【これは必読。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022516356
本日ご紹介する一冊は、P&Gを経て、マクドナルドを奇跡のV字回復に導き、現在は「ポケモンGO」で知られるナイアンティックの「シニアディレクタープロダクトマーケティング」を務める足立光さんと、日本コカ・コーラを経て、20世紀フォックスホームエンターテイメント代表取締役社長を務めた土合朋宏さんが共著で書いた、実践家のためのマーケティングの教科書。
タイトルには『「あなたの知らない」マーケティング大原則』とありますが、明らかにこれは間違い。
おそらく読者が知らないのは、「大原則」ではなく、本書にビッシリ書かれた現場での実践の方です。
本書には、大学やMBAでマーケティングをかじっただけの人には決してわからない、実践家ならではのノウハウが書かれています。
代表的なコンセプト開発のフレームワーク「ABC」を超えた、「ABCDE」を始め、9分割のセグメント、マーケットリーダーを切り崩すゲームチェンジの手法、競合に打ち勝つための「ウォー・ゲーミング」、話題化の秘訣「IMPAKT」、パッケージの評価方法、CMの無駄打ちを防ぐ方法まで、目からウロコの実践ノウハウが、事例付きでこれでもかというほど書き込まれています。
マーケターなら、ちらっとめくるだけで本書が「買い」であることがわかるでしょう。
さっそく、ポイントをチェックしてみます。
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◆戦略的コンセプトの「ABCDE」
1.ターゲット<A:Audience>
2.消費者便益<B:Benefit>
3.カテゴリー<C:Category>
4.差別点<D:Point of Difference>
5.トンマナ(トーン&マナー)<E:Emotional Character>
カテゴリーや競合は、製品・サービスという提供側の論理ではなく、「消費者が何をどう選択しているか」という視点で決まる
たとえば、洗浄力の強さを便益にしているマーケットリーダーの洗剤に対して、2番手の洗剤が「洗浄力10%アップ」という便益を訴求しても、大きな影響は期待できません。そういう場合は、「洗浄力じゃないもののほうが大切だ」というように、業界での重要とされる便益を変えてしまうことで、マーケットリーダーを切り崩すことができます
実際に使う場面ではなくて、それを持ち運ぶ場面に新しい便益を作ることもできる
「メラキアの法則」は「どうしてもダメなときは、あきらめたほうがいいアイデアが出る」と言うのです。もちろん、単にあきらめるのではなくて、小さくならないとわかったときに、「小さくないほうがむしろいい」と考えてみるのです。つまり、「大きいことのメリットを考えはじめろ」というわけです
定量調査については、結果の比較対象が選ばれてないケースが意外に多いのも問題です。たとえば、新モデルのコンセプトに80%の人が「いい」と答えたとしても、それ単体では80%という数字をどう評価していいのかわかりません。前のモデルの同様の調査時に90%の人が「いい」と答えていたら、新モデルの評価は10ポイントも下がっているわけです
実は持ち運びしてこま切れに飲むという、ペットボトルのお茶と同様のニーズがコーヒーにもあることは、業界的には以前からわかっていました。(中略)クラフトボスは、消費者のコーヒーに対する「使用機会」が広がっているというニーズの変化を、ちゃんと理解して対応した好例
他社がやられて最も嫌なことは、自社が強い「プロフィット・センター」(数ある中で、多くの利益を生んでいる事業)を攻められることです
炎上した時のために代わりの「安全な」広告素材を事前に用意しておいて、クレームがあったらすぐに差し替える、というのも立派な「戦術」
話題は「IMPAKT」で
Inverse 逆説、対立構造
Most 最上級、初、独自
Public 社会性、地域性
Actor/Actress 役者、人情
Keyword キーワード、数字
Trend 時流、世相、季節性
製品が店舗の棚に並んだ時に加えて、実際にその製品が使われる場所でも評価するようにしましょう。それが使われる場所でどのように見えるのかというのはとても重要です
無駄打ちをなくすにはどうしたらいいのでしょうか。少々数学を使うことになりますが、目標とするフリークエンシーに基づき累積人数のグラフを作ることです。たとえば目標回数が4回なら、横軸をGRP、縦軸を%と置いて、4回以下の人たちの累積の割合と、5回以上の人たちの累積の割合のグラフを作るのです。この2つのグラフの交点は4回以下しか見てない人たちと5回以上見ている人の均衡点です。なのでこの交点より右のGRPでは、目標回数の4回より多い人が増えていくばかりであり、つまりは「この交点より多いGRPは無駄撃ち」ということを示しています
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著者の足立光さんには、以前からマーケティングの王道テキストを作って欲しいと思っていたため、これは嬉しい企画。
内容も、期待をまったく裏切らない、良い内容でした。
QRコード入りのパッケージには意味がない、トライアル理論はもう無効など、歯に衣着せぬ物言いが気持ちいい。
マーケティングのプロなら、森岡毅さん、今西聖貴さんの共著『確率思考の戦略論』と本書は、必読と言っていいと思います。
※参考:『確率思考の戦略論』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041422/
ぜひ読んでみてください。
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『「あなたの知らない」マーケティング大原則』
足立光、土合朋宏・著 朝日新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022516356/
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B082HD8W5Y/
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◆目次◆
はじめに
PART1 マーケティングの基礎
第1章 戦略的コンセプト
第2章 マーケティング戦略
第3章 アイデアの創造
第4章 消費者理解
第5章 新製品開発
第6章 話題化
PART2 基本的製品戦略
第7章 価格設定
第8章 製品ミックス
第9章 パッケージ
第10章 流通戦略
PART3 消費者コミュニケーション
第11章 広告1:良い広告とは
第12章 広告2:広告代理店との付き合い方
第13章 TVなど既存のマスメディア
第14章 ソーシャルメディア/オンライン・メディア
第15章 戦略的PR
PART4 販売促進・その他のマーケティング活動
第16章 消費者プロモーション
第17章 協賛/戦略的提携
第18章 イベント活動
おわりに
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