【3000億円の巨大市場を築いた起業家たち】
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本日ご紹介する一冊は、3000億円の巨大市場を築いた「メルカリ」を追った、ドキュメンタリー。
著者は、日経新聞の編集委員で、2010年から2014年に米シリコンバレー支局でITやスタートアップを取材した奥平和行さんです。
本書では、現在注目を集める「メルカリ」の立ち上げから現在に至るまでの変遷を追っており、いわゆる「起業モノ」の臨場感あふれる内容となっています。
3人の創業者、山田進太郎氏と富島寛氏、石塚亮氏の出会い、資金調達やトラブルに追われながらも、外部から優秀なスタッフを巻き込んで成長していく過程が詳細に書かれており、ワクワクします。
変化の激しい今日の市場で成功を収めるための唯一絶対の法則は、「優秀な人間に本気で働いてもらうこと」だと思っていますが、メルカリはまさにその見本と言っていいと思います。
なぜこのプラットフォームに、優秀な人材が可能性を感じるのか、彼らはなぜ参画を決めたのか。
その動機を読むだけでも、今後のビジネスの参考になると思います。
いわゆるノウハウを書いた本ではありませんし、いかにも新聞記者らしい事実中心の淡々とした記述ですが、それだけにスリリングな読み物に仕上がっているとも言えます。
正直、赤ペンチェック的に取り上げられる本ではないのですが、本書から、気になった部分をチェックしてみましょう。
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スタートアップ企業の経営者は、預金通帳の残高が減っていく恐怖との戦いを余儀なくされる。メルカリはどうにか残高がゼロになる前にサービスを始められた幸運な一社だが、初日のダウンロード数はわずか400だった。
2015年6月の国内におけるアプリの累計ダウンロード数は1700万だったが、一年後には3300万、さらに翌年は5500万に増えている。新規上場の直前には7100万に達し、やや乱暴な言い方だが「ひとりで複数のアカウントを持っている」といったケースを無視すれば、日本国民の半分以上が使ったアプリになる。
これまでマーケティングは究極的には「いかに新品を売るか」がテーマだったはずだ。だが、慶応義塾大学のビジネス・スクールでマーケティングを教える准教授の山本晶は驚きを込めて語る。「再販を前提にきれいに使ったり、購入時のタグを捨てずにとっておいたりといった行動が広がってきた。『どう利用するか』『どう廃棄するか』が重要になり、常識が変わるかもしれない」
一度エグジットを経験した起業家であれば、なおさら格好悪い失敗は避けたいと思うはずだ。だが、山田は違っていた。「世界で使われるインターネットサービスを創る」ことのハードルは決して低くない。すぐに成功する確率は高くないが、何度か打席に立てばホームランが打てるかもしれない。
この時点では多くのエンジニアはまだ「本業」を持っており、すぐにコウゾウにかかりきりになるわけにはいかなかった。比較的自由に動くことができるのは平日の夜間と週末となる。だが、このままでは十分な時間を確保できない。困った山田と富島は一計を案じ、“奇策”を思いついた。皆が休みの週末に働けばいい──。
「特にこの世界は先に出した者が勝つ」「一秒でも早く出したい」──。宮上は社内ではこんな話がよく交わされていたのを覚えている。そのために、アプリのデザインでは基本ソフト(OS)の定めているベーシックなデザインを極力生かし、手を加える部分をなるべく少なくした。メルカリのアプリの背景がレモン色を基調としているのも、色を付ける手間を省くためだ。
◆宮上の「しまむら理論」
宮上は頑として譲らない。宮上は自分の主張を貫き、「小さな子どもを持つ地方に住む主婦が意識せずに使える」という基本線から外れることはなかった。
ラーゲリンが日本に住む17歳の長女に意見を求めると、メルカリを頻繁に使っていて機能にも詳しかった。「パパがフェイスブックではなくメルカリで働いたらどうかな」。こう尋ねると「一番必要とされているところで働くのはいいと思う」と答えた。(中略)「メルカリ、元フェイスブックVPのジョン・ラーゲリンがマネジメントチームに参画」──。
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本書を読んで感じたのは、起業は志と縁、そして不屈の精神が大事なのだということ。(あと、楽観的なことも!)
幾多の困難を乗り越え、まだその過程にいる「メルカリ」を追った本書は、下手なサクセスストーリーよりもずっとスタートアップのリアルを伝えてくれます。
株に関しては、絶賛下落中の企業ですから、様子見が必要ですが、面白い会社だと思っています。
ぜひ、読んでみてください。
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『メルカリ』奥平和行・著 日経BP社
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822289508/
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◆目次◆
プロローグ
1 誤算
2 再起動
3 唯一無二
4 急げ!
5 焦る理由
6 逆転
7 求心力
8 アメリカ
9 青いメルカリ
10 成長痛
11 テックカンパニー
12 プラットフォーム
エピローグ
あとがき
参考資料
フリマアプリの歴史
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