【閉塞感を打ち破る対話の技術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4910063013
本日ご紹介する一冊は、「NewsPicksパブリッシング」創刊一発目の企画。
既に幻冬舎から「NewsPicks Book」レーベルが立ち上がっているので、レーベル自体の新鮮味はありませんが、一発目だけに力の入った内容となっています。
テーマは、「対話」「ナラティブ・アプローチ」。
正直、「なんでこんな地味なテーマが創刊一発目に…」と思っていたのですが、読んでみて、腑に落ちました。
ここ十数年間のビジネス書は、いわゆる「スキル」「ノウハウ」に属するものが多かったのですが、われわれの社会や組織には、スキル、ノウハウでは絶対に解けないものがある。
これを、ハーバード・ケネディ・スクールのロナルド・ハイフェッツは「適応課題」と名付け、既存の方法で解決できる「技術的問題」とは異なると論じました。(本書4P)
この「適応課題」を解くには、「対話」がカギ。対話とは、本書いわく、「新しい関係性を構築すること」です。
なるほど、最先端の知識を提供し続けるNewsPicksが一冊目に選んだ理由がわかる気がします。
どんな問題を解決するにしても、当事者には「対話」の技術が必要。そこでポイントとなるのが、本書で紹介する「ナラティブ・アプローチ」です。
どうすれば、相手と自分との間にある「溝」に気づけるか。どうすれば溝に橋を架けられるか。
興味深い議論が展開されています。
さっそく内容をチェックしてみましょう。
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私たちの眼前にはたくさんの「武器」があり、戦術や戦略があります。それらの武器でなぎ倒されたあとに残るのは、一筋縄では解決できない組織の壁や政治、文化、監修などでがんじがらめになった「都合の悪い問題」ばかりです
対話について重要な概念を提示した、哲学者のマルティン・ブーバーは、人間同士の関係性を大きく2つに分類しました。ひとつは「私とそれ」の関係性であり、もうひとつは「私とあなた」の関係性です。「私とそれ」は人間でありながら、向き合う相手を自分の「道具」のようにとらえる関係性のことです
対話とは、権限や立場と関係なく誰にでも、自分の中に相手を見出すこと、相手の中に自分を見出すことで、双方向にお互いを受け入れ合っていくことを意味します
ポイントは、どちらのナラティブが正しいということではなく、それぞれの立場におけるナラティブがあるということです。つまりナラティブとは、視点の違いにとどまらず、その人たちが置かれている環境における「一般常識」のようなものです
◆「溝に橋を架ける」ための4つのステップ
1.準備「溝に気づく」
相手と自分のナラティブに溝(適応課題)があることに気づく
2.観察「溝の向こうを眺める」
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティブを探る
3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る
4.介入「溝に橋を架ける」
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く
自分のナラティブを脇に置き、相手との間に気づき始めたときが、「私とそれ」の関係から、「私とあなた」という固有の関係に少し変化をした瞬間です
じっくりと相手や相手の周囲を「観察」してみましょう。相手にはどんなプレッシャーがかかっているか、相手にはどんな責任があるか、相手にはどんな仕事上の関心があるか、それはなぜか、など、いくつもの気づきが得られると思います
観察することで、相手のナラティブを把握できれば、自分の言っていること、やろうとしていることが、相手にとって意味のあるものとして受け入れられるために必要なポイントが見えてくるはずです
会社の中には何かをやるためのリソースが実はたくさんある(中略)リソースがないように見えるのは、実は、こちら側が相手を解釈するナラティブが硬直化していたから
一度、反対側のナラティブの中に来てもらい、そこから自分のナラティブを眺めてもらう
部下が仕事のナラティブにおいて主人公になれるように助けるのが上司の役割
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著者は学者ですが、「対話」に興味を持ったきっかけは、父親が零細企業の経営者をしていたことだったそうです。(父親の死後、借金整理などで相当な苦労をしたようです)
そのため本書も、いわゆる学者の机上の空論ではなく、現場感覚にあふれたものとなっており、マネジメント、交渉、営業などの仕事に直接役立つ内容となっています。
他社とコラボして大きくビジネスを展開したい中小零細企業の経営者、社内リソースを活用して大きな仕事をしたい大企業のビジネスパーソンに、おすすめしたい内容。
これはぜひ、読んでみてください。
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『他者と働く』宇田川元一・著 NewsPicksパブリッシング
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4910063013/
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◆目次◆
はじめに 正しい知識はなぜ実践できないのか
第1章 組織の厄介な問題は「合理的」に起きている
第2章 ナラティヴの溝を渡るための4つのプロセス
第3章 実践1.総論賛成・各論反対の溝に挑む
第4章 実践2.正論の届かない溝に挑む
第5章 実践3.権力が生み出す溝に挑む
第6章 対話を阻む5つの罠
第7章 ナラティヴの限界の先にあるもの
おわりに 父について、あるいは私たちについて
謝辞
参考文献
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