2016年12月27日

『西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する』碓氷悟史・著 vol.4542

【注目の地方金融機関】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860639391

本日ご紹介する一冊は、数ある信用金庫のなかでもユニークな試みで業績を伸ばしている「西武信用金庫」のケーススタディ。

著者は、公認会計士で亜細亜大学名誉教授の碓氷悟史(うすい・さとし)さんです。

落合理事長就任前5年間より、就任後5年間で67億円当期純利益を増やしたという、西武信用金庫。

本書では、その秘密と、ユニークな取り組みを紹介しています。

このマイナス金利の時代にあえて預金金利を上げ、貸出金利を下げる。

また、倒産させると債権額の70%くらいが損失となり、助けるための費用は一般的には40%くらいで済むことから、決して倒産させないコンサルティングサービスを提供。そのために行内には38人の中小企業診断士資格保有者がいるという充実ぶり。

また、年齢による定年制の廃止により、大企業からの優秀な転職者を入行させることができており、倍率は100倍。定員100名のところに、何と2万人もの応募があるそうです。

とにかくユニークな試みで、まったく金融機関っぽくないところがすごい。

お客様のこと、そして数字のことを徹底的に考えると、ビジネスはこうも変わるのだと、驚かされました。

さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。

———————————————–

落合理事長就任前5年間の当期純利益の合計額は、207億円です。
就任後の5年間(2011年~2015年)の当期純利益の合計額は、274億円です。就任前5年間より67億円増加しました

落合哲学では、倒産させると債権額の70%くらいが損失となり、助けるための費用は一般的には40%くらいで済むことから、倒産させなければ30%儲かることになるため、倒産させないのです

落合理事長が最も気がかりなのは、「ほとんど金利がつかない現在の金利政策による国民の預金に対する不安、心配が増えること」と推測できます。そういうことから、2016年1月のマイナス金利導入に対して、長期預金の金利を引き上げるという戦略を素早く打ち出したわけです

平成28年(2016年)3月期の預貸率は、76.05%と、信用金庫業界の47%(平成27年(2015年)3月期基準)を大きく上回っています

現在(2016年6月)時点で、西武信用金庫に在籍している職員の中で中小企業診断士の資格を持っている従業員は、落合を含めて38人

まず、年齢による定年を廃止しました。なぜ、西武信用金庫は、100人の採用に対して2万人も応募するかというと、定年がないからです

掃除を担当する人たちにも期末賞与が支払われる

大手企業では45~50歳から退職を要請されますが、そういった人たちから、たとえばインターネットバンキングに必要な能力を持った人など、特にいままでの西武信用金庫のやり方では、育たなかった人材を採用しています

お客さまを健全な状態にすると西武信用金庫の経営力を高めることができるからです。貸出利率を下げて価格競争力を高めながら非価格競争力を高めていくために、お客さま支援センターというコンサル業務を行っています

元気のある企業に対しては、売上を上げたい企業に相手先を紹介するというものが一番多く、年間に4612件

元気がなくなってしまった企業に対しては、事業再生計画を351件作り、そのうち68件は専門家の力を借り、元気になったのが87件

融資だけでなく投資もしています

———————————————–

赤ペンチェックでは拾いませんでしたが、多くの金融機関が都心の店舗を撤退させているなか、西武信用金庫は、むしろ増やしているそうです。

その理由は、都下に住んでいる親たちの所得がやがて都内に済む子どもたちに移転される時がくるから。

徹底的に逆張り、かつ合理的な施策に、感銘を受けました。

ビジネスのヒントに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

———————————————–

『西武信用金庫はお客さまを絶対的に支援する』碓氷悟史・著 あさ出版

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860639391/

<楽天ブックスで購入する>
http://bit.ly/2iyDufg

———————————————–

◆目次◆

第1章 就任前後10年間のグラフからわかる!
    西武信用金庫のお客さまのすごさ
第2章 プロ経営者としての落合寛司誕生の原点
第3章 「年齢による定年制度の廃止」がもつ意味を考える
第4章 人事考課の快
第5章 西武信用金庫お客さま支援センター(総合コンサルバンク)への道
第6章 落合寛司の経営哲学
本書のまとめ

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー