【誇り高き生き方のヒント】
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本日ご紹介する一冊は、不確実で予測不可能な世界でどう生きればいいか、ナシーム・ニコラス・タレブが説いた注目の新刊。
『身銭を切れ』というタイトルだけ見たら、若い世代に向けた自己啓発書とも取れますが、「それを『ブラック・スワン』の著者が書く?」と疑問に思っていたところ、読んでみて誤解が解けました。
著者がいう「身銭を切れ」とは、何のリスクも取らずに言説だけを展開している知識人層に対するもの。
人は、身銭を切ることで、道義を果たすことができ、かつ世界の複雑さを知ることができるのです。
読者は、本書の原理を知ることで、これまで以上に聡明な判断ができるようになり、それがビジネスにも生きるはずです。
リーマンショックや東日本大震災での失策など、知識人層の怠慢により、この世界が負った負債は、決して少なくはありません。
聞いた話ですが、以前、ベストセラーも出している著名なコンサルタントが独立し、直後にやめてサラリーマンに戻ったので理由を聞いたところ、こう述べたそうです。
「いやー、独立したらこんなに雑務が多いなんて知らなくてさ」
そんなことも予見できないコンサルタントに多額の金を払ってアドバイスされるクライアントが不憫でなりませんね。
本書は、誰にでも起こる、こんな愚かさを撲滅するための本と言っていいでしょう。
社会に対して責任を果たし、真のフィロソフィア(知を愛する心)を持ちたければ、本書は読むべき一冊です。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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身銭を切ることは、公平性、商業的な効率性、リスク管理にとって必要なだけではない。この世界を理解するうえで欠かせない条件なのだ
あなたが何か意見を述べ、誰かがその意見に従ったのなら、あなた自身もその結果に対してリスクを負う道義的な義務がある。経済的な見解を述べるなら、<あなたの“考え”ではなく、ポートフォリオの中味を教えろ。>
◆干渉屋の欠陥
1.2次的な影響という視点で物事を考えられず、しかもその必要性にすら気づいていない
2.多次元的な問題と、それを1次元的に表現したものとの区別をつけられない
3.攻撃されることでかえって力を増していく人々の進化や、介入の反動として生じる問題の拡大を予測できない
ヤツらは結果が不確実性に満ちている場合にはシステムに余計なちょっかいを出すべきでないということをまるで理解していないし、もう少し一般的にいうと、結果が予測できない場合にはダウンサイド(潜在的損失)の大きな行動は避けるべきだということも理解していない
人民の庇護者でなければ、貴族たりえない
ハンムラビ法典には、ひとつの中心的なテーマがある。誰も隠れたテール・リスク(つまりロバート・ルービン風のリスク)を他者に転嫁できないよう、取引する人々どうしに対称性を定めているのだ
個人は自分がしてほしいことをほかの個人に対してする(あるいは、してほしくないことをしない)べきだし、家族はほかの家族に対して同様に接するべきだ。そして、国家もまたしかり
合理的なものとは、集団(長く生き延びなければならない実体)の生存を可能にするものである
倫理のほうが常に法律よりも頑健である。時がたつにつれて、法律が倫理に近づいていくはずであり、その逆ではない
商取引の当事者の一方だけが結果に対する不確実性を抱えていて、もう一方が抱えていないという状態はあってはならない
欧米では、まさしく少数決原理のおかげで、“オーガニック”フード会社の売上がどんどん伸びている
市場は市場参加者の総和ではない。市場価格の変化には、もっとも必死な買い手や売り手の活動が反映される。そう、もっとも必死な人々が市場を支配するのだ
重要なのは、何を持っているか、持っていないかではない。何を失うことを恐れているかだ。失うものが多ければ多いほど、その人間は脆くなる
プーチンを見ていて、家畜化(そして去勢)された動物が、野生の捕食動物に勝てる見込みはないと気づいた。1ミリたりとも。軍事力なんて忘れていい。重要なのは先に引き金を引くことなのだ
倫理的な選択をするには、個(友人、家族)と全体とのあいだでジレンマを抱えていてはいけない
社会をより平等にするには、富裕層に身銭を切らせ、所得上位1パーセントから脱落するリスクを背負わせなければならない
「リンディ的」なものとは、逆向きに歳を取るものを指す。つまり、生存を前提条件として、時がたつごとに余命が長くなるものを指す
勇気とは、自分自身より上の層の生存のため、自分自身の幸福を犠牲にすることである
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本書は、自分の意思決定の精度を上げるためにも、身銭を切らないで言説を述べるエセ知識人から自分を守るためにも、役立つ内容です。
個人的には、マーケティングに役立つ「少数決原理」の考え方が、新鮮で役に立ちました。この視点でビジネスや政策を考えてみると、面白い視点が見つかりそうです。
表紙まわりのメッセージは完全に個人に向けられていますが、制度を作る側にとっても、役立つ内容です。
著者が「巨大農業企業」や、米国の金融業界を敵に回してまで書いた力作です。
ぜひ、読んでみてください。
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『身銭を切れ』ナシーム・ニコラス・タレブ・著 ダイヤモンド社
<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆
第1部 「身銭を切る」とは何か
プロローグその1 アンタイオス、殺(や)られる
プロローグその2 対称性の簡単なおさらい
プロローグその3 『インケルトー』の肋骨
第2部 エージェンシー問題入門編
第1章 自分で捕まえた亀は自分で食べよ──不確実性に関する平等
第3部 例のこの上ない非対称性
第2章 もっとも不寛容な者が勝つ──頑固な少数派の支配
第4部 犬に紛れたオオカミ
第3章 合法的に他人(ひと)を支配するには
第4章 人に身銭を切らせる
第5部 生きるとはある種のリスクを冒すこと
第5章 シミュレーション装置のなかの人生
第6章 知的バカ
第7章 身銭を切ることと格差の関係
第8章 リンディという名の専門家
第6部 エージェンシー問題実践編
第9章 外科医は外科医っぽくないほうがいい
第10章 毒を盛られるのはいつだって金持ち──他者の選好について
第11章 不言実行
第12章 事実は正しいが、ニュースはフェイク
第13章 善の商品化
第14章 血もインクもない平和
第7部 宗教、信仰、そして身銭を切る
第15章 宗教を語るヤツは宗教をわかっていない
第16章 身銭を切らずして信仰なし
第17章 ローマ教皇は無神論者か?
第8部 リスクと合理性
第18章 合理性について合理的に考える
第19章 リスク・テイクのロジック
エピローグ リンディが教えてくれたこと
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