2017年8月13日

『忍者「負けない心」の秘密』小森照久・著 vol.4771

【忍者に学ぶ精神力】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413096746

本日は、忍者に「負けない心」を学ぶという、一風変わった書籍をご紹介します。

著者は、三重大学医学部を卒業した精神科専門医で、現在、三重大学大学院医学系研究科ストレス健康科学分野教授の小森照久さん。

著者によると、三重大学は大真面目に忍者研究をしているらしく、本書もその成果を踏まえて書かれています。

また、江戸時代になって作られた秘伝書『万川集海(まんせんしゅうかい)』と『正忍記(しょうにんき)』からの教えも紹介されており、忍者の思想や行動規範を知ることができます。

今は、ビジネスの世界でも「マインドフルネス」が流行っていますが、本書は精神科医が忍者から「負けない心」を学ぶという、じつにユニークな内容。

しくじれば死、という過酷な任務をこなし続けた忍者の教えを読めば、ストレスフルな環境で働くビジネスパーソンも、きっと救われるはずです。

世間の認識とはかけ離れた忍者の実態も、興味深く読めました。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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最も重要な任務は相手の情報を獲得し、それを持ち帰ることでした。したがって、一番大切なことは、「生きて、生きて、生き抜くこと」だとされていました。そのために、決して命を落とさないように、戦いを避け、逃げることを恥としないことが説かれています

忍者の平均寿命は高く、生涯現役の人も多かったようです。医学博士で古武術や忍者に詳しい中島篤巳氏は、忍術を自立した「総合生活術」ととらえました。忍者が行っていることは有酸素運動をして腹八分目、栄養バランスや漢方薬の使用と、当時でも健康レベルがずば抜けていました

名を重んじる武士道とは基本の部分で違っています。武士道は家を守ることを重んじるのに対して、忍者はきわめて内省的であり、自らの使命を最優先に考えた強い意志があります

自分の名を残すことに躍起になる必要がなければ、本来やるべきことに力を注ぎ、厳しい環境にあっても穏やかに過ごしていける

忍者は「放下着(ほうげちゃく)」という禅の考え方をとりいれていました。放下とは捨てるという意味で、着は強調の「!」に相当し、「捨ててしまえ!」ということです。何を捨てるかというと、物事への執着心です(中略)忍者は生き抜くことが最優先ですから、何かにこだわっていてはいけないのです

忍術書の『万川集海』には、恐れ、侮り、考えすぎは忍者の三病だと書かれていて、恐れは臆病者が、侮りは慢心者が、考えすぎは頭のいい者が陥りやすいとされています

虚実転換は忍術の重要な技で、総じて生き抜くために逃げる技です。ウソとホントを入れ替える、有るものを無いように見せる、無いものを有るように見せる、大きなものを小さく、小さいものを大きく見せるなどです

忍者は「五車の術」という技を使って思い通りに人を動かします。迷信などを広めて恐怖心をあおり、敵の戦意を消失させる「恐車の術」、相手をほめそやしてご機嫌を取り、隙を狙う「喜車の術」、わざと相手を怒らせることで動揺を誘い、隙をつく「怒車の術」、相手の羨望心を誘い、羨ましがらせることで寝返らせる「楽車の術」、相手の同情を誘う「哀車の術」です

忍術を含め武芸一般では「二星之目付(にせいのめつけ)」ということがよく行われます。二星とは2つの目のことで、相手の肩や手を見ます。相手に心を読まれず、相手の動きに対応しやすいのです

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興味深かったのは、名を重んじる武士道と忍者では、思想の根本が違う、と述べられた部分。

<自分の名を残すことに躍起になる必要がなければ、本来やるべきことに力を注ぎ、厳しい環境にあっても穏やかに過ごしていける>という指摘は、ごもっともだと思います。

みんなが目立ちたがる時代に、あえて逆張りで読むと、いろいろと発見があると思います。

ぜひチェックしてみてください。

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『忍者「負けない心」の秘密』小森照久・著 青春出版社

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◆目次◆

序章 忍びの者 覆面も手裏剣も使わなかった!? 明らかになる忍者の実態
第一章 忍びの「精神力」 不屈の精神が生まれた背景に迫る
第二章 忍びの「心理戦術」 任務遂行の鍵を握る、思い通りに人を動かす力
第三章 忍びの「心」を科学する 脳波で読み解く、動じない心とは?
第四章 忍びの「躰」 運動効率を最大限に高める、その体の使い方
第五章 忍びの「術」 生きのびるために──いざという時のサバイバル術
おわりに

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