2018年3月7日

『半分生きて、半分死んでいる』養老孟司・著 vol.4977

【知性炸裂。養老孟司の痛快な視点】
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本日ご紹介する一冊は、売れ行き好調な養老孟司さんの新書。

もともと雑誌「Voice」に連載していた文章をまとめ、連載の終了にあたって書いた「『平成』を振り返る」、さらに全体の総論を付け加えて一冊にしたものです。

内容は、「養老孟司 独演会」といった内容で、率直なモノ言いで現代社会への批判を繰り出しています。

なぜ現代が「煮詰まりやすい」時代なのか、今起こりつつある情報化や都市化、AIがどのような意味を持っているのか、なぜ豊かさが増えなくなったのか、現代人が漠然と抱く疑問を、一気に解決してくれる、強烈な論考です。

・「もの」は騙せない
・一般化が不幸を生む
・統計を信じない
・言葉を信じない
・コンピュータが取って代わるのは人の意識活動
・人生とは自分で何かをすることであって、おしゃべりで済ませる
 ことではない

言葉だけを見てもわからないものもあると思いますが、これらが現代人の悩みの根幹であることが、本文を読めばよくわかります。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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物理学者のリチャード・ファインマンは述べたという。「技術が成功するためには、体面よりも現実が優先されなければならない、なぜなら自然は騙しおおせないからだ」。そうなんです。自然つまり「もの」は騙せないんですよ

社会脳の判断は「もの」に関する判断では、非社会脳に比較して誤りを犯しやすいはず

一般化が不幸を生む

私は統計を信じていない。統計には統計の論理があって、それはべつに万事を説明するものではない

わかりやすいというのは、自分の頭に入りやすいということで、じゃあ世界は自分の頭に入るようにできているかと反省したら、そんなはずはない、とわかるはずである

私は言葉を信用していない。言葉で動くのは人で、自然やモノは動かない(中略)言葉を信じないなら、何を信じればいいのだ。「すること」に決まっている

実情から見れば意識はあなた任せ、つまり従僕だが、意識自体はそう思っていない。自分が主人公だと思っている。だから実の主人のことは思いもしない。じゃあ、誰が主人なのだ。体に決まっている

ヴィクトール・フランクルの言葉がある。「人生の意義は自分の中にはない」自分が死んでも、自分は困らない。困る自分がいなくなるからである。それなら逆に、人生とは世のため、人のためではないのか

コンピュータが取って代わるのは、身体ではない。人の意識活動である。都市とは、意識活動の成果である。その世界がコンピュータで置き換えられるのは、ごく自然である

人生とはそういうものである。自分で何かをすることであって、おしゃべりで済ませることではない

金融経済のように、お金を使う権利の移動ではなく、生活が豊かになる意味での実体経済が飽和した。生活が豊かになるのは、自然からの収奪以外にありえない。エネルギーや食糧を考えればわかる。お金に目を奪われると、それが見えなくなる。お金は単に使う権利だから、それ自体は何も生み出さない

もはや問題は言うことではない。することではないか

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いかに都市に住む現代人が意識優位の生き方をしているのか、その弊害も含め、よくわかりました。

土井がギリシャ、山口を求めたのは、身体の必然だったのですね。

われわれが今、自分自身をシステムに組み込もうとしているわけですが、一度立ち止まって、考えた方がいいかもしれません。

なぜかというと、それは人間、もっと言うと人間の主人である「身体」の論理ではないからです。

IT関係の方々、政治に関わる方々には、特に熟読して議論に活かしていただきたい、そんな一冊です。

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『半分生きて、半分死んでいる』養老孟司・著 PHP研究所

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◆目次◆

第一章 どん底に落ちたら、掘れ
第二章 社会脳と非社会脳の相克
第三章 口だけで大臣をやっているから、口だけで首になる
第四章 半分生きて、半分死んでいる
第五章 「平成」を振り返る
総論──あとがきに代えて

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