2024年11月27日

『大阪 人づくりの逆襲』石川智久・著 vol.6611

【人づくりは大阪に学べ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413047079

本日ご紹介する一冊は、福岡生まれで東京で就職し、大阪で仕事をしたという日本総合研究所の調査部長/チーフエコノミスト、石川智久さんによる一冊。

サントリーやダイキン、パナソニックなど、世界で活躍する企業がなぜ関西から出るのか、その秘密に迫った力作です。

船場商人に伝わる教えや関西の経済人の思想、関西を代表する大企業の歴史、現在躍進中の関西企業と商品・技術などが紹介されており、純粋に教養として面白い内容です。

とっかかりに、「船場商人かるた」から、商売訓をいくつか見てみましょう。

い:生命より ノレン大切
ろ:論より商売
ち:塵も積もれば、在庫となる
り:利は、もとにあり
た:足りぬ足らぬは工夫が足りぬ
む:無理押・返品天に唾
て:出掛けの挨拶、帰りの報告
も:モノ売る前に、自分売る
せ:節約は、モノを生かして使うこと
す:「すまん」ですまぬ支払日

これだけでも勉強になりますが、本書には他にも、「京都の製造業がグローバル企業となった4つの感性」や、住友銀行で役員が言っていたという教訓「おいあくま(怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな)」、レンゴー創業者の井上貞治郎氏の「きんとま」哲学など、さまざまな教えが登場します。

商売訓というのは、実家が商人であれば自然に触れるものですが、そうでない方にとって、本書は貴重な教えの書となるに違いありません。

上記企業の他にも、シャープ、ミズノ、アシックス、モンベル、武田薬品工業、グリコ、ハウス食品、京セラ、ニデック、オムロン、任天堂、堀場製作所、島津製作所、ローム、コクヨ、ラウンドワンなども関西の企業であり、本書ではこれらの企業の歴史や現在の取り組み、今後についても記しています。

また、大阪と東京のコミュニケーションの違いについても論じており、これから関西で働く方、移住する方にとっても勉強になる内容です。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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関西経済連合会ではステークホルダー資本主義が大事だと考えています。ステークホルダー資本主義とは、企業活動に関わるステークホルダー(利害関係者)に対し、長期的かつ継続的に利益を還元することを目指す考え方のことです

大阪の豪商たちは、利益を自分たちのためだけではなく、架橋や川の掘削などの公共事業に使い、自分たちの利益を地域に還元するという考え方根付いていました。大阪人は、街を歩くたびに、橋や川の名前を見て、そうした歴史を意識することが多くあります。資本主義と地域貢献とまちづくりが融合しているところが、大阪資本主義のすごみであり、良き伝統と思います

船場商人は「お天道さん」という言葉も大事にしていました。「お天道さんが見てはるで」が口癖の商人も多くいました。お天道さまとは、神、仏、先祖で、そのお天道様のおかげで商いができる

京都企業4つの感性(堀場会長)
・人のマネをしない
・目に見えないものを重視する
・事業を一代で終わらせず、受け継いでいく
・循環とバランス

とりわけダイキン工業の凄さを感じるのは、日本の市場がバブル崩壊や少子高齢化で成長力が落ちていくとみるやいなや、世界市場にどんどん打って出た積極性です

積水ハウスが注目されるのは、累積建設戸数です。2024年1月31日現在で266万戸建設しており、これは世界のハウスメーカーでNo.1です

個人的な目標を達成して安心してはいけない、満足してはいけない

関西の製薬企業で注目されるところとしては、ノーベル賞で有名な、がん免疫薬のオプシーボを製造販売する小野薬品工業があげられます

ハウス食品の独創的なところは、食品業界で初めて街頭で女性販売員による実演販売試食を開始したこと

「売れる原因が1つや2つであればすぐに追い抜かれる。何が原因か分からないがなんとなくいいといわれる商品を作らねばならない」(コクヨ創業者黒田善太郎)

井上貞治郎氏の「きんとま」哲学金鉄の意志・金・真・間の四つを握ったら死んでも離すな

関西ではITテック系よりも、研究開発をベースにしたディープテック系が多い

おいあくま(怒るな、威張るな、焦るな、腐るな、負けるな)

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話題が多岐に渡り、またよく調べて書かれているので、本当に読み応えがあります。

文章が読みやすく、中身も面白いので、関西出張の際には、ぜひ旅のお供に持って行くことをお勧めします。

ぜひ、読んでみてください。

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『ほんとうの日本経済』坂本貴志・著 講談社

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◆目次◆

はじめに
第1章 日本企業復活のカギは、大阪にあった!
第2章 じつは今も昔もすごい、関西の会社の強み
第3章 「おもしろがり体質」
第4章 人が集まる、人が育つ、大阪の会社の底力
第5章 大阪から学ぶ、日本が元気になる人づくり提言
おわりに

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