【注目。「男性学」の視点で考える働き方】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406272930X
女性の社会進出が目覚ましい今日、夫婦共働きはすっかり当たり前になりました。
しかしながら、家庭での家事分担や子育て、お金の管理については、相変わらず古い常識がはびこり、それがもとでさまざまなトラブルが起きています。
なかでもしんどいのは、「男らしさ」という価値観を植え付けられ、社会人になって成果を上げられない男性たち。
本日ご紹介する一冊は、こんな男性の「生きづらさ」に真正面から取り組んだ、「男性学」の入門書です。
男性学とは、「男性が男性であるからこそ抱えてしまう悩みや葛藤に着目する学問」のことで、比較的最近生まれた学問分野。
本書では、この男性学の専門家である著者が、現在の男性が生きにくい理由を分析し、その社会的構造からどう逃れて幸せになるか、ヒントが示されています。
著者によれば、<弱音を吐いてはいけないと考える男性たちの思考と弱音を吐かせないようにする社会の仕組みは、互いに影響し合って成立している>。
これで仕事の結果が伴わなければ、男性は危機的状況に陥ってしまうということですね。
知識産業、サービス業主体の時代には、女性の収入が男性の収入を上回るのはごく当たり前。
男性にも、価値観の変化が求められている時代に、ぜひ読んでおきたい一冊です。
さっそく、気になったポイントをチェックして行きましょう。
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なぜ性別が男だからという理由だけで、40年という長期間にわたってフルタイムで働き続けなければならないのか
個人の問題に焦点を当てると、弱音を吐いたり、他人に悩みを相談したりするのが苦手な男性の傾向が見えてきます。男としてのプライドが、自分の感情を素直に表現する際に邪魔になっているのです。一方、社会の問題に目を向けてみれば、男性は学校を卒業したら定年退職までフルタイムで働くべきだというルールが存在していることが分かります
男性学では、あるタイプの男性像を否定することで、理想的な男性像が維持される仕組みがあると考えます。まず「普通」があって、そこから外れたものが「おかしい」のではなく、逆に、何が「おかしい」かを決めて「普通」が作り出されているということです
とにかく働くなら中小企業より大企業という発想は、何がしたいのか分からず、それでも見栄を捨てられない人がすがりつく固定観念
主夫をしている男性に「お前はヒモだ」と侮辱的な言葉を吐く人がいるそうですが、夫婦で話し合って決めた選択にどのような権利があって口をはさんでいるのでしょうか。主夫はお金を稼いでいないだけで、主婦と同じく家庭での役割を果たしています。家事や育児に関わってこなかったから、そのような無理解な発言をしてしまうのです
問題なのは、いずれは卒業していくはずの「自分は特別な人間だ」という幼い空想を、女性よりも男性のほうが大人になってからも引きずる傾向が見られることです
実際的な観点から考えてみると、共働きが普及して、家計の責任を夫婦で担うようになれば、世帯でいくら年収があるかが重要になります。共働き化を進めていく上で足枷になるのは、男性の見栄です
これから家庭を作っていく男性には、「妻がたくさん稼いでくれるのならばラッキーである」と心の底から思えるような感受性が求められています
仕事が忙しいと、友だちはいらないだとか、趣味は無駄だとかいった発想になりがちです。実際に、友だちがおらず、趣味もないとすれば、定年退職した居場所のないお父さんと現役で働く男性の違いは仕事をしているかどうかだけです。働いているから、失っていることに気がつかないだけです
気をつけなければならないのは、人は差別されることには敏感ですが、差別することには鈍感です
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古い価値観の男性の理想をことごとく否定する内容で、人によっては拒否反応を示すと思いますが、基本的には男性の生き方を支援する、極めて真面目な企画です。
先入観を捨てて、ぜひ読んでみることをおすすめします。
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『男が働かない、いいじゃないか!』田中俊之・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406272930X
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◆目次◆
第1章 就職できなくたって、いいじゃないか
第2章 女性に悩んだって、いいじゃないか
第3章 会社に怒ったって、いいじゃないか
第4章 世の中のせいにしたって、いいじゃないか
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