2020年1月20日

『クリーンミート』ポール・シャピロ・著 ユヴァル・ノア・ハラリ・序文 鈴木素子・訳 vol.5437

【培養肉で世界が?大興奮のフードテック最前線レポート】
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本日ご紹介する一冊は、細胞から人口肉を作るという「フードテック」の最前線を、クリーンミート(培養肉)を最初に食べた希少な一人であり、TED×の講演者、かつ動物愛護団体「Compassion OverKilling」の設立者、ポール・シャピロがレポートした一冊。

名著『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリが序文を書いており、未来の世界を予見するのにピッタリの一冊と言っていいでしょう。

土井は本書を読んでいる最中、佐世保にいて今まさに「佐世保バーガー」を食べようと意気込んでいたのですが、読んで食べるのをやめました(苦笑)。

ガンの危険性がある加工肉(ベーコン)がてんこ盛りになっているのを見て、これは将来、食べたら責められる食べ物かもしれない、と思ったからです。

本書が指摘しているように、食肉を作るために、地球環境と動物たちは、多大なコストを払っています。そして、劣悪な環境で育てられた食肉は、それを食べる私たちにも大きなリスクを与えているのです。

本書に登場するフードテックのベンチャーたちは、現在の畜産のシステムを変えようと、使命感を持って立ち上がった人たち。

そんな彼らに名立たる有名経営者、ベンチャーキャピタルが投資し始めたというのだから、これは読まない手はありません。

ちなみに本書で述べられている培養肉の影響は、食品だけでなく、皮革(ファッション)業界にまで及びます。

食品とファッション、少なくとも2つの超巨大産業にイノベーションが起これば、社会は大きく変わらざるをえません。

投資家目線から見ても、大注目の一冊。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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軽食にビーフジャーキーをつまむのと同じように、ステーキチップスをつまめるようになったらどうだろう? 「高タンパク低脂肪、そのうえ便利なことこの上
なし。ぼくなら飛びつきますね」フォーガッシュは笑いながらステーキチップスを勧めた

ポストの考えでは、ハンバーグ1個をつくるのに必要な牛の筋繊維は約2万本だ。増殖のスピードから計算すると、たった3カ月しかかからない。牛を育てて解体
するよりはるかに速い(中略)通常の肉牛に必要な飼育期間は、ほとんどの場合約14カ月、グラスフェッド牛(肥育場で暮らしたことのない放牧牛)だと通常24カ月だ

アメリカの皮革業界は世界的な巨大産業だ。輸出だけをとっても、アメリカの皮革業界は、年間30億ドルの牛革を輸出している。解体された牛3500万頭にあたる分量だ

細胞農業界にも指摘する声があるように、クリーンミートはある意味、いまだに新奇な食品を売りこむための「適切なストーリー」を欠いている

レザーは通常、殺処分される牛1頭の経済価値の10パーセントを占める。残りの90パーセントを占めるのが体の内部、特に筋肉だ。だが、重さ当たりの価値を考えると、レザーのほうが筋肉よりも価格が高い。つまりモダンメドウにとって、食肉を商品化した場合と比べ、価格競争
しやすいのだ

妻の支持を得たバレティは心を決めた。「私は思いました。アメリカには2万5000人の心臓医がいる。けれど、無数の悪影響を振りまく食肉業界を終わらせ
るという、このうえなく重要な問題に取り組んでいる者は片手で数えるほどしかいないんだ、と。妻に背中を押されて、自分のすべきことが見えたんです」

アメリカ最大の民間会社のカーギルが食肉業界で初めてクリーンミートのスタートアップに投資し、業界じゅうを驚かせた

モダンメドウがレザーを市場に出そうと奮闘しているあいだに、クリーンミート分野はメンフィス・ミートやモサ・ミートといったスタートアップに(いまのところは)独占されてしまっている。そこへ、ハンプトン・クリークのテトリックが2016年、植物性タンパク質だけにこだわるのではなく、クリーンミートに、とりわけ培養鶏肉に全面的に資金を投入しようと決意した。いまや10億ドル以上の企業価値をもつハンプトン・クリークは、今後、年間数百万ドルを投じ、ク
リーンミートの商品化競争に加わろうと
している

「目標:2030年までに、世界最大の食肉会社になること」。プロジェクト・ジェイクの研究室には、入ってすぐのところに、こんな掲示がある

パンドヤはこう書いた。カゼインは4種の、乳清は基本的に2種のタンパク質からできており、この6種のタンパク質が水、糖類、無機物と結びついてできたものが牛乳だ。同じものを作るのに、最先端の科学はさほど必要ない。実際、重要な牛乳タンパク質のアミノ酸配列はネット上に無料で公開されている。その配列をDNAの塩基配列へ逆翻訳し、その配列のDNAを任意の医療サービス会社につくらせればいいだけだ

成功への最初の1歩はすでに、まちがいなく踏み出されている。ウマ・バレティは2017年、メンフィス・ミートの生産コストは設立当時の100分の1以下になったとコメントしている

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本書に登場するモダンメドウ、ハンプトン・クリーク、メンフィス・ミート、モサ・ミート、パーフェクト・デイなどの意欲あふれるベンチャー企業は、本気でこれまでの食品業界を葬り去ろうとしています。

「そんな青臭いことを…」と思った方は、ここに大手食品会社や有名ベンチャーキャピタルが投資を始めたという事実が、今後何を意味するか考えてみてください。

もちろん、培養肉は消費者がそれを受け入れるかどうかという課題、政府規制をクリアできるという課題、技術的な課題など、さまざまな課題を抱えてはいます。

しかしながら、こういった課題は、情熱と利害関係次第でいくらでもクリアできる。歴史がそれを証明しています。

本書の中で著者は、ガンジーのこんな名言を紹介しています。

「はじめに彼等は無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうして我々は勝つのだ」

社会的地位や金銭など、あらゆるものを投げ捨て、夢と使命に生きる挑戦者たちの物語を読むことで、思わぬエネルギーと生きる指針がもらえるでしょう。

ぜひ読んでみてください。

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『クリーンミート』ポール・シャピロ・著
ユヴァル・ノア・ハラリ・序文
鈴木素子・訳 日経BP

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◆目次◆

序文 ユヴァル・ノア・ハラリ
第1章 培養肉をつくる
第2章 科学の進歩で動物を救う
第3章 グーグル創業者からの支援を武器にする
第4章 培養レザーで先陣を切る
第5章 クリーンミート、アメリカ上陸
第6章 プロジェクト・ジェイク
第7章 食品(と物議)を醸す
第8章 未来を味わう
謝辞
訳者あとがき

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