2019年4月8日

『日本人の勝算』デービッド・アトキンソン・著 vol.5251

【アトキンソン氏、日本の大逆転の策を語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492396462

経済状況と政策がちぐはぐ、いまだに古い時代の幻想で経営されている、泥沼のわが国ニッポンですが、一筋の光明となる一冊を発見しました。

本日ご紹介する一冊は、元ゴールドマン・サックス金融調査室長で、日本在住30年のデービッド・アトキンソンさんが、これからの日本の「勝算」について述べた一冊。

ここまで追い込まれた日本に勝算などあるのか、と思いながら読んだのですが、なるほどこれなら行ける気がします。

著者はこの日本の危機を救うべく、最終的に118人の外国人エコノミストの論文やレポートに目を通したらしく、本書にはその結果導かれた、日本の「勝機」がまとめられています。

量的緩和幻想からの脱却、「いいものをより安く」からの脱却、高付加価値・高所得経済への転換…。

なかでも衝撃は、企業規模に関する分析でしょう。ここまで証拠を並べられたら、低生産性の主な原因は中小企業であると認めざるを得ません。

輸出の拡大、企業規模の拡大、女性の活用、最低賃金の引き上げ…。

当然の帰結として導かれるこれらの論点は、じつはそれぞれがリンクし合っているのであり、今後、政策や経営を考える上で、見逃せない視点だと思います。

十数年、中小企業を経営し、中小企業を支援するコンテンツも作ってきましたが、今後は変更を迫られると痛感しました。
(念のため、弊社は生産性が高く、海外からもお金を引っ張ってきていることを申し上げておきます)

読者が政治家であれ、経営者であれ、サラリーマンであれ、この事実は全国民が知っておきたいところ。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

———————————————–

日本の輸出総額はたしかに大きいのですが、人口8200万人のドイツの輸出額は日本の約2倍です

Intermediate商品の輸入は、生産性向上との相関が強い

中間財を世界の先進国に輸出しているということは、日本がそれらの国の生産性向上に大きく貢献していることになる

日本の生産性が低い最大の原因の1つが、小規模企業に勤める労働者の多さ

規模が大きくなると設備が充実することが、生産性の違いの原因

生産性と女性活躍との間にも、強い相関関係があることが確認されています。相関係数は0.77です。(中略)生産性は1人当たりのGDP(GDP/人口)です。国民の半分を占める女性は、働いても働かなくても分母にカウントされます。(中略)女性が働けば、その分だけ分子が膨らむので、国全体の生産性が高くなります

規模が大きい企業が多くなれば、フレキシブルな働き方に対応しやすくなります。その結果、女性の活躍の場が増えて、生産性の向上につながるのです

企業統合は社員の給料を上げる

統合によって減るのは、社長のイスというポストだけです。小さな企業を守るというのは、実は労働者ではなく社長を守っていること

どの国を見ても、最低賃金引き上げの恩恵をもっとも受けるのは女性です。なぜなら、最低賃金で働いている比率は、男性より女性のほうが圧倒的に高い傾向にあるからです

まずは、仕事や雇用に関する情報が完全ではないこと。労働者は自分の市場価格を把握していないので、より高い収入を得る可能性を活かすことができません。そのため、市場の効率性が損なわれる

世界的に見ても、40代はもっとも生産性が高い世代で、その世代の人口が増えると生産性が上がりやすくなると言われています。日本ではこれからこの世代が減るので、対策を打たないと、次第に生産性向上に対するマイナスの圧力がかかります

最低賃金は1人当たりGDPの50%が妥当であることが、世界的な共通認識

日本の最低賃金は現在、1人当たりGDPの34.9%。これは先進国の中で最低クラスです。アメリカは約26%ですが、欧州は約50%

今の日本経済は、国民の能力にふさわしい給与を払う構造にはなっていません。人材の評価は世界第4位なのに生産性は第28位ですから、日本の労働者は世界一搾取されている状況にあります

Entrepreneurismと生産性の間の相関係数は0.91と、きわめて強い関係がある

———————————————–

日本の課題と、これからの採るべき方策が理詰めでよくわかる内容。

誰かがアマゾンのカスタマーレビューに書いていましたが、これは全国民必読の内容でしょう。

中小企業を大企業に統合していくこと、最低賃金の引き上げ、輸出の強化、女性の活躍…。

やることはたくさんありますが、やれば確実に成果が出そうです。

政治家、官僚、経営者は、必読の内容。ビジネスパーソンも、これを読んでから、就職やキャリアを考えると良いと思います。

超オススメの一冊です。

———————————————–

『日本人の勝算』デービッド・アトキンソン・著 東洋経済新報社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492396462/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07LFSHW9V/

———————————————–

◆目次◆

第1章 人口減少を直視せよ 今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ 「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ 日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ 「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ 「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ 日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ 「大人の学び」は制度で増やせる

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー