2024年10月18日

『最後はなぜかうまくいくイタリア人』宮嶋勲・著 vol.6584

【イタリア人のように考える。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532198488

本日ご紹介する一冊は、2015年に出され、ベストセラーになった同名の著書の文庫版。

なぜか話題になった時、読み損ねていたので、遅ればせながらご紹介します。

著者は、東京大学経済学部を卒業後、1983年から89年までローマの新聞社に勤務し、現在イタリアと日本でワインと食について執筆活動を行っている宮嶋勲氏。

イタリアではエスプレッソ・イタリアワイン・ガイドの試飲スタッフ、ガンベロ・ロッソ・レストランガイド執筆スタッフを務め、日本ではワイン専門誌を中心に執筆するとともに、ワインセミナーの講師を務める人物です。

本書は、そんなイタリアとの交流が深い著者が、イタリア人の思想や価値観、イタリア社会の隠されたルールについて述べた、興味深いイタリア人論。

なぜイタリア人が時間にルーズだと言われるのか、なぜイタリアから素晴らしいワインやフェラーリやアパレルが生まれるのか、なぜイタリア人はサッカーが上手いのか、なぜレオナルド・ダ・ヴィンチは万能人だったのか、著者の持論が述べられており、いずれも納得の内容です。

これを読めば、なぜ日本人は野球が強いがサッカーが弱いのか、なぜ日本人は労働が辛くなるのか、その理由がよくわかります。

著者が言うように、これは文化の違いであり、そこに優劣はないのですが、イタリア人の価値観を知ることにより、日本人はもっと生きやすくなる、というのも事実かもしれません。(最近、政治家がイタリア人化しているのは困った物ですが…)

イタリア人とフランス人が真逆の価値観を持っているという指摘も斬新でしたが、パリで運転していてクラクションを鳴らされまくった土井には納得の視点。

ひと口にヨーロッパといっても、いろいろ違うのだということがよくわかりますね。

本書の最後には、イタリアの各地域の特徴について述べた「独断と偏見で考えるイタリア」が収録されており、こちらがまた面白い。

イタリア旅行の際、あるいはイタリア人と交流する際には、ぜひご活用いただきたいと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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予定表や打ち合わせ通りに物事が運ぶなどと考えるのはイタリアでは大きな間違いで、そんなのはあくまで努力目標のようなものでしかなく、不測の事態が起こることのほうが普通である。(中略)人生は常に不測の事態の連続で、そんなことにいちいち腹を立てること自体がおかしいという哲学?である

イタリアにおいては、「19時半アペリティフ、20時半夕食」という案内を額面通りに受け取る必要はない。これは「チャットしたければ20時ごろにアペリティフ会場に、それほどチャットしたくなければ20時半~21時に会場へ。夕食が始まるのは21時半ごろと予想されるので、21時15分までに来れば何の問題もなし」と読み替えればいい

「私」の時間に仕事が割り込んでくることにはかなり寛容である。家族経営の中小企業が多いこともあり、家族の食卓がいつの間にか営業会議になって、大いに仕事の話で盛りあがり、そこで素晴らしいアイデアが出てくるということもよくある

お婆ちゃんにとって駄菓子屋の店番は人生そのものであり、生きがいでもあるのだ。ここでは「仕事の時間」と「私の時間」は幸せに溶け合っている。イタリアは、皆が駄菓子屋のお婆ちゃんのように働いている国と考えればわかりやすいだろう

考えてみれば、イタリアには昔から「なんでも屋さん」が多かった。レオナルド・ダ・ヴィンチは画家といった狭い定義に収まらず、科学者であり、治水、軍事まで担当する万能の天才であったし、ロッシーニの「セビリアの理髪師」のフィガロはまさに、「私は町のなんでも屋」なのである

イタリア人は、とにかくなんにでもダメもとで果敢にトライする。相手に失礼だとか、恥をかくかもしれないといった心配は、あまりしない

寄り道こそが人生

イタリア人は、自分が嫌なことに立ち向かえないだけでなく、人が嫌な思いをしたり、悲しい思い、寂しい思いをしたりするのも非常に苦手

イタリア人はたいていのことを簡単に許してしまう。正論と不寛容が強く結びついているフランス人と対照的である

実用性より、美しさで決める

サッカーのゴールは小さな努力を地道に積み重ねて実現されることよりも、突然降ってわいた幸運をうまくつかまえた場合に実現されることが多い

食卓は単に栄養補給をするだけの場ではなく、自分をアピールして、仕事や恋のチャンスをつかみ、友人を増やして、コネを広げる舞台

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読んでいて、初めてギリシャの洗礼を受けた学生時代を思い出しました。

おかげで、少しは柔軟な人間になれたと思います(笑)。

きっと多くの日本人は、本書を読むことで、同様のカルチャーショックを感じ、少しは生きるのがラクになるはずです。

ぜひ、読んでみてください。

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『最後はなぜかうまくいくイタリア人』宮嶋勲・著 日経BP

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◆目次◆

文庫版まえがき
はじめに
1.仕事 ルーズなのになぜか結果は出る秘密
2.人生 好きなことだけ楽しみ、嫌いなことは先延ばす
3.家族と恋愛 対人関係を支配する、義理・絆・コネ
4.食事 食卓でのふるまいは、商談以上に難しい
5.独断と偏見で考えるイタリア
おわりに

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