2015年11月8日

『クックパッドのデータ分析力』中村耕史・著 vol.4127

【クックバッドによるビッグデータ活用最前線】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534053193

「ビッグデータ」という言葉が流行り出してから、いろんなところでデータ活用の必要性が謳われていますが、実際に購買に結びつく、画期的な切り口を聞いたことはありません。

以前、とある企業から「法人向けにデータを売りたいんだが」と言われ、相談に乗ったことがあるのですが、そこはデータの取り方がまずかったため、活用が限定されてしまう、残念なデータベースでした。

データを収集するのは良いのですが、本当の問題は未来の購買に結びつく、決定的切り口を見つけられるかどうかです。

そういう意味で、アマゾンで働いた時以来の衝撃を受けたのが、本日の一冊『クックパッドのデータ分析力』で紹介されている、クックパッドの「たべみる」という法人向けデータサービス事業です。

本書によると、クックパッドは現在月間利用者数が5600万人。

スマートフォンからのアクセスが急増しており、その中心が16時~19時の買い物から夕食時にかけての時間帯だそうです。

この「たべみる」がすごいのは、まさにこれから主婦が店頭に買いに行こうとする材料がわかること。

本書では、実際にこのビッグデータ活用で売上を上げた店頭の事例が出てきます。

料理に特化したサイトのため、事例のすべてが料理に関する話題ですが、消費者の未来の行動を予測する上で、重要な示唆が得られる、じつに貴重な書籍です。

「たべみる」事業責任者が直接書いているため、内容がじつに細かく、当事者ならではの臨場感を持って書かれているのが良いと思います。

では、さっそく内容のエッセンスを見て行きましょう。

———————————————–

2015年8月末に、あるニュース番組で紹介された事例なのだが、愛知県のある大手スーパーでは、2015年1月下旬、「甘酒」が前年に比べて150%も売れた。きっかけは、スーパーの仕入れ担当者が、「たべみる」の「きてるランキング」という「いままさに、生活者が関心を持っている食に関するキーワード」を閲覧できる画面で、「甘酒」が検索人気ワードにランクインしていることを発見したことだ。そこで、売れる時期の小正月を過ぎ、通常なら甘酒の売場は縮小するはずだったが、売り伸ばせるのではないかと積極的に展開したのだ

検索が増えているという現象は、「手慣れていないけど関心を持っている人が増えている」という状態や、「ある食材や料理のいつもとは違う調理方法を知りたいと思っている人が増えている」という状態を示している

「たべみる」で見ると、西日本では「さば」が多く検索されていて、東日本では「さば缶」が多く検索されている。背景を調べてみると、西のほうで水揚げされる「さば」は、酢じめなどにして食べるのがおいしいのに対し、青森など北のほうで水揚げされる「さば」は、脂ののりが多く缶詰に適しているという。さらに、県別でデータを見ると「さば缶」の検索数が顕著に多いのは長野県で、組み合わせて検索される語として「汁」が多いことがわかった。その理由は、長野県の郷土料理にあった。長野県には、さば缶と「根曲がり竹」あるいは「姫竹」と呼ばれる細長いたけのこをみそ汁に仕立てる郷土料理がある

クックパッドで行なわれる検索の6割以上に、材料名が含まれている

◆データが利用されるための3つの要素
1.信頼できると感じられるデータであること
2.知りたいことがわかりやすく表現されていること
3.いつでも気軽に利用できること

クックパッドで最もよく検索される「簡単」は1000回のうち68回検索されている。最も多く検索されているメニューは「サラダ」で1000回のうち15回。ちなみに日本の国民食ともいわれる「カレー」で5.8回

2014年2月に東北地方から関東、東海地方一帯が大雪になったとき、「すき焼き」の検索数がほかのメニューに比べて上昇する現象が見られた

「アヒージョ」の検索が増加するにつれ、ある特徴的なキーワードのマッチ度が上昇してきた。それは何だと思うだろうか? オリーブオイル? マッシュルーム? いや、違う。「たこ焼き器」との組み合わせ検索が増加しているのだ! 意外かもしれないが、たこ焼き器のくぼみは、アヒージョの具材ひとつ分くらいにはちょうどいい

———————————————–

これからの時代の商品開発と、店頭販売、そしてメディアの仕掛け方、すべてのヒントが入っている本でした。

これを読むと、クックパッド株価上昇の理由がよくわかりますし、また創業者が信念を持って事業を行うことが、いかに多くの機会を生むかがわかります。

ビッグデータ分析・活用の最前線を知る貴重な書籍として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

———————————————–

『クックパッドのデータ分析力』中村耕史・著 日本実業出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534053193

————————————————-

◆目次◆
第1章 埋もれていた日本一のレシピサイトの検索データ
第2章 クックパッドの挑戦──データ分析事業を刷新
第3章 僕たちはこうして未来を予測する
──クックパッドのデータ分析
第4章 データはマーケティングにこう活かせ!
第5章 日本の食卓を変える──増える「たべみる」導入事例

この書評に関連度が高い書評

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー