【あっぱれ。】
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山口に行くようになってから、政治に興味が湧いてきました。
と言っても、政治の世界に行こうというのではありません。
ビジネスパーソンとして、人を動かす政治力を身に付けたい、ということです。
本日ご紹介する一冊は、人心掌握のための古典として名高い、中国古典『鬼谷子』のエッセンスを盛り込んだストーリー。
主人公は、新興の出版社「帝国パブリッシャーズ」に買収された老舗の小さな出版社「共和書房」に勤める張本儀一(チョウギ)。
合併直後でギスギスしている「共和帝国出版」のヒラ社員が、『鬼谷子』の教えを活かして会社を動かすという、「ダビデとゴリアテ」系のお話ですが、これがなかなか面白い。
『鬼谷子』の教えを実際の会話に応用するとこうなるのか、というのがよく見えて、理解が一気に深まりました。
トップを動かし、言質を取るためにどうするか。他人の嫉妬や反発を避けるためにどう振る舞うか。
まさに大人のための「政治力の教科書」です。
こんな設定を、文芸社に買われた草思社が出すというのがシュールですが、登場する会社や著者も、実在の人物を思わせる設定で、出版業界の人間には、2倍楽しめる内容です。
さっそく、いくつかポイントを見て行きましょう。
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人を動かす場合には、つねに自分を陰におくこと
「憶測はいらん。“疑”に基いて動けば、それだけで失敗のリスクが出てくる」
「人を動かすに、利用すべきものは二つある。一つは、おぬしも知っての通り、相手の“事”。相手の持つ狙いや目的じゃな(中略)で、もう一つ人を動かすのに利用すべきものが相手の心の反応パターンじゃ」
当てにならない言葉には、他に、なにかを恐れて言わされている「恐」、塞ぎ込むあまり本心を明かさない「憂」、怒りにまかせて言う「怒」、有頂天になっているときに言う「喜」というものがある
「『鬼谷子』曰く、『天下の目で見る者に見えないものはなく、天下の耳で聞く者に聞こえないものはなく、天下の心で考える者に知らないものはない』じゃ。人とのつながりさえあれば、どんな情報も自然と集まってくるものじゃ」
知らせるべきことは確実に周知する、知られてはいけないことは絶対に秘密にする。これを合わせて、すなわち“周密(しゅうみつ)”と言う。“周密”こそ、存在と滅びの門の開閉を操り、人を動かす『鬼谷子』の術の本質
『鬼谷子』は、(1)相手にへつらう「佞言(ねいげん)」、(2)知識をひけらかす「諛言(ゆげん)」、(3)断言調の「平言(へいげん)」、(4)相手を心配する様子の「威言」、(5)聞き役に回る「静言(せいげん)」という五種類の言葉を挙げ、得てして、こうした言葉を言う者には隠された狙いがあるとして注意をうながしている
「それは違うぞ。失敗の芽を予測できないこともある、とまで予測するのが『鬼谷子』の術なのじゃ。何度も言っておるように、陽があれば必ず陰があるのじゃ(中略)『鬼谷子』の術の使い手は、失敗に出合っても嘆くことなく、それに合わせて平然と動くだけなのじゃ。これぞ“転円”。『鬼谷子』の奥義じゃ(以下略)」
「『鬼谷子』の術において最も重要なのは、相手を説いて動かしたあとにいかに退くか。つまり、説くことで多少“陽”に出てしまった自分の身を、いかに再び“陰”に退かせるかなのじゃ。わしがおぬしとはじめて会ったときにも言ったな。『鬼谷子』の術とは、“陰”から人を動かす術だと」
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40代になった今、できれば陰に潜み、若手を動かして仕事をしたいと考えていますが、そんな折に、ピッタリの内容でした。
なかでも心に刺さったのは、以下の部分です。
「まず人から知られぬところで周到に準備すること。自分の狙いや謀(はかりごと)は決して人に知られぬこと。人を動かしていることを相手や周りに悟られぬこと。相手を動かしたらすぐに去ること」
本当にためになる内容ですので、『鬼谷子』を読んだことのない方は、ぜひ。
会社で人を動かすのに苦労している、社内政治でしくじりがち、という方には強力プッシュしたい、おすすめの一冊です。
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『今日からヒラ社員のオレが会社を動かします。』
高橋健太郎・著 草思社
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◆目次◆
プロローグ 鬼谷子の使い
第1章 人と現実を動かす、最強古典『鬼谷子』とは
第2章 いきなり人を動かすな、雑談で情報収集せよ
第3章 命取り! 動かすべき相手を間違うな
第4章 有利な「陣営」を見定め、安全地帯を確保せよ
第5章 相手の欲を利用して、動かさずに動かせ
第6章 誰が動かしているのか、知られずに去れ
エピローグ 鬼谷子の集い
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