に使われる材木の量も計算の対象になります
人々は、何がフェイクで何がフェイクでないかを見極めるために対話を重ねるのではなく、何が真実であるかなんて重要ではないのだから基本的にはすべてがフェイクだと思え、という考えで話をしています。でも実際は、何が真実であるかということは重要です。というのも今我々がリアリティを破壊しつつあることを考えると、人類は二〇〇年以内に死に絶えかねないからです
普遍的な倫理観には、生物学的な基盤があります。我々は、もともとは同じ種だからです
道徳的な話になりそうなときーーすべての人が中立の立場になることが不可能なときとも言えますがーーたいてい相手の個別性については考えないほうがいい
現代は、ニーチェが「末人」を思いついた環境に近いと言えるでしょう。「末人」とは、いかなる代償を払っても痛みを避ける人を意味します。マリファナを吸ってリラックスするとか、戦争よりもワインを飲みながらテレビゲームでもしてくつろぐのを好む人のことです。安全で快適な生活を求める、二十一世紀の市民そのものです。昨今、トランスヒューマニズム(超人間主義)についてさかんに議論されていますが、そうやって人間が進化する果ては、ニーチェが言う「超人」ではなく「末人」のほうなのです
民主主義は、実際に存在する裁判所、インフラ、税システム、官僚、役所など、そういうすべての機関の複雑なシステムです。それが民主主義の実体です。非常に緩慢で複雑な社会システムです。そういうシステムがあるおかげで、あなたは人権を享受している可能性が極めて高い。というのも、そのシステムにいる人が買収などしてシステムを簡単に乗っ取り、あなたを個人的に攻撃することはできないからです
社会のすべてのレベルにいる人が協力しなければなりません。社会のゴールは、企業のゴールも含めて「人間性の向上」になるべきです。収入の増加ではなく、モラルの進歩を目指すのです。これは完全に実現可能です
これから作るべきは、高価だからこそ「贅沢品を買った」と誰しもに満足感を与えるような、環境に配慮した定期サービスです
機械に対価を払う人はいませんし、機械は物を買いません。ですから、この経済循環に組み込まれている人間が機械に置き換わるほど、経済活動は停滞する。つまり我々は貧しくなっていく
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<社会のゴールは、企業のゴールも含めて「人間性の向上」になるべき>という主張を読んで、これまでもやもやしていたものが、霧が晴れるように消えてなくなり、方向性が明らかになりました。
著者の言う通り、日本企業がアメリカ企業よりも優れた思想・哲学を持てば、再、び日本経済は浮上するでしょう。
かつて日本の有名企業がドラッカーを招聘したように、これからの価値を作ろうとする気概ある企業は、ぜひマルクス・ガブリエルを招聘して欲しいと思います。
ひさびさに衝撃を受けた一冊。
ぜひ、読んでみてください。
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『世界史の針が巻き戻るとき』マルクス・ガブリエル・著
大野和基・訳 PHP研究所
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◆目次◆
第1章 世界史の針が巻き戻るとき
第2章 なぜ今、新しい実在論なのか
第3章 価値の危機 非人間化、普遍的な価値、ニヒリズム
第4章 民主主義の危機 コモンセンス、文化的多元性、多様性のパラドックス
第5章 資本主義の危機 コ・イミュニズム、自己グローバル化、モラル企業
第6章 テクノロジーの危機 「人工的な」知能、GAFAへの対抗策、優しい独裁国家日本
第7章 表象の危機 ファクト、フェイクニュース、アメリカの病
補講 新しい実在論が我々にもたらすもの
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