【大企業の「大転換」とは?】
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「THE BIG PIVOT ビッグ・ピボット」=大転換。
いきなりそそられるタイトルですが、一体何が大転換するのか?
読んでみて、思わずハッとしました。
本書は、ますます自然資源が逼迫する世界で、企業がどう変わっていくべきか論じた、じつに刺激的な論考です。
著者は、ウィンストン・エコ・ストラテジーズ創設者のアンドリュー・S・ウィンストン氏。キンバリー・クラーク、HP、ユニリーバのサステイナビリティ・アドバイザリー・ボードのメンバーを務めるコンサルタントです。
本書によると、われわれがこれからビジネスをする世界は、「より暑く」「より稀少に」「よりオープンに」を迫られる世界。
異常気象が頻発し、資源が逼迫し、企業には否応なく透明性が求められる…。そんな時代に経営はどうあればいいのか、既に動き始めているグローバル企業は何をやって、どんな成果を収めているのか、じつに興味深い事例が盛り込まれています。
サプライチェーンの途中で何が起こっても耐えられる経営、なるべく希少資源に頼らない経営、制約から生み出される「異次元のイノベーション」…。なるほど、環境のことを考えることで、企業にはとんでもないイノベーションや画期的新商品がもたらされるのだということが、よくわかります。
「左折やめよう」キャンペーンを行ったUPS、水なしで服を染める「ドライダイ」技術を開発中のアディダス、トイレットペーパーの芯をなくしたキンバリー・クラーク…。
ざっと読むだけでも、未来の有望企業が見えてくる気がします。
企業が『ビッグ・ピボット=大転換』を実現するのに、何が必要なのか。さっそくポイントを見て行きましょう。
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あなたの会社は、サプライ・チェーンで起こるすべてのことに、責任を取る準備はできているだろうか?
異常気象が世界中でワースト記録を更新しており、何百万人もの人の生活に影響を与え、民間企業に大きな経済的打撃を与えるようになってきた
綿花の価格は、ここ一八カ月で三〇〇パーセント上昇した
コカ・コーラはトウモロコシ(コーンシロップは水の次に主要な炭酸飲料の原料である)の価格上昇により、利益に八億ドルの打撃を受けた
リチャード・ブランソン卿の言葉を借りれば、気候変動に取り組むことは「我々の世代にとって千載一遇のビジネスチャンスの一つである」
炭素削減が利益につながることを、企業が理解しつつある
中国経済は、世界のGDPの約一〇パーセントに相当する、と彼(投資会社GMOの創立者ジェレミー・グランサム)は指摘する。
それならば、中国経済はすべての資源の約一〇パーセントを必要とすると考えれば辻褄が合いそうだ。しかし実際は、いまや中国は世界の二五パーセントの大豆、四〇パーセント以上の鉄鋼やアルミ、そしてセメントの半分以上を消費しているのだ
最近シェアリング経済に登場したヤードルは、イーベイに似ているが、タダの製品を扱う。要らなくなった所持品を投稿すると、あなたのフェイスブックのネットワーク上の友達がそれをリクエストできるという仕組みで、もらう人は送料を払うのみ(そこからヤードルが手数料を取る)である
資源が逼迫した世界では、人々は長持ちし、その後友達や家族がまた使えるような製品を選ぶようになるだろう
「左折やめよう」は、UPSの配達トラックが、交差点を左折するときに交差点内で対向車を待ったり、信号でアイドリングしたりしなくてすむような[アメリカでは、右側通行なので、左折の際に待ち時間やアイドリングが発生する]あたらしい配達ルートをつくって、それを徹底させるためのキャッチフレーズであった
いよいよ足りなくなる世界では、経済におけるほとんどの投入資源が、基本的には値上がりに転じるなか、上がりつづけるコスト構造を管理することを迫られる
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これからの経営に示唆を与える、じつに素晴らしい論考でした。
なお、著者が提供している、PivotGoals.comというサイトがあって、これを見れば、グローバル企業の炭素削減の取り組みが一目瞭然です。
投資や就職・転職の参考資料として、ぜひ本書を併せてチェックしてみてください。
これはぜひおすすめしたい一冊です!
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『ビッグ・ピボット』アンドリュー・S・ウィンストン・著 藤美保代・訳
名和高司・日本語版序文 英治出版
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◆目次◆
日本語版序文(名和高司)
第1部 3つの脅威とチャンス
第1章 どんどん暑くなるから、クリーンなビジネスが勝つ
第2章 いよいよ資源が足りなくなるから、イノベーションが勝つ
第3章 なにもかも見えてしまうから、隠さない者が勝つ
第4章 ビッグ・ピボットするためのあたらしいマインドセット
第2部 ビッグ・ピボット 10の戦略
ビジョン・ピボット
第5章 短期的成果至上主義と戦う ユニリーバCEOの決断
第6章 科学的根拠のある大きな目標を立てる
フォードの目標「燃費二倍アップ」は必要条件だった
第7章 異次元のイノベーションを追求する
水なしで服を染めるアディダス
バリュー・ピボット
第8章 社員全員を巻き込む
ボーナス査定の基準を変えたウォルマート
第9章 ROIを再定義する 社内に炭素税を課すマイクロソフト
第10章 自然資本に価格をつける プーマの環境損益計算書
パートナー・ピボット
第11章 ロビー活動を変える ビル・ゲイツ、ジェフ・イメルトの主張
第12章 ライバルをパートナーに なぜコカ・コーラとペプシコは協力したのか
第13章 消費者に「気付き」を仕掛ける 印刷量を減らして利益を生むゼロックス
ビッグ・ピボット
第14章 レジリエントで脆弱性のない企業をつくる
結論 ビッグ・ピボット世界の予想図
おわりに
付録A サステイナビリティ中級編
付録B 科学的根拠に基づいた目標設定
謝辞
訳者あとがき
原注
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