2015年11月30日

『「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる』 野口悠紀雄・著 vol.4150

【日本復活ののろし】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478068232

サンフランシスコ、ニューヨークと旅をして、絶好調のアメリカ経済と日本を比較すると、どうしてこうも差がついてしまったのだろうと疑問に思います。

一方で、遅々として進まない日本の経済対策。打ち手のほとんどは空振りに終わり、唯一円安の影響で好調な観光産業を見ていると、日本もやがてギリシャ化するのか、と先行きを案じてしまいます。

本日ご紹介する一冊は、そんな日本経済低迷の理由を、日米中の比較から明らかにし、成長の鍵を握る「高度サービス産業」を日本がどう促進すべきか、論客が説いた一冊。

著者は、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんです。

本書のなかで著者は、いまアメリカで起こっている経済の新潮流を紹介しつつ、なぜアメリカと日本にここまで大きな差がついたのか、なぜ日本の賃金が急速に中国に近づいているのか、構造的な視点から分析を試みています。

興味深かったのは、「日本の産業構造が中国と同じなら、賃金はいずれ中国並みに低下する」「逆に言えば、アメリカと同じ産業構造を持てば、日本と中国の間で要素価格均等化は起きず、日本とアメリカの間で起こることになる」という意見。

そして、「ファブレス」と「サービスにおける国際間取引」をキーワードに、なぜアメリカがドル高でも成長できるのか、その秘密を明らかにしています。

本書を読めば、高度サービス産業における起業を促進するための規制緩和と、円高でも儲かる産業構造の改革が急務であることが、明確にわかると思います。

そして、優秀な人材がいつまでも大企業(製造業)にしがみついていることが日本経済低迷の理由であり、アメリカで伸びている「専門的、科学技術的サービス」を促進しようとすれば、自ずと自営業者が増えるようになる、というのが統計から明らかになるでしょう。

詳細は本文に譲りますが、ざっとポイントを見て行きましょう。

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より基本的な原因は、アメリカの金融正常化によって投機資金が資源や新興国から引き揚げられていることだ。過去10年程度の期間にわたって続いた「投機の時代」が、ようやく終了しつつあるのだ

優れたレコメンデーション・システムを構築した供給者は、市場を独占するかもしれない

人々は、アルゴリズムに発明や創造はできないと考えている。しかし、「こうした考えは危険な思い込みであることが明らかになりつつある」とスタイナーは警告する

100年も前に作られた法律は、「人々のための法律」と「ビジネスのための法律」を区別している。しかし、「人々がビジネスになってしまったら、どうするのか?」

重要なのはビットコインそのものではなく、ブロックチェーン技術であり、それを用いてスマートコントラクトを自動的に遂行していくことである

日本的発想との関係で問題となる第2点は、集中と分散にかかわるものだ。スケールの大きいIoTは、中央集権的で信頼できる中間者を必要とするシステムではうまく運用できず、分散し、信頼を必要としない参加者によるシステムが必要だ

最も重要なのは、(アメリカでは)日本の統計分類にはない「専門的、対ビジネスサービス」の値が製造業より高くなっており、しかもリーマンショックの影響をあまり受けず、現在まで伸び続けていることだ。2014年の値を07年と比べると、国内産業全体では国民所得は22.6%増加している。製造業は増加しているものの、増加率は17.9%増と、国内産業全体を下回る。これに対して、「金融・保健・不動産・賃貸」は、29.2%というかなり高い伸びだ。「専門的、対ビジネスサービス」の増加率は28.1%であり、非常に高い

アメリカの成長産業である高度サービス産業は、さまざまな面で従来の産業とは異質である。それを示す一つの指標が、自営業者の多さである。雇用者数に対する自営業者数の比率を見ると、製造業では2.3%にすぎないが、「金融・保険・不動産・賃貸」では11.6%である。さらに、「専門的、科学技術的サービス」では、26.3%にもなる。アメリカ経済は、組織が経済活動の中心で、人々が大組織の中で仕事をする社会から、「自営業の時代」に移りつつある

製造業なのに向上を持たないファブレス企業が誕生した(中略)その典型がアップルである。同社の製品は、アジアを中心とする世界各国で生産される。アメリカはそれらを輸入するので、ドル高のほうが望ましいのだ

サービスにおいても国際間の取引がなされるようになった(中略)アメリカ企業のコールセンターはインドにある場合が多い。アメリカはそうしたサービスを輸入する立場にある。したがって、ここでもドルが高いほうが望ましい

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これからの日本経済の課題がびっしり書き込まれており、政策担当者には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

一方で、政府がどう出ようとも稼ごうと思うビジネスパーソンにとっては、起業のチャンスが見える、そんな内容となっています。

問題の本質がわかれば、打ち手は見える。

起業家マインドのある方なら、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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『「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる』野口悠紀雄・著 ダイヤモンド社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478068232

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◆目次◆

第1章 人工知能とビッグデータが広げる可能性
第2章 新しいITサービスが変える市場経済の姿
第3章 本格的利用が始まったビットコイン技術
第4章 成長するアメリカと停滞する日本
第5章 日本が新技術を取り入れるための条件
第6章 アベノミクスでは日本は復活しない
第7章 投機の時代の終了

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