2011年2月23日

『人生を励ます太宰治の言葉』童門冬二・著 vol.2408

【人生を励ます太宰治の言葉】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4884749111

本日の一冊は、東京都庁にて知事秘書、広報室長、企画調整局長、政務室長などを歴任後、作家として活躍し、第43回芥川賞の候補にもなった童門冬二さんが、太宰治の言葉をまとめた一冊。

最近は、『超訳ニーチェの言葉』をはじめ、名言集が売れているのですが、先行き不透明な時代に、偉人から教えを学びたい、それも時間をかけずに、というのが売れている理由でしょう。

※参考:『超訳ニーチェの言葉』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/488759786X

この『人生を励ます太宰治の言葉』も、あの暗い、不幸な太宰治がどうやって精神の安定を保っていたのか、どんな考え方で生きていたのか、その生命力の源を感じ取れる一冊です。

残念ながらここまで暗い時代になってしまうと、成功したビジネスマンの教えより、絶望を味わった太宰治の方に耳を傾けたくなる、というのが人情。

本書は、太宰作品のなかから、著者が励まされた文章、名言を紹介・解説したもので、現代人へのメッセージがたくさん詰まっています。

解説にもいい言葉が入っているので、赤ペンチェックは<>が太宰の言葉、それ以外が著者の言葉ということでまとめています。

ちょっと太宰ファンである著者の思い入れが強すぎる感があるのと、作品鑑賞部分が多過ぎてタイトルと趣旨がずれているのが残念ですが、太宰ファンであれば、きっと読み解けるはずです。

ぜひチェックしてみてください。

なお、個人的には、マニアックですがキルケゴールの本なども出て欲しいと思っています。

出版社のみなさま、ぜひご検討ください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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<極めてあたりまえの歩調でまっすぐに歩いて行こう。この道は、どこへつづいているのか。それは、伸びて行く植物の蔓に聞いたほうがよい。蔓は答えるだろう。「私はなんにも知りません。しかし、伸びて行く方向に陽が当たるようです」>

<神に問う。無垢の信頼は罪なりや。>

「悪いところがひとつあるから、全面的に許せない」というような、短兵急で偏った人間の見方を、いつの頃からかわたしはやめてしまった

昔の人が、「金がなくなると、世の中は理屈が多くなる」といった。うまい指摘だ。今の日本はまさにその通りだ

<自分は、修身教科書的な正義とか何とかいう道徳には、あまり関心を持てないのです。自分には、あざむき合っていながら、清く明るく朗らかに生きている、或いは生き得る自信を持っているみたいな人間が難解なのです>

<「生活とは何ですか。」「わびしさを堪えることです。」>

<弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。傷つけられないうちに、早く、このまま、わかれたいとあせり、れいのお道化の煙幕を張りめぐらすのでした>

<日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ>

<覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ>

<全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん>

<学問を生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!>

<よいか? 金銭の取りあつかいには気をつけるのですよ。借りても駄目。貸しても駄目>

<三両の会費であったら、五両。五両の会費であったら十両、置いてさっと引き上げるのが、いい男です>

<酒の席に於いては、いかなる約束もせぬ事>

<大人とは、裏切られた青年の姿である>

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『人生を励ます太宰治の言葉』童門冬二・著 致知出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4884749111

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◆目次◆

I 道化者の苦悩
II 美しい水脈
III 善い心の発見

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