【文化資本による格差とは?】
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本日ご紹介する一冊は、16万1千人が参加した、「英国階級調査」の内容と、その分析を書籍化した一冊。
昔から、お金持ち分析や格差を論じた本は売れるものですが、本書はイギリスの調査ながら、現代における「新しい階級」の存在を提示しており、決して無視できない内容です。
特に、「経済資本」に偏ることなく、「文化資本」「社会関係資本」にも言及した点が新しい。最近アートが注目されていますが、関心がなかった人もこれを読めば、アートが階級格差を埋める重要な役割を果たしていることがわかると思います。
本書で提示している「7つの階級」は以下の7つですが、本書ではこの詳細と、何が階級差を生んでいるのか、という本質に迫ります。
・エリート
・確立した中流階級
・新富裕労働者
・技術系中流階級
・伝統的労働者階級
・新興サービス労働者
・プレカリアート
どの大学に入るのか、どこに住むのか、誰と付き合うのか、どんな趣味を持つのか…。
階級を形成する、あらゆる要素に言及しており、これは必読の内容だと思います。
さっそく内容をチェックしてみましょう。
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新しいスノビズムは、「知っている(事情通、物知り)」が根底にある。それによって階級を分類し区別してきたさまざまな行動規範を意識し、誇示するのだ
ブルデューは、階級の特権は、彼の言う「資本」にアクセスできることに深く結びついていると考えていた。この「資本」を、彼は「将来にわたって先取できる諸権利」を持つことと定義した。あるグループの人々はある種の資源によって、今後も継続的に繁栄することができる
ブルデューは経済資本以外にも継承されているものがあると主張した。そのひとつは、学歴の形をとった文化資本と関連する。高学歴の親たちは、意識的であるかどうかはともかく、子どもに学校や大学で良い成績をおさめる能力を伝える。それによって良い仕事を得るための資格を手に入れるのだ
文化資本の性質が変化し、国際的で風刺的な形をとり、多元的で反エリート主義的になっている
本人の若い頃からの継続的な努力だけではなく、親からの援助の有無の重要性が増している
こんにち、住宅資産を持つ者と持たざる者の間に大きな格差が生じている
年収20万ポンドを超える超富裕層では知り合いに貴族がいる割合が38%で、他の層より顕著に高い
こんにちの文化資本は2つの種類に分裂している。「高尚」な文化資本と「新興」の文化資本である
新興文化資本の本質は、ポップカルチャーが好きだというそのこと自体ではない。むしろ、さまざまな選択肢からクールなアーティストや作品を巧みに選び出す技量を証明することであり、ポップカルチャーの中の「最上級」を見つけ出す鑑識眼を披歴することなのだ
高所得層には地位の高い職業の知人が多数いる可能性が高い
親が社会的地位の高い職業である場合、エリートグループの職業の知人の数は顕著に増える。親が「専門職や経営職」の人々には、エリートグループの8つの職業のうち異なる職業の知人が3人以上いるが、親が「定型労働、半定型労働」の場合は平均1・5人未満だ
◆7つの階級
・エリート 人口の6% すべての資本を多く持つ
・確立した中流階級 人口の25% エリートの次に3つの資本が多い
・技術系中流階級 人口の6% 比較的裕福で、社会関係資本が少ない
・新富裕労働者 人口の15% 比較的裕福で、文化資本が少ない
・伝統的労働者階級 人口の14% 3資本どれも少ないがバランスはいい
・新興サービス労働者 人口の19% 若く貧しいが2つの資本は豊か
・プレカリアート 人口の15% すべての資本に恵まれない
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格差固定については、いろいろな本で論じられていますが、本書は「文化資本」「社会関係資本」の影響力を掘り下げた点で、類書とは一線を画しています。
何も「経済資本」を持たない人間がどうやって階級を上げていけばいいのか、重要なヒントが示されています。
ぜひ、読んでみてください。
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『7つの階級 英国階級調査報告』マイク・サヴィジ・著
舩山むつみ・訳 東洋経済新報社
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◆目次◆
序 論 英国階級調査に見る現代の階級
第1部 社会階級のヒストリー
第1章 階級の境界線はどこか─中流階級と労働者階級の違い
第2部 資本の蓄積と社会階級
第2章 社会階級と経済資本
第3章 高尚な文化資本と新興文化資本
第4章 社会関係資本─ネットワークとつながり
第5章 新しい階級社会─資本の相互作用
第3部 社会流動性
第6章 人生の山を登る─社会流動性の探求
第7章 大学間の格差─高等教育と能力主義
第8章 階級と地域格差
第4部 21世紀イギリスの階級格差
第9章 頂上からの眺め─こんにちのエリート
第10章 もがき苦しむプレカリアート─見えない人々
第11章 階級意識と新しいスノビズム
結 論 21世紀の階級の政治
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