【「大爆笑」の人生訓】
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何となくふらっと寿司を食べに、小倉に来ています。そのおかげで、また新たな出会いがたくさんありました。
「でたらめ」と「ランダム」は、ほぼ同じ意味なのに、受ける印象が随分違います。
本日ご紹介する一冊は、ランダムな生き方でライターとして独自のポジションを手に入れた、高野秀行さんによる生き方指南書。
2010年に出され、ほとんど何の反響もなく、売れ行きもさっぱりだったという同名の書を新書化したもので、著者自身が、「はじめに」で「いったい何回間違えれば気が済むのか」とツッコミを入れています。
「はじめに」もそうですし、「わかりやすい年表」もそうですが、この著者、生き方がでたらめ…いやランダム過ぎる。
幻獣ムベンベ探し、麻薬戦争たけなわの南米コロンビアで先住民の使う幻の幻覚剤を探す、未知動物「野人」探しなど、無茶苦茶な探検エピソードに、読書中大爆笑しっぱなしでした。
しかしながら、その一見ランダムな行動の裏に、確固とした「偶然を呼ぶ戦略」があるのが、著者の良いところ。
型にはまった生き方で路頭に迷ってしまった方は、笑いながら生き方のヒントが得られると思います。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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他人のやらないことは無意味でもやる
危険なスキューバケイビングだが、我らが佐藤さんはもっと上を行っていた。素潜りをしたのだ。奥多摩の洞窟に潜ったとき、水路でつながっているとおぼしき地底湖が二つあった。測量すると、地底湖Aから地底湖Bまで直線距離でだいたい十メートルくらい。つながっているのか、別の水路なのか、意見が分かれたのだが、「自分で潜ればわかるだろ」と佐藤さんは言った(中略)佐藤さんは躊躇なく地底湖Aに飛び込み、結果的にだが、首尾よく地底湖Bに顔を出した。彼は細い紐を携えており、測ってみると、約十三メートルあった。これが無酸素地底湖潜水日本記録の一部始終だ。読者の方の誰一人としてこんな記録は聞いたことがないと思う。なぜなら、そんなことに価値を置く人はいないからだ(中略)誰もやろうとしなかったことをやりとげた。でも無意味だった……。私はこの現場に
いなかったのだが、話を聞いたとき、あまりの凄さに戦慄を覚えた
「アリ神話」が信じられなくなると、いちばんバカバカしいのは「就職」だった(中略)誰に訊いても「いいこと」というのは「給料が上がる」と「管理職に出世」くらいしかわからない。あとは退職金が高いとか年金の額がちがうとか。どうでもいいことばかりだ
「逆出稼ぎ作戦」という私のヴィジョンはといえば、まったく実現しなかった。編集者としょっちゅう顔を合わせて話をしていないと、仕事なんかもらえないのだ。所詮ヴィジョンなんて「絵に描いた餅」だった。だから今、思う。やっぱり長期スパンで考えても意味ないんだな、と
なぜ夢やロマンという言葉を使いたくないか。それは目標を遠ざけるネガティブな言葉だからだ。たとえば、「インドの謎の怪魚ウモッカ」というものがいる。「それを探すのが夢」と誰かが言った場合、その人はなかなか探しに行かないだろう。たぶん、一生行かないんじゃないか
結局のところ、怪しい人についていくと、たいていは痛い目に遭うが、ときには素晴らしい幸運に出会うこともある。それを前もって知ることはできない。だから、怪しい人に誘われたら、とりあえずついていくしかないのである
「やりすぎ」からアイデンティティが生まれる
ともあれ、コンゴは政府の公用語がフランス語だ。怪獣探査の許可申請もすべてフランス語でやらねばならない。ここでたいていの日本人は諦めるだろう。「フランス語じゃ無理だ」と。まさにそこが狙い目なのである。だから私は京王線の車内で見つけたフランス人に頼み込み、フランス語をせっせと習った。奇襲には労を厭わない性格なのである
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自分も結構ランダムな人間だと思っていましたが、本書を読んで、まだまだだと反省させられました。
ここまで破天荒な生き方はできないにしても、ちょっと刺激を受けるだけで、人生が一変すると思います。
こんなに笑わせてくれた人生指南書は、ひさびさです。
みなさんもぜひ、読んでみてください。
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『間違う力』高野秀行・著 KADOKAWA
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◆目次◆
はじめに
高野秀行のわかりやすい年表
第1条 他人のやらないことは無意味でもやる
第2条 長期スパンで物事を考えない
第3条 合理的に奇跡を狙う
第4条 他人の非常識な言い分を聞く
第5条 身近にあるものを無理やりでも利用する
第6条 怪しい人にはついていく
第7条 過ぎたるは及ばざるよりずっといい
第8条 楽をするためには努力を惜しまない
第9条 奇襲に頼る
第10条 一流より二流をめざす
おわりに
新書版あとがき
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