【ハーバードで教える、エンターテインメントビジネス理論】
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ビジネスの世界には、「これを外すと売れない」というセオリーが存在します。
厄介なのは、それが人間の本能に反したセオリーである場合。
出版や映画、音楽といったいわゆるエンターテインメント業界では、どうも人間の保守的な気持ちとは真逆の成功法則が存在するようです。
その成功法則をまとめたのが、本日ご紹介する『ブロックバスター戦略』。
ハーバード・ビジネス・スクールで学び、サンリオのコンテンツビジネスのグローバル化で大成功を収めた鳩山玲人さんが、その後参考にしたという異色の授業、「Strategic Marketing in Creative Industries」のエッセンスを書籍化したものです。
本書で述べられている「ブロックバスター戦略」とは、日本語に直すと、「メガヒット戦略」のこと。
その要諦をひとことで言うと、以下のようになるでしょう。
<商品ラインに均等にリソースを分配し(どんな商品が受けるのかわからない場合には、一見最も効果的なアプローチに思われる)、利益を増やそうとしてコスト削減に努めるよりも、ブロックバスターを狙って大きくつぎ込み、“その他大勢”につぎ込む費用を大幅に少なくすることが、ショービジネスの世界で常に成功を収める確実な方法なのである>
本書には、エンターテインメント業界において、なぜブロックバスター戦略が正しいのか、その理由が詳細に述べられています。
過去の映画や出版の成功事例もたくさん載っているので、ヒットを狙う仕事の方には、良い勉強になると思います。
さっそく、エッセンスを見て行きましょう。
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“コンセンサスの旗振り役”と評されるホーンは、ワーナー・ブラザーズの幹部らに看板映画戦略が受け入れられるよう粉骨砕身した。看板映画として最初に選んだ作品は、2000年公開の『パーフェクトストーム』だった。「当時、ジョージ・クルーニーは大スターではなかった。マーク・ウォールバーグにしたってそうだったんだが、ストーリーがとても気に入ったんだ」と、ホーンは振り返った。「観客のために最高の視覚体験をつくり出したかった。それを示すためにマーケティングに大金をつぎ込んだよ。実は、最初につくられた予告編を見て、『嵐はどこに出てくるんだ?』と尋ねた。嵐の中、高波に翻弄される船の場面を見たいと思ったからだ。それには50万ドルかかったが、スタッフは1週間でつくり上げた。これは大作だぞと世間に知らせたかった。だから、どうしてもその場面が必要だった」
高額製作費の映画の広告宣伝費はしごく割安だった。上位3作品は、製作費では3分の1を占めるものの、7億ドルを超える広告宣伝費のうち22パーセント程度しかかからなかった(中略)対照的に、ワーナー・ブラザーズは小規模予算の映画──たとえば、『ザ・タウン』や『かぞくはじめました』など、5000万ドルに満たない予算でつくられた映画──を宣伝するために、広告宣伝費総額の75パーセントを使った
エンターテインメント企業がブロックバスターに大きく賭けることをやめると、チャネルに対して企業が行使していた力が次第に衰えることがわかる
生来人間は社会的生物なので、一般的にいって、ほかの人たちと同じ本を読んだり、同じテレビ番組を見たり、同じ映画を観たりすることに価値を見出す。人間は勝者を好むものだ
低予算投資のもうひとつの利点は、バンパイア映画からオーディション番組まで、商品の新たな形式を試せる点だ
ブロックバスター戦略における最大の勝者はスターその人
老化・寿命と無縁のキャラクタービジネスは無敵だ(鳩山玲人)
膨大なデータを精査して、マクフィーは2つの重要な原則を突き止めた。ひとつは、人気商品の支持者のうち極端なほど大多数の人たちが、どちらかというと淡白な消費者(特定の種類の商品をそれほど頻繁に購入しない)で、無名商品の支持者のうちごくごく少数の人たちが、どちらかというと旺盛な消費者(その種の商品を頻繁に購入する)である
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「ブロックバスター戦略」。
出版業界ではいまや主流となっている考え方ですが、改めて学んで、気づくところがありました。
ヒットを狙うお仕事の方には、とくにおすすめの一冊です。
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『ブロックバスター戦略』
アニータ・エルバース・著 鳩山玲人・監訳・解説 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492533710
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◆目次◆
序章 ショービジネス成功のカギはブロックバスター
第1章 ブロックバスターに勝負を賭ける【映画&出版業界】
第2章 ブロックバスターを売り出して管理する【音楽業界】
第3章 スーパースターに投資する【スポーツ業界】
第4章 スーパースターは自らの力をどのように行使するのか【映画&スポーツ業界】
第5章 デジタル技術はブロックバスターの優位に終焉をもたらすのか【IT業界】
第6章 ブロックバスター戦略は広告手法を変える【出版&音楽業界】
終章 エンタメ業界の戦略は他のビジネスでも通用するのか【サービス&ファッション業界】
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